【地域共創】転換期のDMOは成果問われる局面へ/観光庁の「審査基準厳格化」は起死回生策となるのか
2026年04月20日
地域の観光資源を活用し、観光地域づくりを戦略的に行うDMO(Destination Marketing/Management Organization)は、今年が転換期だとされる。観光庁による登録要件が厳格化され、機能や実行力に対する評価が厳しさを増しているからだ。自治体などからの補助金に頼らない自立的な経営が、これまで以上に問われることになる。
九州第1号の先駆的DMO 強みを生かせる事業を実施
日本の観光は単に人を呼び込むことから、量から質への転換を実現するフェーズへと移行している。そうしたなかDMOには、オーバーツーリズム対策や高付加価値化、多様化するニーズへの対応など、事業者が個別では対応が難しい課題を解決へと導く先導的な役割が求められる。観光庁が2023年度から先駆的DMOを選定しているのは、仕切り直しによりDMOの機能をより高めたいという本気度が透けて見える。
先駆的DMOには「DMOの活動の質を高めることで、世界に誇れる持続可能な観光地を形成する役割を担う」(観光庁)ことが期待されている。同庁に登録されたDMOは全国に333法人(昨年12月17日現在)あるが、これまで先駆的DMOに選定されたのは11法人のみ。昨年10月には九州で初めて、一般社団法人「長崎国際観光コンベンション協会」が選ばれた。
同協会は、観光・交流まちづくりのかじ取り役として、18年3月に日本版DMO(地域DMO)に登録された。21年3月に策定された長崎市事業計画では「訪問客の満足度向上・消費拡大」「事業者のビジネスチャンス拡大・収益向上」「市民の満足度向上」の継続的な実現がミッションに設定されている。今年度からスタートする「DMO NAGASAKI観光地域戦略」でも、このミッションを継続しつつ「地域観光交流の課題、地域事業者のニーズ(=困りごと)、訪問客ニーズ(=求めているもの)をマネジメント・マーケティングの力で解決(提供)し、豊かな地域を創造する」ことを目指す姿に設定する。
同戦略が目指すのは、長崎市の市政運営方針である「長崎市第五次総合計画」に基づいて、市の観光・MICE分野における上位計画「第二次長崎市観光・MICE戦略」を実現することだ。長崎市DMO事業計画を実施した上での課題を踏まえて、同計画と同様に市場を「国内」「インバウンド(訪日外国人)」「MICE」「修学旅行」の四つに分け、各項目でさらにターゲットを細分化してそれぞれにキャッチコピーを設定し、誘客する方法や手段を明確化した上でマーケティング戦略を構築している。
例えば「国内」は、長崎市に関心はあるものの来訪したことがない層、訪問5回以上のコア層、過去に来訪したことがある層など五つのタイプに分類。「インバウンド」は、韓国、台湾、香港、米国の4カ国・地域にその他のエリアとクルーズの計六つに分類している。
さらに「滞在価値の最大化と魅力発信」「観光・MICE・産業の持続的成長」「市民参加と地域愛の醸成」「危機や変化に強くしなやかに対応する基礎づくり」という基本方針を示し、それぞれ実現に向けた方法を具体的に示している点も同戦略の特徴だ。例えば「滞在価値の最大化と魅力発信」は、(1)長崎ならではの体験価値の提供(2)市場動向などに対応したマーケティングの強化を目的とする。(1)は、長崎市の強みである二つの世界遺産(「明治日本の産業革命遺産」と「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」)や国指定史跡・出島といった歴史遺産、世界新三大夜景に認定されている夜景、異文化が融合した食などを生かした魅力ある観光コンテンツの提供を目指す。他方(2)は、訪問客の属性やニーズ、消費行動といった観光動向データの収集・分析・可視化、ターゲットに対応したプロモーションの展開、多言語対応や情報発信機能の拡充などを図る。同協会の田中雅資理事長(COO)は「地元事業者との共創を基軸として、地域の稼ぐ力を高めたい」と抱負を語る。
基礎自治体の枠を超え 連携して観光課題解決
単独の自治体では解決が難しい課題に複数の自治体が連携して取り組むことは、DMOの質を高める方法の一つだ。沖縄本島の北部12市町村では3月上旬、やんばる地域の観光事業による経済効果の最大化を目指して一般社団法人「沖縄やんばるDMO」が発足した。市町村のほか、観光協会や地元事業者、大学など多様な主体で構成され、今後さらにメンバーを増やしていく方針。運営財源には、会員の年会費を主な原資とする自主財源のほか、事務組合が受給する国の補助金を充てる。ちなみに、沖縄県内における複数の基礎自治体で構成する地域連携DMOとしては、石垣市と竹富町、与那国町で構成する一般社団法人「八重山ビジターズビューロー」に次いで2番目となる。
同組合によると、やんばる地域には年間450万人以上の観光客が訪れる。しかし、観光振興の恩恵に対する地域住民の実感が低い、市町村ごとに観光地としての認知度にばらつきが見られる、2次交通の不足や観光データの未整備など、広域での連携が不可欠な課題がある。同組合の担当者は「広域的な観点で観光課題の解決に取り組むことで地域外からの収益を地域内で循環させ、
地域住民と観光関連事業者の所得向上につなげる。これにより本島の南北格差だけでなく、やんばる地域内における東西格差の解消につなげたい」とDMO設立の狙いを説明する。
同DMOは、やんばる地域に観光客を誘客するためのマーケティング事業と持続的な観光地を形成するためのマネジメント事業を展開する。具体的に前者は、市場調査やマーケティングとブランディング、テーマごとの域内周遊商品の開発、観光ウェブサイトの構築や運営、広報ツールの作成、旅行会社やメディアへの働きかけを想定する。一方で後者は、2次交通の整備やインバウンドへの対応、住民の理解促進や生活環境の保全、地域観光人材の育成や確保、観光ルールやマナーの整備促進、観光危機管理体制の整備などに取り組むことにしている。
(竹井文夫)