最高人民法院の業務報告(概要)
2026年03月11日
【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第351回)
『人民日報』2026年3月10日付3面に「最高人民法院業務報告(概要)(最高人民法院工作報告(摘要))」という記事が掲載されました。日本でも報道されているとおり、3月5日から全国人民代表大会(日本でいう「国会・通常国会」に相当)が開催され、ここで行われた最高人民法院の業務報告の概要を以下、紹介します。
この報告によれば「2025年、中国共産党中央委員会は『新時代の裁判活動の強化に関する中国共産党中央委員会の意見』を発表し、人民法院の活動に高い要求を定め、党による人民司法の指導の歴史において画期的な出来事となった。…(中略)…最高人民法院は党の絶対的指導を堅持し、全過程人民民主を実践し、社会主義法治の精神を発揚し、憲法と法律に定められた職責を忠実に履行し、『人民が司法事件において公平かつ公正に扱われる』ことを重視する質の高い司法サービスの提供を通じて中国の現代化に貢献するよう努めた」としています。
この言葉だけでも相当に重要な表現が含まれています。まず、最高人民法院に対しても、党の指導は「絶対的」なものであるということ、そして、公正に取り扱われる対象が「国民」ではなく「人民(=共産党の指導に従う者)」となっていること、人民の内部だけとはいえ、公平かつ公正な取り扱いをするとしている点などです。
結局、これをどう読み取るかによってこの報告の評価は大きく分かれます。党が法院を指導するのは当たり前のことで、公平、公正、質の高い司法サービスに言及した点が高く評価できるという見方もあります。一方で、党の指導や人民という表現を用いて、党のための法院が強調されたと否定的な見方もできます。
結局、どう評価したらいいのか、それが定まらない報告になったと言えるでしょう。
●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。

