【Focus Okinawa】開業1年課題改善続くジャングリア/軌道に乗り始めた「沖縄から日本の“未来を”つくる」
2026年08月20日
本島北部の今帰仁村(なきじんそん)にあるテーマパーク「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」は7月、開業から1年を迎えた。当初は苦戦も伝えられたが、ここにきて評価が高まっている。その背景には「想定外な事態の発生は想定内」と捉え、来場者やスタッフの声に耳を傾け運営の改善に着実に取り組んできたことがあるようだ。
「未熟さ」原因で吹いた逆風 「想定外」共有し事態に対応
開業前から、ジャングリア沖縄の注目度が高かったのには幾つかの要因がある。その一つが、経営危機に陥っていたUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)をV字回復させたマーケティング会社「刀」の森岡毅社長兼CEOが長年、思い描いていた構想を具現化したという点だ。本島北部に広がる「やんばる(山原)」を利用した約60ヘクタールの敷地に、700億円余りを投じて20種類以上のアトラクションを設けるという事業規模も大きな話題を呼んだ。
ところが、いざふたを開けてみると、ジャングリア沖縄に吹いたのは追い風ではなく逆風だった。その原因を運営会社であるジャパンエンターテイメント(JE、沖縄県名護市)の佐藤大介副社長COOは「開業当初は未熟な部分も多く、すべてのお客さまがご満足いただける時間を提供できなかったため」と振り返る。佐藤副社長の発言にある「未熟な部分」とは、オフィシャルアプリにシステムの不具合が発生したことやアトラクションの待ち時間の長さ、アトラクションの前評判と体験後の評価との隔たりなどを指す。
しかし、開業から1年を経て、ジャングリア沖縄に対する評価は着実に上がっている。例えば、開業直後、2点台前半と低迷していたGoogleや海外の旅行予約サイトの口コミスコアは、軒並み4点台へと上昇している。その要因を佐藤副社長は「想定外の事態が発生することは想定内だという認識を全てのスタッフが共有し、お客さまに快適な時間を提供できるよう一つ一つの課題と丁寧に向き合い、改善に取り組んできたから」と説明する。
来場者とスタッフの意見に 耳を傾け課題に即座に対応
佐藤副社長は「お客さまの安全・安心は100%を目指しつつ、ほかの部分は及第点ならOKという気持ちで開業準備を進めた」という。その上で「この発想は、当社がミッションに設定する『沖縄から日本の“未来を”つくる』を実現する上でも不可欠」と付け加える。ここには、ほかに例を見ないエンターテインメント施設をつくり上げる過程として、経営陣だけでなく全スタッフが一人称で関わることを重視する姿勢がある。
この思いを具体的に進める場としてジャングリア沖縄では、プレオープンのときから課題解決会議が開かれている。例えば、時間帯別の入場者数やアトラクションの待ち時間の推移といった客観的なデータ分析と、来場者やスタッフから出た意見を突き合わせて改善点を判断する。「翌日に対策が可能と判断した場合は、その体制を整える。時間を要する場合は、中長期的な視点で解決策を講じることを繰り返した」と佐藤副社長。その上で「改善策を講じたとしても新たな課題が生じることは多いが、着実に理想とする施設に近づいている証し。また、解決策を全員が共有することで効果的な解決策が見つけやすくなったり、課題解決までの時間の短縮化が図れるようになった」と効果について語る。
課題を踏まえて改善を図った取り組みの一つにオペレーションがある。例えば「ダイナソーサファリ」は、開業から最も多くの改善を図ったアトラクションの一つだ。ハード面ではより多くの人に利用してもらえるよう乗り物の座席配置を見直したり、コース上の植栽を調整することで体験時の興奮を高めるように工夫した。また、ほとんどのアトラクションで、並び方や案内方法の改善、スタッフの配置などの改善策を講じた。さらに、開業当初は一部の人気アトラクションに人が集まり、待ち時間が短いショーやアトラクションを楽しめないケースが目立った。その改善策として、パーク内の案内サインを拡充したほか、4カ国語対応のリーフレットを作成し、入場時に渡せるよう体制を整備した。
開業して間もない8月中旬に新たな選択肢として導入した「午後パス」は、混雑緩和と効率的なパーク体験に大いに威力を発揮した。ダイナソーサファリの優先利用特典を付与するなど来場時間の分散化につながったほか、夜間イベントやショーの内容を拡充することで夕方以降の滞在価値の向上を図った。また、ショーに沖縄らしさを取り入れたことが、来場者の満足度向上につながっているという。アトラクションの入り口で受付を済ませば、指定された時間に体験できる「待ち列解放サービス」も好評だ。
開業してしばらくは「県内客への関心が低い」(地元経済人)という声も少なくなかったが、ジャングリア沖縄は「沖縄に深く根ざし、地域と共に成長する」をテーマに設定する。このコンセプトを実現するため、複数のプロジェクトを実施していることも評価が高まっている要因だろう。例えば、名護市や今帰仁村と連携して地域を盛り上げる「わがまちウィーク」を開催し、「応援団長兼地元のご意見番」は沖縄出身のお笑いコンビ、ガレッジセールのゴリ氏が務める。ほかにも地元企業やアーティストとのコラボ、社会課題や観光課題の解決を目指す地域のスタートアップや教育機関を支援する「おきなわ未来づくりプログラム」などがある。9月末までの期間限定だが、短時間滞在向けの新チケット「ふらっとチケット」は、本島北部にある他の観光地に波及効果が及ぶことを意図している。
JEは開業から1年を迎えた7月25日、パーク内で記者会見し、スパ利用客を含む年間来場者数は約100万人で、売上高は100億円超との見通しを発表した。また、来場者数についてJEの加藤健史代表は「残念ながら思うような数字には至っていない」と述べた。他方、会見には琉球銀行(那覇市)のシンクタンク、りゅうぎん総合研究所(同市)も同席し、1年間の経済効果は494億円で、プロ野球キャンプ(224億円)やクルーズ船寄港(161億円)を大きく上回るとした。ただ、損益が明らかにされなかったことに不満を抱く人もいる。
ジャングリア沖縄が目指す「沖縄北部の自然と観光資源を生かし、地域経済と日本の観光産業全体を変革する」挑戦は続く。
(竹井文夫)