レアメタルを巡る日本人拘束

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第387回)

 中国でレアメタルを日本人が「密輸」しようとして拘束されたという報道がなされています(注1)。この拘束に際して、日本人は「裏技」的な手法でのレアメタルの中国からの持ち出しをはかっており、これまでは事実上黙認されていた方法を使っていたとされています(注2)。そのため、昨年11月の高市早苗・内閣総理大臣のいわゆる「台湾有事発言」を理由とする「嫌がらせの拘束」ではないかとの疑いがもたれています(注3)。その点から、日本側の危機感の無さも指摘されているようです(注4)。
 さて、今回の拘束の法的根拠は、中国刑法第151条第3項の「国家輸出入禁止貨物密輸罪(走私国家禁止進出口的貨物、物品罪)」です。「希少植物およびその製品、または国によって輸出入が禁止されているその他の物品を密輸した者は、5年以下の懲役又は拘禁刑もしくは罰金刑に処し、または併科する。状況が重大な場合は、5年以上の懲役刑もしくは罰金刑に処し、または併科する」と規定しています。
 また、2026年1月6日には、軍事利用できる物品の日本への輸出禁止が通知されていました(2026年1月6日商務部公告第1号「日本への軍民両用物品の輸出規制強化に関する公告(関于加強両用物項対日本出口管制的公告)」)。この「裏技輸出」自体も、この2026年1月6日商務部公告第1号を回避するために事実上行われていた側面もあるようですが、読んで分かるとおり、2026年1月6日商務部公告第1号は非常に簡素な規定で、どのようにも解釈が可能です。
 結局、日本側の中国に対する情報や理解がうまくいっていない、中国を正しく分析できる人材がいないという指摘は、まさにそのとおりと言えます(注5)。日本には中国ビジネスコンサルタントを名乗る方が多くいますが、かつて中国に赴任していた日本人が自身の経験則でコンサルティングしているのが現状です。経験則は大事ですが、中国当局の通知などを読み、その規制がどのように変化しているのかを読み解く能力が大きく欠けているように思われます。
 中国は、さらに2026年6月24日に商務部公告第26号「戦略的デュアルユース鉱物の輸出管理に関連する違法行為および不正行為に関する報告の処理をさらに改善するための事項(関于進一歩完善戦略鉱産両用物項出口管制違法違規行挙報処理工作有関事項)」を発布し(2026年7月1日施行)、日本に対してのみではありませんが、レアメタル輸出規制を強化しています。次こそは、しっかりとこのような通知を分析して中国とのビジネスを行ってほしいものです。

〈注〉
(1)「「中国に負けて日本は“第二の敗戦”を迎える」 邦人2名を拘束 「今回の“人質外交”は、経済的圧力から明らかにギアを上げている」」(デイリー新潮ウェブサイト)〈https://www.dailyshincho.jp/article/2026/07210457/?all=1〉2026年7月21日更新、2021年7月21日閲覧。
(2)「中国レアアースの壁…日本企業、レアアース磁石内蔵の製品を日本へ送ろうとし密輸容疑で拘束」(中央日報ウェブサイト)〈https://japanese.joins.com/JArticle/351166〉2026年6月26日更新、2026年7月21日閲覧。
(3) 前掲注(2)
(4) 前掲注(1)
(5) 前掲注(1)

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。