防衛費増大で「基地経済」強化図る佐世保
2026年03月27日
昨今の防衛関連需要の増大を受けて、歴史的に基地経済で動いてきた長崎県佐世保市でも、防衛関連産業の振興で地域活性化する機運が高まっている。今年3月には、十八親和銀行や佐世保商工会議所などが防衛産業セミナーを開催、地元の大きな関心を集めた。
佐世保市は明治時代に「佐世保海軍鎮守府」が開庁して以降、造船や修理、補給などの軍需関連産業が集まり、軍港都市として発展した歴史があり、終戦後は、鎮守府は解体されたが、米海軍基地、 自衛隊(海上・陸上)基地が設置され、国内有数の防衛拠点となっている。また、同市は、東シナ海に面し、朝鮮半島や中国大陸に近接する位置にあるため、日本の南西地域の防衛に重要な役割を果たしており、艦船建造や修理など造船業を中心に防衛関連の仕事が多く、市内総生産の約1割を基地経済が支えているのが特徴だ。
2024度の基地経済等実態把握調査によれば、自衛隊員の消費効果が約547億円、自衛隊の発注効果などが約425億円、米軍基地の発注効果が約191億円、米軍基地軍人などの消費効果が約159億円で、自衛隊や米海軍の経済波及効果は全体で約1322億円に上る。
そんななか、国の今年度の防衛予算は、9兆353億円(米軍再編関係経費などを含む)で、初の9兆円台に達した。こうした流れを地域振興につなげようと、今年3月、十八親和銀行、佐世保商工会議所、みずほ銀行が初めて「防衛産業セミナーinさせぼ」を開催。地元の経済界関係者など約200人が参加した。防衛産業の動向が紹介されたほか、パネルディスカッションも行われた。元防衛事務次官の島田和久氏や十八親和銀行の山川信彦頭取、佐世保商工会議所副会頭で、船舶修理業「ホーセイ」社長の池田真秀氏が登壇して意見を交わした。
討論のなかで、佐世保市の人口はこの10年間で約2万人減少し、特に30歳未満の若い世代が約19%減少していることに加え、中心商店街で進む活力低下やハウステンボスに計画されていたカジノを含むIR整備計画が国から不認定になるなど、地域振興面で大きな課題があることが指摘された。そういったなかで、池田氏は、基地の存在は「他都市にはない大きな資源であり、佐世保としてこの強みをどう活用していくかが今後テーマとして問われてくる」とした。
一方、十八親和銀行の山川頭取は「防衛産業は日本という国の平和を維持し守る産業ということを位置付け、企業の行動の中に落とし込んでいくことが重要で、若者の関心を高め、人を確保することがポイントになる」とし、「地元企業が技術や経験、ノウハウを生かして防衛産業に参入するとともに、収益性についても見極めていくことも必要」と指摘している。
こうした基地経済の恩恵を強化しようと、佐世保市は今年3月「佐世保市基地経済ビジョン」を策定した。国の動向や「基地経済等実態把握調査」による報告、提案を踏まえ、基地という本市の強みを最大限に生かした地域経済活性化につなげるための羅針盤とする。具体的には、艦船修繕の受注拡大に向けて米艦船の修繕などで地元企業が連携する取り組みを後押しする。
前述の池田氏は「佐世保市は防衛産業に挑戦できる大きなポテンシャルがある。一過性で終わらせずにしっかりとロードマップを作成し長期ビジョンに立って、オール佐世保で地域の発展に取り組みたい」と期待感を示し「佐世保市はこれまで基地の街と言われてきたが、これからは基地を生かす街として新たな価値を生み出していくことが必要だ」と話す。佐世保市としては基地経済をさらに強化することで、街の再構築に乗り出している。


