【九州新幹線西九州ルート】新幹線協議の実利で北部3空港連携も/佐賀空港の滑走路「2500メートル化」で機能分担探る!?

 九州新幹線西九州ルートをめぐる国との協議が、佐賀空港の機能強化にも波及している。国土交通省は2027年度から北部九州3空港のあり方に関する調査に乗り出す。長年、滑走路延伸を求めてきた佐賀県にとって一つの“実利”といえる。今後は福岡、北九州との役割分担や、陸路を含めた交通網のあり方が焦点となる。

アセスは来春に完了見込み 2500メートル化へ踏み出す

2500メートルへの滑走路延長が焦点となる佐賀空港

 九州新幹線西九州ルートをめぐる国との一連の協議で、佐賀県が得た“実利”の一つが佐賀空港の機能強化だ。7月、国と県は整備方式が決まっていない新鳥栖―武雄温泉間について、具体的なルートは定めずに、2027年度から環境影響評価(環境アセスメント)を実施することで電撃的に合意した。もっとも、環境アセスの実施はフル規格による整備やルートが決まったことを意味しない。
 その一方、地域振興として、合意事項には佐賀空港の滑走路延長と平行誘導路整備の議論を受け、27年度から「北部九州地域の空港のあり方に関する検討」の調査を実施することが盛り込まれた。県が18年度から国土交通省に要望してきた2000メートルから2500メートルへの延長について、国が具体的な調査に乗り出す意味は大きい。新幹線を巡る協議を前進させる一方、長年の懸案だった空港機能強化を国の政策検討の俎上(そじょう)に載せた格好だ。複数の地元経済人は「いろんな見方が飛び交った県と国の交渉だが、佐賀空港の機能強化という実利を得ることを当初から見定めていたとしたら、山口祥義知事の深謀遠慮には恐れ入る」などと話している。
 そもそも2500メートル化は新しい構想ではない。佐賀空港はもともと2500メートル滑走路を想定し、用地も確保していたが、開港後に便数が伸び悩んだことなどから2000メートルでの運用が続き、延長の議論は進まなかった。その後、東南アジア諸国との直行便など国際線の新規路線誘致に向け、23年度から延長計画の検討を本格化。現在、500メートル延長し、2500メートル滑走路の33年度までの供用開始を目指している。
 昨年10月には、アセス手続きの3段階目に当たる「準備書」を公表しており、評価書の公表で完了することになる。当初は26年度上期に完了する予定だったが、オスプレイ関連の追加調査が必要となり、半年程度遅れ、27年春ごろになるとしている。
 佐賀空港の25年度の利用者数は、前年度比4万218人増となる64万800人。羽田便は48万880人、国際線のソウル便と台北便はそれぞれ増便されたことから、ともに増加。上海便だけが、昨年12月から運休している影響で、中国からは大幅に減少している。
 また、防衛面でも大きく変わった。同空港の隣接地には昨年7月に陸上自衛隊佐賀駐屯地が開設され、輸送機オスプレイ全17機の配備が完了。九州・沖縄の防衛力を強化する「南西シフト」の一環として、相浦駐屯地(長崎県佐世保市)の水陸機動団と一体的に運用する。オスプレイは佐賀空港の滑走路を民間機と共用しており、防衛省によると、配備から1年間の離着陸は約3300回。当初想定した最大約4640回の約7割となった。

三つの空港の役割分担で 広域交通の将来像を描く

 さらに2500メートル化を後押しするのが、過密空港となり、国の許可なしでは増便できない福岡空港を補完する役割への期待だ。福岡空港では25年3月に第2滑走路が供用を開始したものの、2本の滑走路は間隔が約210メートルと狭く、同時離着陸ができない。このため1時間当たりの発着回数は38回から40回、年間の滑走路処理能力も17万6000回から18万8000回への増加にとどまる。その一方、25年度の旅客数は国内線約1944万人、国際線約939万人と、ともに過去最多を更新した。このまま航空需要の拡大が続けば、周辺空港を含めて需要を受け止めることが必要になる。佐賀空港は福岡空港を補完するという広域的な役割からも重要性を増してくる。
 今回の調査が持つ意味は、佐賀空港の2500メートル化をめぐる検討だけにとどまらない。国土交通省は「交通ネットワーク全体の相乗効果を最大限発揮させる観点」を踏まえ、27年度から「北部九州地域の空港のあり方に関する検討」の調査を実施するが、佐賀空港単独ではなく、旺盛な航空需要を抱える福岡空港、24時間運用が可能な北九州空港を含む3空港を一体的に捉えていることがポイントだ。
 3空港を取り巻く環境はそれぞれ大きく変化している。先述のように福岡空港では第2滑走路の供用後も旅客需要が拡大し、さらなる処理能力の向上が課題となっている。北九州空港は24時間運用という強みを生かし、旅客に加えて貨物機能の強化を進めている。現在2500メートルの滑走路を3000メートルへの延長工事が進んでおり、来年の供用開始を予定する。大型貨物機の長距離運航への対応力を高め、国際物流拠点としての機能も強化する。
 これまで北部九州の3空港は、それぞれの設置主体や運営形態が異なり、個別に機能強化や路線誘致を進めてきた。今回、国が3空港を対象とした調査に乗り出すことで、航空需要を広域的に捉え、旅客、貨物、国際線などの機能分担や連携の可能性を検討する道が開ける。どこまで具体的な役割分担を描けるかが重要となりそうだ。さらに、空港だけで議論を完結させない点だ。今回の国と佐賀県の合意では、交通ネットワーク全体の相乗効果を最大限発揮させる考え方が示された。
 九州新幹線長崎ルートを巡る国と佐賀県の協議を契機に、長年の懸案だった空港機能強化が国の政策検討に組み込まれた意味は大きい。佐賀県にとっては、2500メートル化に向けた議論を前に進める一つの“実利”を得たことになる。一方、その検討は佐賀空港単独にとどまらず、福岡、北九州を含む3空港の連携や役割分担を探る議論へと広がる可能性がある。
 福岡空港の旺盛な旅客需要、北九州空港の24時間運用と貨物機能、そして佐賀空港の将来的な機能拡張。それぞれの強みをどう生かし、北部九州全体で航空需要を受け止めるのか。佐賀空港の2500メートル化への道筋とともに、北部九州の3空港の役割がどこまで具体化されるかが焦点となりそうだ。
(鳥海和史)