また違う意味で強調される「法治」

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第322回)

 『人民日報』2025年11月18日付1面に「法治中国の新たな章を綴(つづ)る――全面的な依法治国の効果的な実施(譜写法治中国嶄新編章——全面依法治国有効実施)」という記事が掲載されました。
 これによれば、10月23日に中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議で『国民経済と社会発展の第15次五カ年計画策定に関する中共中央の提案(中共中央関于制定国民経済和社会発展第十五個五年規計的建議)』が採択され、「全面的な依法治国を堅持し、科学的立法、厳格な法執行、公正な司法、全民の法遵守を協調的に推進する」ことを明確に打ち出したとのことです。
 これについて、記事では「中国式現代化によって強国建設と民族復興の偉業を全面的に推進するための堅固な法治基盤を築いた」と述べられています。なんと、強国のためと民族復興のために法治が必要なのだそうです。これは、中国が言う「法治」は日本などが理解する法治とは異なることを示しています。つまり「悪法であっても法なのだから、市民は法に従え」という政府の意向を強制する目的で「法治」が使われているのです。
 やはり中国が「法治」を述べるときは要注意です。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。