北九州の「EV電池工場」断念

 日産自動車(横浜市)は5月9日、北九州市若松区で計画していた電気自動車(EV)向け電池工場の建設を断念すると発表した。業績不振やEV市場の成長鈍化で、巨額投資は難しいと判断した。日産は今年1月、工場建設に向けて福岡県・同市と立地協定を締結していたが、わずか3カ月で解消された。日産の決定を受け、経済産業省は新工場への補助金の認定を取り消した。
 日産の計画では、響灘地区の約15万平方メートルの敷地に工場を建設。新型のLFP(リン酸鉄リチウムイオン)電池を生産し、2028年度にも同社のEVに搭載する方針だった。雇用創出は約500人としていた。投資額は1533億円で、経産省から最大約557億円の助成を受ける予定だった。4月に経営会議のメンバーが一新され、投資効果を見直したという。
 日産は25年3月期連結決算の最終損益が最大7500億円の赤字となる見通しで、世界で生産体制の見直しを進めていた。トヨタ自動車も3月、福岡県苅田町で進めていたEV向け電池工場の建設計画について、立地協定の締結を延期する方針を県に伝えている。