最高人民法院の業務報告

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第353回)

 『人民日報』2026年3月17日付2面に「最高人民法院業務報告(最高人民法院工作報告)」に関する記事が掲載されました。日本でも大きく報道されている中国の全国人民代表大会(日本の「通常国会」に相当)でなされた最高人民法院の「2025年業務報告」の文字起こしです。もちろん1年間の同報告はボリュームが膨大ですので、ここではその一部を見てみましょう。
 同報告の中でも「2025年の業務を振り返る」という報告の導入部分で「中国共産党中央委員会による新時代の裁判業務強化に関する意見(中共中央関于加強新時代審判工作的意見)」が発表されたことが特に注目されます。ここでは、民法院の活動に対する要求水準を引き上げ、人民司法に対する党の指導の歴史において画期的な意義を持つものであり、この1年間、習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想に導かれ、習近平の法治思想を徹底的に実施して「すべての司法事件において人民が公平と正義を感じられるよう努力する」ことに奮起した1年であったと述べられています。
 確かに、2025年は中国の司法が、日本が理解するような司法状況に大幅に近づいた1年だったと言えます。つまり、公平と正義が強くうたわれた1年だったということです。しかし、それでもまだ日本などが理解するような「公平と正義」からはほど遠いような判決が出ることもあり、まだまだ途上状態であることも確かです。
 あと、本連載でも何度か述べていますが「習近平の法治思想」についてはよく分からない状態で、中国当局も明確な定義づけを示していません。しかし、同報告の中で習近平の法治思想という言葉を使うことが重要だったのでしょう。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。