【不動産リポート】福岡市で大型のホテル開発相次ぐ/年間当たり1万室の客室不足に加え「高収益性」決め手に

 福岡市内でホテル開発の勢いが止まらない。インバウンドやビジネスなどの宿泊需要は右肩上がりで伸長しており、年間で1万室の客室が不足しているといわれる。客室単価の上昇で収益性が見込めることから、県外資本も市内でのホテル開発に熱を上げており、既存のオフィスビルや商業施設が開発用地として次々に売買されている。

オフィスビルも商業施設も 次々にホテルへと建て替え

福岡市博多区にあった「博多センタービル」はホテルに建て替わる

 かつて西日本鉄道が本社ビルを建て替え中に入居していた「博多センタービル」。1975年に竣工した、福岡市博多区にあったこのオフィスビルは現在、仮囲いが設置され、中では解体作業が進む。竹中工務店系の資産管理会社が所有していた同ビルを取得したのは、関東私鉄の大手・東武鉄道(東京)だ。取得額は公表されていないが、約600平方メートルの跡地に今後、建設されるのはホテルだ。同社は関東を中心にホテル運営の実績が多数ある。同社広報部によると「詳細はまだ決まっていないが、国内はもとよりインバウンドのお客さまが満足してもらえるホテルを企画中」だという。
 その隣にあった遊戯施設「EVO2」はすでに解体され、更地となっているが、ここにもホテルが建つとされる。ユーコー(福岡県久留米市)が所有していた約1400平方メートルのこの土地は一度、あるデベロッパーの手に渡ったが、大阪市に本社を置く建設重機のリーシング会社・髙田クレーン興業が取得した。同社のグループ会社でホテル運営を事業とするウェリナホテルができるとみられる。
 同社はほかにも福岡市内の土地を取得しており、昨年6月、市中央区の渡辺通り沿いにあるレンタカー店や隣の駐車場を含む、約960平方メートルを購入。こちらは同社のホームページで公表されており、取得目的を「ホテル建設」と明記していることから、博多区より中央区の方が先に建物が完成するのではとみられているが、同社は本誌の取材に対して回答を拒んでいる。
 そのほか、福岡市地下鉄七隈線「櫛田神社駅」からほど近い場所にあった、旧ガソリンスタンドもホテルに建て替わる。こちらはすでに着工しており、ロイヤルホテル(大阪市)が運営する新ブランド「バウンシー・バイ・リーガ 福岡博多」として今夏に竣工、9月に開業する予定。地上11階建てで、全117室の宿泊特化型ホテルとなる。敷地面積は約720平方メートルで、丸紅系のユナイテッド・アーバン投資法人(東京)が長谷工コーポレーション(同)から23年に取得した。取得額は約23億円。
 JR博多駅東側で「都ホテル」の隣にあった、博多第一ホテル跡地の約860平方メートルもまた、新たにホテルが建てられる予定だ。個人所有の土地だったが、コスモス薬品(福岡市)オーナーの資産管理会社が昨年夏に取得した。同社には、大阪市でホテルやディスカウントドラッグコスモスなどが入る複合施設を開発した実績がある。ちなみにコスモス薬品もホテル事業に新規参入することが決まっており、宮崎市の市街地近くに第1号案件を計画している。
 家電量販店のベスト電器が入っていた「ベスト電器みすず庵共同ビル」は、大成建設が取得し、ここもホテルに建て替わるとみられている。韓国ロッテ系のホテルが関心を示しているようだ。JR九州(福岡市)は旧博多センタービルの北側にホテル用地を取得したほか、東急不動産(東京)、エー・ディー・ワークス(同)、えんホールディングス(福岡市)は博多駅前3丁目にそれぞれホテル用地を取得。明治通り沿いの博多座付近では、サムティ(大阪市)が福岡地所(福岡市)所有の建物を取得し、ホテルに建て替える。

オフィスビルよりホテル 採算性を比較すれば優位

福岡市博多区のガソリンスタンド跡は宿泊特化型ホテルに

 福岡市街地は現在、空前のホテル開発のラッシュに沸く。市の統計によると、市内の客室稼働率は2021年の33・7%を底に、23年は74・2%、24年は80・4%にまで上昇している。
 右肩上がりで上昇する宿泊需要に比例するかのように、1日当たりの客室販売額はブル(強気)相場が続く。ビジネスホテルの多くは繁忙期や閑散期に応じて客室単価を変動させるダイナミックプライシングを導入しているためだ。事業用不動産のサービス大手・ジョーンズ ラング ラサール(JLL)の山﨑健二福岡支社長は、24年の調査リポートで「グレードの高いビジネスホテルになると、宿泊料金をみてみると、平日のADR(客室平均単価)は2万円、週末には5万円以上になるケースもある」と指摘する。
 それでもインバウンドはもちろん、ビジネスによる宿泊需要の勢いは止まらない。市内では年間で1万室の客室が不足しているというのが実情だ。あるテレビ局の職員は「こちらの番組に出演してもらうため、東京のテレビタレントを前日入りで呼ぼうにもホテルの予約がなかなか取れない。ようやく空室を見つけても、面積の狭いビジネスホテルだったりする」と嘆く。そのほか、東京に本社を置く企業の九州支社長は「国内主要都市の宿泊料金は、軒並み高値圏が続いているため、研修などで東京から名古屋、大阪へ出張する場合は日帰りで済ますようにしている。しかし東京から距離のある福岡市となると別。宿が必要となるが、予約に苦労する」と話す。在京・在阪の各社が福岡市にホテル進出する狙いの一つにこうした事情がある。
 もう一つの理由は、開発コストに見合う採算性だ。JLLの山﨑支社長は「賃貸借契約で運営する場合、レンタブル比(賃料面積÷延べ床面積)と1坪(約3・3平方メートル)あたりの単価を計算してオフィスビルよりもホテルの方が賃料収入が高いとなれば当然、開発主体はホテルを選ぶ。福岡市は現在、ビジネスホテルの収益性が高い市況にある」と話す。オフィスビルよりもホテルの方が投資回収に効率的な高収益物件になる、というのが今の福岡市だ。それを物語る事例の一つが外資系の「ザ・リッツ・カールトン福岡」。23年の開業当初と比べてADRは5万円から10万円と倍増している。「その成功例を横目に、ほかの外資系ホテルも市への進出に関心を示しているはず。ホテルラッシュは当面、続くだろう」と山崎支社長は話す。
(河面直)