全国統一大市場の構築を深化

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第304回)

 『人民日報』2025年9月16日付1面に「『求是』誌が習近平総書記の重要論文を発表――全国統一大市場の構築を深化させる(《求是》雑誌発表習近平総書記重要文章――縦深推進全国統一大市場建設)」が掲載されました。これによれば、9月16日発行の『求是』という雑誌の18号に、習近平の論文「全国統一大市場の構築を深化させる(縦深推進全国統一大市場建設)」が掲載されたとのことです。
この論文は、全国統一大市場を建設することは党中央が下した重大な決断であり、新たな発展構造の構築や高品質発展の推進に必要なだけでなく、国際競争における主導権を握るためにも必要であると述べているそうです。世界第2位の消費市場である中国は、全国統一大市場を構築し、リスクや挑戦に余裕を持って対応する自信を強めなければならないとも述べているとのことです。
そして、この論文は、全国統一大市場の建設を深化させる基本的な要求は「五つの統一と一つの開放」であると指摘していて、「五つの統一」とは、①市場の基本制度を統一すること、特に財産権保護、公平競争、品質基準などの制度の統一を実現すること②市場インフラを統一し、物流、資金流、情報流を円滑化し、現代的な商業流通システムを整備すること③政府の行動基準を統一し、地方が経済発展、特に企業誘致を推進する際に、明確なルールで定め、各地方が独自に行動しないようにすること④市場監督管理の執行を統一し、市場監督管理の行政処罰裁量基準を明確にし、一つの物差しで一貫して測ること⑤要素資源市場の統一を図り、自由な流動と効率的な配分を促進し、資源の誤配分や遊休浪費を減らすこと─だそうです。また「一つの開放」とは、開放を継続的に拡大し、対内・対外開放を連動させ、閉鎖的な運営を行わないことであるとしているそうです。
どうやら、中国自身が巨大な消費市場であることをうまく使って外国企業などを誘致しようとしているようです。中国がどのような市場を築くか、外国企業への規制は緩和されるのかなどはしっかりと見極める必要があるでしょう。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。