プロジェクト【沖縄発の産業振興策】OFG離島振興プロジェクト新章へ/伴走型支援で沖縄本島の「未来像」描くモデルを構築
2026年05月20日
おきなわフィナンシャルグループ(OFG、那覇市)が提唱し、沖縄本島の周辺離島10町村と県内企業が締結するパートナーシップ協定の新たなメンバーに3月、りゅうせき(浦添市)が加わった。地域との共存や共生を経営方針の根幹に据える四つの企業と離島町村による持続可能な地域づくりの新たな展開が期待されている。
自治体のニーズに対応 加盟企業で幅広く支援
3月にりゅうせきが加わった協定の正式名称は「離島地域持続可能性推進に関するパートナーシップ協定」。OFGと沖縄セルラー電話(同市)、沖縄電力(浦添市)に次ぐ4社目となる。りゅうせきの根路銘剛宏社長は「本協定で県内加盟企業と協働し離島地域の発展に貢献することは、当社のパーパス(存在価値)を具体的に体現する取り組み」と説明。その上で「まずはエネルギー分野での支援からスタートし、各自治体のニーズに応じてグループ全体で幅広く支援していきたい」と今後の展開を見据える。
りゅうせきの加盟式と併せて、企業版ふるさと納税寄付金の贈呈式が行われ、4社から各町村にそれぞれ1100万円が贈呈された。同協定の目的をOFGの地域総合商社、みらいおきなわの譜久村親社長は「企業と離島の自治体が手をつなぎ、地域活性化に向けてウィン・ウィンの関係を築くことにある」と説明する。
ちなみに、10町村に沖縄銀行の支店や営業所はない。それでもOFGが離島に経営資源をつぎ込むのは、地域を活性化させ、社会の活力を維持することが長期的にはOFGの利益につながるという発想がある。さらにOFGの山城正保社長(沖縄銀行頭取)が「小規模離島への貢献が、将来的には沖縄全体の活性化につながる」という思いもあった。離島は交通が不便で移動・移送コストが高くなるほか、人口が少なく経済効果が小さいなど不利な条件が多い。だからこそ、そうした地域と共に成長することを成長戦略の根幹に据えるOFGが「日本にとっての離島である沖縄本島の未来像を描くモデルにする」(譜久村社長)という狙いもあった。
プロジェクト始動の背景には、もう一つ大きな出来事があった。OFG設立直前の20
21年9月に発覚した、座間味村役場那覇出張所の職員による売上金の横領事件だ。出張所は那覇市の泊ふ頭旅客ターミナルにあり「自治体の人手不足や業務の硬直化という離島の弱点が関係している」(譜久村社長)ことも一因とされた。実際、宮里哲村長は「役場の業務は長年、脈々と受け継がれてきたものであり、内部の人間が根本的な問題を洗い出し、改善することが難しいのが現状。公金の管理について外部から金融のプロに入ってもらい見直しを進めることは大変ありがたかった」と振り返る。そこでOFGは22年3月、座間味村と包括連携協定を締結し、村役場と那覇出張所に2人の社員を派遣した。
翌年1月には周辺離島の9町村が加わり、さらに24年6月、沖縄電力と沖縄セルラー電話が参加。3社と各自治体との4者によるパートナーシップ協定が締結された。山城社長は「電力と通信という現代社会に欠かせないインフラを担う企業がパートナーシップ協定に加わったことは、非常に心強かった」と当時の心境を振り返る。
役場職員と信頼関係構築 「わが島の出向者が一番」
OFGは新たに創設した「ジョブチャレンジ制度」を活用し、離島に出向する社員を募った。山城社長が出向している社員に伝えたのは「役場の職員との信頼関係を築くこと」だという。さらに、役場の職員と一緒に働き、島に溶け込むことを求めた。すると、徐々に役場の職員から「実はここの効率が悪い」「ここを変えたい」という意見が出るようになった。「今では町長や村長が集まる会議で『わが島の出向者こそが一番』という発言が出るまでになった」という。OFGはこれまで10島に16人を出向させ、現在は13人が各町村役場の職員として勤務している。
出向者が担うのは、業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化やキャッシュレス化、移住促進、事業の担い手の育成など多岐にわたる。また、島内の中学生を対象にした金融リテラシー教育「くらしとお金の教室」も実施する。加えて、みらいおきなわのほか、おきぎんリースやおきぎんジェーシービーといったグループ企業も、職員向けの講習や車両のリースなどの事業を展開している。24年6月から沖縄電力と沖縄セルラー電話が加わったメリットを譜久村社長は「離島の課題解決に向けて、より広範な事業展開が可能になったこと」と説明する。
例えば沖縄電力は、無電柱化や再生可能エネルギーの供給体制の構築など、災害への耐性の強化を図っている。さらに、電気やガスの共同検針、見守りサービスなど「少子高齢化に向かう社会の安心・安全を支える仕組みづくり」にも取り組む。他方、沖縄セルラー電話は、災害時にも通信可能なインターネットサービスであるスターリンクを活用した取り組みや、文科省が推奨するGIGAスクール用のパソコンへの切り替えなど、離島地域の情報通信基盤の高度化を進めている。また、乗合型AI(人工知能)オンデマンド交通「MOBI(モビ)」は、少子化により公共交通が弱体化する離島にとって貴重な移動手段になることが期待されている。
「持続可能な地域づくり」に関する一連の活動が評価され昨年3月には、地方創生大臣賞を受賞している。県内の離島に行員が出向し、各離島が抱える課題を把握した上で産業創出を後押しする取り組みが評価された。4者が連携した独自の発想に基づく地方創生の挑戦は、これからも続く。
(竹井文夫)