中国における裁判の予測可能性

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第341回)

 『人民日報』2026年1月29日付1面に「司法の利便性向上に向けた具体的な施策(司法便民利民,有哪些具体挙措)」という記事が掲載されました。これは「時折、小さなトラブルなどに遭遇することがあるが、弁護士に依頼をしたり訴訟を起こしたりするのは大変であり、どうしたらいいでしょう?」という読者投稿に回答する内容でした。
 この記事の読者への回答によれば、最近の人民法院(裁判所)は、オンラインによる手続きで実際に人民法院に一回も出向かなくても、訴訟を起こし、さらにそれが終結するまで行うことができ、さらに訴訟などの手続きに必要な書類のモデル文書も用意され、訴訟結果の予測なども含めて当事者の合理的な選択を支援するとしています。
 これまでの中国の裁判は、類似する案件であっても、異なる判断が出ることが否定されておらず、予測可能性のないものとされていました。しかし、この記事では「類似事件の同一判決は司法公正の基盤である」とまで言い切っています。中国の裁判で類似する案件に対して同様の判断がなされる制度的保障が今後なされるのか注目されます。
 また、このようにインターネット上での訴訟手続きの支援の充実に伴い、2024年に中国で発生した訴訟のうち約78%が弁護士なしで行われた訴訟であるともこの記事では述べられています。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。