建国記念日に「社会保障についてのまとめ論文」掲載

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第406回)

 『人民法院報』2026年10月1日付1面によると、10月1日発行の中国共産党の機関誌『求是』(19号)に習近平・国家主席の重要論文「普遍的・基礎的・セーフティーネットとしての民生整備を強化する(加強普惠性、基礎性、兜底性民生建設)」が掲載されたとのことです。とは言っても、習近平・国家主席が直接書き下ろした論文ではなく、2012年11月から2026年1月までに行った発言をまとめて編集したものです。
 本論文では「中国式現代化において、民生は極めて重要である。人々がより良い生活を望むことこそ、我々の奮闘目標である。我々の目標は壮大であると同時に素朴なものでもあり、突き詰めれば、庶民により良い暮らしをしてもらうことにある。発展の中で民生を保障・改善し、共に奮闘してより良い生活を創造することを奨励し、人々がより良い生活を望む思いを絶えず実現していかなければならない」と強調しているとのことです。
 「民生」と言えば、孫文が掲げた三民主義の「民族主義、民権主義、民生主義」が思い浮かびますが、この「民生」とは、「社会保障の充実」のことを言っています。また、この習近平・国家主席の発言をまとめた論文でも「庶民により良い暮らしをしてもらう」と述べており、「民生」をやはり社会保障の意味で使っていると考えてよさそうです。
 中国はこれまで社会主義国家として、国民の生活を国家が保障するという前提をとっていましたが、改革開放政策により市場経済が導入されると、その国家による生活保障が大きく揺らぎ、「社会主義国家なのに、生活保障制度の基盤が脆弱(ぜいじゃく)な国家」などと呼ばれることすらあるようになりました。しかし、中国も少子高齢化が急速に進む中で、社会保障の充実化が再び社会の課題となっています。
 中国の建国記念日(10月1日)という記念日にわざわざ掲載した社会保障の充実を唱える習近平の一声から中国の社会保障がどのように変わるのか、注視したいとことです。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。