「元旦・春節期間中の関連業務の実施」に関する通知
2025年12月24日
【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第332回)
2025年12月22日に、中国共産党中央弁公庁および国務院弁公庁が「2026年元旦・春節期間中の関連業務の実施に関する通知(関于做好2026年元旦春節期間有関工作的通知)」という通知を発布しました。この通知は、春節(いわゆる「旧正月」。中華圏では、西暦の正月より「旧正月」を祝う)にあたり、各部署に対する業務の仕方を通知したものです。
しかし、この通知も春節前に未払い賃金を支払うようにさせよとか、障がい者などへの支援を充実させるとか、ある意味、当たり前のことしか規定されていません。もっとも、逆に言えば、労働者や弱者のための社会主義国家であるはずの中国では、これらがうまくできていないのが現状ということでもあります。そのような社会主義国家で、未払い賃金が発生し、障がい者救済も不完全ということを認めたという、ある意味、貴重な中国当局から見た中国の現状が分かる通知にもなっています。
この通知の全文訳は以下に記します。やや長くなりますが、興味のある方はご一読ください。
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2026年は第15次五カ年計画の初年度である。各地域および各部門は習近平新時代の中国に特色ある社会主義思想を指針とし、党の第20回全国代表大会および第20期中央委員会各総会の精神を全面的に貫徹し、元旦、春節期間中の各業務を統括的に推進し、人民大衆が楽しく平穏で和やかな祝日を過ごせるよう確保しなければならない。党中央および国務院の同意を得て、関連事項を下記の通り通知する。
一、困難を抱える人々の生産および生活を気遣う。各級党委員会と政府は、救助支援や訪問慰問を真摯に行い、人々のために実事求是に困難解決に取り組むものとする。規定に基づき救助金を適時に全額支給し、条件が整っている地域では救助金の前倒し支給や一時的な生活補助金の追加支給は可能である。臨時救助の力度を強化し、突発的、緊急的な困難に直面した人々に対し、基本的生活保障を適時に提供するとともに、被災者の冬春期救助を適切に行うものとする。特に困難な状況にある高齢者、障害者、困窮児童などのグループに対する訪問慰問と支援を強化する。「寒冬に温もりを届ける」特別支援活動を展開する。賃金未払い問題対策冬季行動を実施し、農民工への賃金不払い違法行為を法的に取り締まるものとする。企業支援政策を着実に実行し、未払い債務問題を解決するものとする。就職困難者に対する就職支援を実施する。柔軟な雇用形態の労働者と新規就業層の労働権益保護を強化するものとする。基層職員・労働者、特に過酷な環境地域や緊急・困難・危険任務の最前線で働く者への配慮を強化するものとする。生活困窮党員、古参党員・幹部、紅軍退役軍人、抗日戦争退役軍人、朝鮮戦争退役軍人、退役軍人、軍隊退職幹部、障害軍人、烈士・軍人遺族などを対象に、訪問慰問を徹底するものとする。
二、市場の安定供給を確保する。石炭、電力、石油、ガスの生産・輸送保障に全力を挙げ、民生用エネルギーの安定供給と価格安定を確保し、国民の暖かな冬越しを保障するものとする。食糧安全保障における党と政府の共同責任及び「野菜かご」市長責任制を着実に実行し、市場監視・早期警戒を強化し、交通物流の円滑化メカニズムの役割を発揮させ、食糧・油・肉・卵・乳製品・果物・野菜などの生活必需品の供給充足と価格安定を保障するものとする。優良商品・サービスの供給を拡大し、多様な消費シーンを創出することで、休暇期間の消費潜在力を喚起するものとする。飲食サービスにおける食品安全及び市場販売農産物の品質安全監督を強化し、「食の安全」を堅守するものとする。飲食・宿泊、正月用品など民生重点分野の価格・料金監督を強化し、不当な値上げや価格詐欺などの違法行為を厳しく取り締まるものとする。ネット取引の監督を強化し、販促行為を規範化するものとする。苦情・通報窓口を円滑化し、消費者の要望を迅速に受理・処理するものとする。
三、大衆の精神文化生活を豊かにする。「新春に基層を歩く」をテーマに取材活動を展開し、時代の力強い音を響かせ、奮進の力を喚起する。春節聯歓などの文芸公演を成功裏に開催し、「楽しく新年を迎える」テーマ活動、「無形文化遺産で新春を祝い・中国の年を味わう」というテーマのプロモーションを展開するものとする。「私たちの中国夢——文化を万家に届ける」、文化・科学技術・衛生の「三つの農村支援」などの活動を展開し、基層に向けて質の高い文化製品を提供するものとする。軍民共同建設活動を展開する。観光商品を充実させ、観光品質と体験を向上させ、一連の消費促進措置を打ち出すものとする。部門横断的な法執行協力を強化し、文化・観光市場の秩序を維持するものとする。
