中国共産党設立成立105周年大会講話で述べられた「法」

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第384回)

 2026年7月1日に中国共産党は、創立105周年を迎えました。そして、これを祝うための大会が北京の人民大会堂で開催されました。この大会での習近平・総書記の講話(以下「本件講話」といいます)で「法」はどのように語られたのでしょうか。これを見ていきましょう(注1)。
 驚くべきことに、今回の本件講話では、「法」という言葉は2回しか出てきません。「依法治軍……を通じて人民の軍隊の世界一流の軍隊への変革を加速させ、国家の主権・安全・発展の利益を断固として守り、世界の平和と発展の維持により大きく貢献していく」という言葉と、「香港・マカオの長期的な繁栄と安定を促進することは、中華民族の偉大な復興にとって不可欠な要請です。この新たな道のりにおいて、我々は『一国二制度』、『香港人による香港統治』、『マカオ人によるマカオ統治』および高度な自治という方針を全面的、忠実かつ揺るぎなく貫徹し、『愛国者による香港統治』および『愛国者によるマカオ統治』の原則を堅持しなければなりません。また、両地域における法治に基づく統治の実効性を高め、経済・社会の発展を促進するとともに、国家の全体的な発展へのより良い融合と貢献を支援していく必要があります」という言葉のみです。
 「依法治軍」、これについては軍も法に従うという話であり、問題は「両地域における法治に基づく統治の実効性を高め」という表現です。この表現は、明らかに「中国共産党の方針に従うことこそが法治」であるという前提で使っており、今後の中国の動向に注目が集まります。
 筆者の個人的感想ですが、最近の中国では重要な講話で「依法治国」という言葉の強調が著しく、まさか中国共産党設立成立105周年大会の講話という重要なもので、これだけ「法」が重要ではない形で取り扱われるのはかなり予想外でした。

〈注〉
(1)この講話は、『人民日報』2026年7月2日付2面掲載の「在慶祝中国共産党成立105周年大会上的講話」で確認できます。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。