美しい国のため環境犯罪は「厳打」

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第261回)

 『人民日報』2025年4月16日付11面に「公安機関は法により、生態および生物安全犯罪に対して厳打を行う(公安机関依法厳打危害生態和生物安全犯罪)」という記事が掲載されました。これによれば、近年、中国の公安は生態環境破壊、生物安全保障を危うくする各犯罪を強く取り締まっており、美しい中国建設のために活動しているとのことです。
 厳打(げんだ)とは、犯罪行為が確認できたら、公安、裁判所などが一体となってその犯罪に対して早く・重く裁くという犯罪取り締まり運動のことです。つまり、中国は環境犯罪に対して早く・重く裁くという方針を打ち出しているということです。
 ところで、この厳打は、中国の行政機関が「厳打を行う」との意思表示を示し、これに裁判所なども従うため、司法の独立の観点からよろしくないと指摘されています。もちろん、2025年になってもまだ「厳打」を行っていることは批判されています。そんな厳打を行っていても『人民日報』上で記事にされてしまうほど、厳打は中国では受け入れられているということでしょう。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。