米中首脳会談中の「法執行」が意味するものとは

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第368回)

 5月14日に習近平・国家主席と、トランプ・アメリカ大統領が北京で米中首脳会談を行ったことは日本でも大きく報道されています。それでは、この会談について、少なくとも法律の立場ではどのようにみえるのでしょうか。
 「中国と米国の関係発展に継続的に新たな推進力を注入する(為中美関係発展不断注入新動力)」(『人民日報』2026年5月15付2面)によれば、習近平・国家主席は、米中両国は合意した重要なコンセンサスを実行に移し、政治・外交ルート、そして両軍間のコミュニケーションルートをさらに活用すべきだと指摘し、貿易、保健、農業、観光、文化、法執行などの分野における交流と協力を拡大すべきだと述べたとしています。
 そして、今回の米中首脳会談で「法」という言葉が使われたのはこの「法執行」のみでした。法執行で交流・協力するとはどういうことでしょうか。
 法の執行機関として最も大きな組織は、公安(警察)です。そして、各国の警察も国際交流のために、職員の交換留学などを行っていることもあります。中国とアメリカはこれから警察同士で職員を互いに留学扱いで一定期間交換するプログラムを行うのでしょうか。そのようになる可能性はあります。
 そして、法執行の交流・協力としては、犯罪者引き渡し協定を今後締結するという意味が含まれている可能性もあります。しかし、アメリカと中国で犯罪者引き渡し協定が締結された場合、これは大きな問題となり得ます。アメリカには中国を政治的に追われて事実上の亡命をしている者が多くいるからです。一般的に、犯罪者引き渡し協定を締結する場合、政治犯はその範囲から除くことになっています。しかし、中国の場合、他国にとっては、政治犯であっても「政治犯ではない」というスタンスを取ることがこれまでにもありました。
 いずれにしても言葉の量は少ないですが、この米中首脳会談における方針の一つである「法執行の交流・協力」は注視したいところです。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。