「ハルビンの氷雪経済」と習近平法治思想

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第321回)

 『人民法院報』2025年11月13日付2面に「司法が氷雪経済を守り“冷たい資源”を“熱い産業”へ変える(司法護航冰雪経済譲“冷資源”変“熱産業”)」という記事が掲載にされました。これによれば黒竜江省ハルビン市で開催された第9回アジア冬季運動会の開催式で習近平・総書記は以下のように述べたそうです。
 「ハルビンに来て『氷天雪地も金山銀山である』ことを実感した。氷雪文化と氷雪経済は、ハルビンの高品質な発展の新たな原動力と対外開放の新たなきずなとなりつつある」
 これは、氷雪スポーツ、氷雪観光などで産業を発展させていくという意味のようですが、それだけではなく、人民法院(裁判所)が積極的に氷雪経済の発展にサービスと保障を提供することは、習近平法治思想を深く理解し自覚的に実践することであると、ハルビン中級人民法院の院長代理が発言しています。
 この記事によると、人民法院が積極的に氷雪経済にサービスと保障を提供するとは、ビジネス上の財産権保護、契約履行の徹底、さらには氷が解けないうちに関連する訴訟をスピード感を持って結審させることを言うようです。
 中国では日本のような司法の独立はなく、政策上の目的のために裁判すらその号令に従うとはこれまでも指摘されてきたことです。そして、それが結局中国の裁判所であるし、今回の記事でそれを推進するのが習近平法治思想であるようです。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。