不作為の処罰対象で執行難は?

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第325回)


 『人民法院報』2025年11月27日付4面に「安徽省合肥市、判決・裁定執行拒否犯罪対策特別行動を展開(安徽合肥開展打撃拒執犯罪専項行動)」という記事が掲載されました。安徽(あんき)省合肥(こうひ)市中級人民法院、市人民検察院、市公安局は共同で「判決・裁定の執行拒否犯罪行為に対する集中取り締まり特別行動の実施に関する通告(関于開展集中打撃拒不執行判决、裁定犯罪行為専項行動的通告)」を発表し、全市で1年間にわたる判決・裁定の執行拒否違法犯罪行為に対する集中取り締まり特別行動を展開する方針を示したことが記されています。この通告では、被執行者、執行協力義務者、保証人など執行義務を負う者が「執行能力があるにもかかわらず執行を拒む」場合、刑事責任を問われる可能性があることを明確化し、扶養料、養育費、医療費、労働報酬などの支払いを命じた判決・裁定の執行を拒み、犯罪を構成する場合は、法に基づき厳罰に処するとしているとのことです。
 中国では、これまで裁判などで判決を得ても、実際の執行がなされないなどの「執行」難」と呼ばれる現象が起こり、実務上の問題となっていました。今回の通告では「何らかの執行をしなければならないのに、それをしない場合、執行しないことそのものを処罰の対象」とすることで、執行難を防止していくということになりそうです。まだ、安徽省合肥市という一地方のみの通告ですが、今後中国の執行難が解消に向かうのか注目が集まります。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。