定年の年齢超えて働ける規定施行
2026年05月29日
【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第377回)
2026年5月27日にNNA ASIAアジア経済ニュースウェブサイトが「定年後も働く高齢者の権利保障、新規定施行」という記事を配信しました(注1)。これによれば中国で定年退職後も働き続ける高齢者の基本的権利を保障する新しい規定が7月1日から施行されるとのことです。
これは「高齢労働者の基本的権利及び利益の保護に関する暫定規則(超齢労働者基本権益保障暫行規定)」(2026年5月10日人力資源社会保障部、国家衛生健康委員会など令第56号発布、同年7月1日施行。以下「暫定規定」といいます)のことを指していると思われます。そして、暫定規定第2条第2項は「規定に従って早期退職した労働者がその後雇用主に雇用された場合、本規定により執行するものとする」と規定し、第4条第1項は「年齢制限を超えた労働者を雇用する雇用主は、労働者の知識、技能、経験に基づき、適切な職務を提供しなければならない」と規定しています。
中国は社会主義国家として、長らく全員同じ労働条件で働くという前提の下、法律上の定年年齢も「定年の最低限度の年齢を示したもの」ではなく「その年齢まで働かせなければならない年齢」であり「その年齢を超えて働かせてはならない年齢」と考える学説が支配的な側面がありました。
そんな中、やはり定年を超えた年齢の者が中国でも増えてきたためか暫定規定発布となりました。しかし、それであっても暫定規定第2条第2項は「早期退職した労働者」と定年年齢にまだ達していない人に向けた規則のようにも見える規定があり、その一方で第4条のように「年齢制限を超えた労働者を雇用する雇用主は」と定年年齢に達した者に向けた規則を思わせる規定もあり、暫定規定全体としてはその対象につき一定しない面があります。
また、暫定規定第6条は「使用者は、年齢制限を超える労働者と書面による雇用契約を締結しなければならず、契約期間、職務内容、勤務地、労働時間、休憩および休暇、賃金、社会保険、労働保護、労働条件、および職業上の危険防止について明確に規定しなければならない」と規定しており、定年年齢を超えた労働者にも労働法の規定がそのまま適用されるような条文もあります。いずれにしても、中国でついに定年年齢を超えても働くことができるという規定が導入されるということは(それでも「早期退職した労働者」など、本当に定年年齢に達した者に対する規定なのか疑問が残る面もありますが)、これまでの定年に対する学説を否定するような暫定規定が施行されるということで中国の労働法制にとって大きなニュースであることには間違いがないでしょう。
〈注〉
(1)「定年後も働く高齢者の権利保障、新規定施行」(NNA ASIAアジア経済ニュースウェブサイト)〈https://www.nna.jp/news/2928578〉2026年5月27日更新、2026年5月29日閲覧。
●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。


