連携する地方の司法機関

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第311回)

 『人民法院報』2025年10月9日付1面に「山東・青海の高級人民法院が共同で『三江源と黄河口』司法対話活動を開催(山東、青海高院聯合挙弁“三江源与黄河口”司法対話活動)」という記事が掲載されました。これによれば、山東省高級人民法院と青海省高級人民法院が共同で山東省東営市において「三江源と黄河口」司法対話活動を開催し、人民代表大会代表、政治協商会議委員、専門家・学者、行政機関代表などを招き、黄河流域の国立公園の司法保護に向けた方策を共に検討したそうです。さらに、山東省高級人民法院と青海省高級人民法院は「三江源と黄河口」司法対話覚書に署名し、黄河流域の国立公園建設を支援する6件の司法サービス典型事例を共同発表したとのことです。
 日本でも複数の行政機関や地方自治体が協力や提携をすることはあります。しかし、中国の場合は、地方の司法機関(裁判所)が協力や提携することがあり、さらに、国立公園建設を支援するという特定の政策の実現に向けて動くこともあるのです。
 理論上、中国では、日本と異なり、司法機関がこのような活動を行うこともあるのですが、西洋型「法治」を受け入れつつあるように見える中国で、現在もこのような地方司法機関の独自の活動が見られたという点に驚きがあります。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。