四、大衆の安全で便利な移動を確保する。旅客動線の動態分析を強化し、重点地域・人気路線・ピーク時間帯の輸送力供給を強化し、春節輸送業務を統括的に推進し、大衆の移動需要を最大限に満たすものとする。大型連休期間中の小型乗用車通行料無料化政策を着実に実施し、道路の渋滞緩和と円滑化を強化し、充電・給油・食事・トイレなどのサービス品質を向上させるものとする。出稼ぎ労働者、学生、観光客などの重点旅客層の移動支援を強化し、軍人、現役・退役障害軍人、消防救助隊員、烈士遺族など重点対象者に対する法的優先待遇政策を厳格に実施するものとする。緊急対応計画を最適化・改善し、悪天候、旅客滞留、危険事故などの突発状況に効果的に対処するものとする。高速道路、橋梁・トンネルなどのインフラリスク調査を徹底的に実施し、飲酒運転・酒酔い運転、「三超一疲労」(速度超過・積載超過・時間超過・疲労運転)違法営業、農村部における「二違」(違法建築・違法用地)などの行為を厳しく取り締まり、移動の安全を確保するものとする。
五、安全生産責任の徹底的な履行。安全生産責任を厳格に履行し、各種監督管理制度を厳格に実施するものとする。責任履行の不備、安全検査の形式主義、見せかけだけの是正措置などの現象をタイムリーに是正し、重大事故の発生を断固として防止・抑制する。老朽住宅、高層建築、校外学習施設、人気観光地、商業施設、ホテル・民宿、飲食店、高齢者施設、工場・倉庫などの重点場所における火災リスクの調査・改善を強化するものとする。花火・爆竹、鉱山、ガス、建築工事、化学工業生産、漁業船舶などの業界におけるリスク・隠れた危険の調査・改善を深化させるものとする。観光関連施設・設備の点検・保守を適切に行い、旅客用ロープウェイ、大型遊戯施設、新興の高リスク遊戯プロジェクトの安全管理を強化するものとする。展示会・販売会、文芸公演、廟会・灯籠祭り、花火大会、ライトアップショーなどの大規模な群衆イベントにおけるリスク評価と安全管理を強化するものとする。低温・降雪・凍結災害、氷氾災害、森林・草原火災に対する監視・警報、リスク提示、緊急対応を強化するものとする。安全啓発活動を広く展開し、国民の安全意識と避難・自救スキルを向上させるものとする。重点感染症の監視・予防管理を強化し、呼吸器感染症の診療体制を整えるものとする。
六、社会の安定維持に全力を尽くす。新時代の「楓橋経験」を堅持・発展させ、あらゆる矛盾・紛争やリスク要因を網羅的に調査し、指導幹部の接見・訪問活動を強化するものとする。総合治安管理センターの役割を十分に発揮し、様々な不安定要素を芽のうちに摘み取り、末端で解決するよう努める。「窃盗・強盗・詐欺」、「売春・賭博・麻薬」、「食品・医薬品・環境」などの違法犯罪を法に基づき厳しく取り締まるものとする。治安上の隠れた危険や死角を全面的に調査し、繁華街、観光地、バス・地下鉄、駅・空港、学校・病院、公園・広場など人の密集する場所の安全対策を強化する。銃器・弾薬、危険爆発物、規制ナイフなどの重点物品の安全管理を強化するものとする。社会全体の巡回・警戒・管理を強化し、公安・武装警察の合同パトロールを実施し、緊急事態対応計画を整備し、暴力テロ攻撃や極端な事件の発生を厳重に防止するものとする。社会世論を注視し、リスク分析と対応処置を積極的かつ着実に実施する。
七、四つの悪風を継続的に是正し、新たな気風を樹立する。中華民族の優れた伝統を弘揚し、家庭教育と家風を厳格に管理し、勤倹節約を提唱し、風習の改革を推進し、高額な結納金、見栄の張り合い、厚葬薄養などの悪習を否定的に捉える。中央八項規定精神の学習教育成果を深化、拡大し、年末年始などの節目を厳しく監視し、規定違反の飲食、贈答品の授受、冠婚葬祭を口実とした金銭収奪などの問題を厳しく取り締まるものとする。風紀と腐敗を同時に調査・治療し、不正な風潮の再燃を防ぐ。党・政府機関の質素な運営要求を厳格に実行し、浪費を厳しく防止するものとする。正しい業績観念を確固として確立・実践し、実行時の形だけの対応、虚偽データ報告、形式的な検査・評価などの問題の是正に注力する。文書・会議の過剰かつ効果の薄い実施、業務の総括・推進を名目とした基層への恣意的な任務付与、重複した資料要求、過剰・過密な監督・検査・評価・調査などの現象を断固として是正し、基層の負担増を防止するものとする。党員・幹部は自覚的に党の栄光ある伝統と優れた作風を発揚し、特権思想と特権現象に反対し、優れた党風をもって社会風潮と民風を向上・善へと導くものとする。
八、当直・緊急対応業務を真摯に遂行する。24時間専任者当直、指導幹部の在職帯班、外出届出等の制度を厳格に実行し、監督検査を強化し、責任を各層で確実に履行させるものとする。リスク意識と危機管理思考を徹底し、科学的に当直要員を配置するとともに、緊急対応訓練を強化し、あらゆる突発事象への対応準備を整え、緊急事態発生時に迅速かつ効率的かつ秩序ある対応を確保するものとする。直接的に大衆にサービスを提供する部門は、祝日期間中の当直勤務を合理的に配置し、サービス品質を確保すると同時に、形式主義的問題の発生を避ける。報告制度を厳格に遵守し、遅延報告・漏洩報告・虚偽報告・隠蔽報告を断固として排除するものとする。
各地域、各部門は政治的立場を高め、組織的指導を強化し、元旦の計画を真摯に策定・実施するものとする。
●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。


