「正社員採用予定」2年連続低下

 帝国データバンク福岡支店がまとめた2025年度の雇用動向に関する九州企業の意識調査(2月実施)によると、正社員の採用予定がある企業は前年比2.6ポイント減の57.2%で、2年連続で低下した。人手不足感は強いものの、原材料価格の上昇などで経営状況が厳しく、人件費の原資を確保できずに採用を控える企業が少なくないとみられる。
 大企業では正社員の「採用予定がある」は79.5%だったが、中小企業は54.1%で、このうち小規模企業は33.0と企業規模が小さいほど割合が低かった。業界別では、初任給をメガバンク並みの水準に引き上げた地銀を含む「金融」が77.8%で最高。2024年問題に直面している「運輸・倉庫」(64.7%)、「建設」(64.5%)、「サービス」(63.3%)、「製造」(60.6%)と続いた。一方で「卸売」(50.0%)、「農・林・水産」(50.0%)、「小売」(45.7%)、「不動産」(22.2%)の4業種が平均を下回った。
 正社員の採用形態では「新卒入社社員」が37.6%、「中途採用」が49.4%。社員教育にかける時間などの余裕がない中小企業で即戦力を求める傾向が強かったが、大企業との賃金格差の拡大で採用が厳しくなっているという。一方、非正社員の採用予定については、前年度比3.6ポイント減の41.4%と3年連続で低下。「運輸・倉庫」(60.8%)が最高で、飲食店やホテルなど個人消費関連で高かった。企業からは「採用したいが、募集をしてもこないのが現状」などの声が寄せられた。
 少子高齢化が加速する中、大企業では初任給の引き上げにより人材の囲い込みが強まる一方、労働人口の7割を占める中小企業の人材確保はさらに困難になるとみられる。今後、人件費を含むコスト上昇分の価格転嫁を進展させることや、シニア・外国人など多様な人材採用が重要となる。同時に、中小企業に対する賃上げ関連の助成や価格転嫁促進制度、省力化・省人化投資への支援策など、多岐にわたる国のサポートが求められる。