吉林省で“政法の戦い”

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第299回)

 『人民日報』2025年8月28日付2面に「安全と安定を維持し 法治建設を強化し 中国式現代化した吉林の新たな章をまとめるために政法の力を貢献する(維護安全穏定 加強法治建設 為譜写中国式現代化吉林篇章貢献政法力量)」という記事が掲載されました。これによれば、中共中央政治局委員、中央政法委員会書記の陳文清が25日から26日にかけて吉林省を視察し、政法の戦いは習近平・総書記の吉林省に対する重要な指示の委託により、発展と安全を統括し、安全安定の維持、法治建設の強化など各方面の業務を着実に遂行し、中国式現代化の吉林省における新たな章を作るために政法の力を貢献すべきだと強調したとのことです。
 これだけでは何を言っているのかよく分かりません。要するに、習近平らは吉林省を新たな法治の試行地域にしようとしているようです。吉林省の一部地域で法治を強く実行し、それがうまくいけば習近平・総書記の統治方針は間違っていなかったということになり、この吉林省での法治徹底について失敗するわけにはいかないのです(そのため「政法の戦い」とまで表現しています)。では、吉林省で法治を強く打ち出して、何をもって統治方針の成功とするのかというと治安改善のようです。
 いずれにしても、これから吉林省の状況が習近平政権に大きな影響を与えるでしょう。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。