「法治宣伝教育法」施行

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第318回)

 2025年11月1日に中国で「法治宣伝教育法」が施行されました。これは、法律を中国全民に普及させるための基礎的な法律であり、「習近平の法治思想」が初めて法律に盛り込まれ、中国の特色ある社会主義放置体系の構築と社会主義放置国家建設の基盤が固まったと評されています。
 そして、これを受けて『人民日報』2025年11月4日付1面にも「法治の根幹は人民にある(法治的根基在人民)」という記事が掲載されました。この中で「全民普法(国民全体への法律普及)は、幾多の変遷を経験した中華民族が、自国の国情に合った現代化の道を模索する中で『法治国家の社会的基盤を固める』ために提示した画期的な中国式ソリューションである」と述べられています。ここで重要なのは「自国の国情に合った」で、これを述べると、結局「法治」などと述べても「自国の国情に合った法治」ということになり、「法治」は行うが「自国なりの法治の定義がある」と中国以外が理解する「法治」とは異なるものとなっている可能性があります。
 中国で教育されていく「法治」は、中国独自の定義が置かれたものなのか注視していく必要がありそうです。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。