中国の統治方法と安全観
2025年10月31日
【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第317回)
『人民日報』2025年10月30日付1面に「発展の中で安全を固め、安全の中で発展を図る——党第20期中央委員会第4回全体会議精神の学習・貫徹について論ず(在発展中固安全,在安全中謀発展——論学習貫徹党的二十届四中全会精神)」という記事が掲載されました。これによれば、安全は発展の前提で、発展は安全の保障であり、中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議では「発展と安全の統一的配慮を堅持する」ことを「第15次五カ年計画」期間における経済社会発展が従わなければならない重要な原則の一つとして、さらに「国家安全保障の障壁をより強固にする」ことを主要目標の一つとしてそれぞれ掲げ、発展と安全の統一的配慮をめぐって一連の戦略的配置を行ったそうです。
どうやら中国当局にとっては、安全があるからこそ発展し、発展するからこそ安全が保障されるという関係にあるようです。ここでいう「安全」とは「国家の安全」、つまり、中国共産党政権が滅びずに存在し続けることをいいます。
さらに、本記事は以下のように続けます。新たな安全保障構造によって新たな発展構造を保障し、社会主義現代化の基礎的実現に決定的な進展を確実に遂げる上で、重大な指導的役割を果たすもので発展と安全を統合し、憂患意識を高め、安泰の中に危険を思うことは、わが党の国家統治における重要な原則である。
中国当局とは何と弱気なのでしょう。安泰していても、常に危険がある(安全でなくなる)可能性を思いながら行動することが中国の国家統治の重要原則としているのですから。逆に言えば、中国当局は、今の中国では共産党政権を脅かす暴動や革命がいつ起こってもおかしくないと認識しているのかもしれません。
●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。


