「AI恋人禁止」真の目的は
2026年08月07日
【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第392回)
2026年8月1日に共同通信が「中国『AI恋人』の提供禁止 依存による社会不安を抑制」というニュースを配信しました(注1)。人間と感情的に交流する人工知能(AI)の提供を制限する「AI擬人化サービス管理規則」が7月に施行されましたが「AIサービスの拡充を図りながらも、過度な依存による社会不安を抑える」のが狙いだそうです。
「自殺の助長、美化または示唆」などの禁止事項を列挙し、未成年者への「仮想恋人・親族」といったサービスの提供を禁じたとも触れられています。ここでいう「AI擬人化サービス管理規則」とは正式には「人工智能擬人化互動服務管理暫行弁法」といいます。中国の国家網信弁、国家発展改革委、工業和信息化部、公安部、市場監管総局が合同して、2026年4月10日に発布して2026年7月15日から施行されました。
そして、この暫行弁法の第2条には「この弁法は、人工知能技術を用いて自然人の性格特性、思考パターン、コミュニケーションスタイルをシミュレートする、中華人民共和国の領域内の公衆に対する継続的な感情的インタラクションサービス(以下「擬人化インタラクションサービス」という)の提供に適用される」と規定され、第14条第1項には「擬人化インタラクティブサービスの提供者は、仮想親族や仮想パートナーなどのサービスを未成年者に提供してはならない。14歳未満の未成年者にその他の擬人化インタラクティブサービスを提供する場合は、未成年者の親権者または保護者の同意を得なければならない」と規定されています。つまり「AI恋人」の提供禁止は誰にでもなされているわけではなく、未成年者(18歳未満)が対象とされているのです。
そして、この弁法が本当に重視しているのは、AI恋人ではなく、国家の安全、名誉および利益を危うくするような扇動を行うAIや社会主義体制の転覆の扇動、分離独立(台湾独立)を扇動し国家統一を損なうAI、社会主義の核心的価値観に違反するような回答を出すAiの禁止の方です(第8条第1号)。中国からすれば、このような擬人化AIを禁止するのは当然ですが、その禁止範囲はかなり広く、中国に対しても擬人化AIを提供する場合は注意をした方がよさそうです。
〈注〉
(1)「中国『AI恋人』の提供禁止 依存による社会不安を抑制」(YAHOO!japanニュースウェブサイト)
〈https://news.yahoo.co.jp/articles/03fd6a8e7fa01c0445d0586238cf07865e50c009〉2026年8月1日更新。2026年8月6日閲覧。
●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。


