広域行政【関西広域連合設立15周年】
2025年11月20日
【(1)これまでの展開】12府県市の連携事業は複数の成果/「元気な日本は元気な関西から」掲げて地方創生を推進
国内における広域行政や権限移譲のモデルになることを目指して複数の事業を展開する関西広域連合(以下、広域連合)は、今年12月に設立15周年を迎える。府県域を越えた全国初の広域連合は、現在も国内唯一の取り組みだ。圏域人口約2200万人、地方自治法に基づく日本最大の地方公共団体は、これまで着実な成果を挙げている。
域内への来訪促す契機に 万博で「パビリオン」出展
関西広域連合が果たした役割で最もホットな話題は、4月13日から10月13日までの184日間、大阪市の夢洲(ゆめしま)で開催された「大阪・関西万博」に常設パビリオンを出展したことだろう。「関西パビリオンが関西各地への来訪を促すゲートウェイとなること」(広域連合本部事務局)を目的とし、入館者数は延べ148万人に達したという。万博開催に至るまでも広域連合という立場で誘致活動に参画したほか、広域連合長(三日月大造(たいぞう)滋賀県知事)は日本博覧会協会の副会長という立場から、経済界や大阪府、大阪市と共に大会の準備や運営にあたった。
他方、これまで広域連合は、分権型社会の実現に向けた取り組みを展開してきた。関西が首都機能のバックアップを担える圏域であることを示すことで、政府機関などの移転を推進し、国土の双眼構造の実現に取り組んできたのは、その一例だ。その狙いを広域連合企画課の担当者は「関西圏域における広域行政の成果を積み重ね、国の事務や権限の受け皿となる能力を示すことで、広域連合にふさわしい大くくりの国の事務や権限の移譲につなげるため」と説明する。
一連の取り組みは、23年12月に発表された第33次地方制度調査会の答申の中で後述のように評価されたほか、国との関係についても関西圏における新たな枠組みに関する記述が初めて盛り込まれた。さらに、昨年1月に能登半島地震が発生した際には、全国知事会などと連携してカウンターパート方式(被災した自治体に特定の応援する自治体を割り当て、さまざまな支援を行う方式)による支援を実施した。
ちなみに、同答申内では、広域連合に関して次のように述べられた。「関西広域連合のように都県を超えた圏域の水平的な調整を行う枠組み(中略)は、平時から設け、体制の構築とともに運用の実効性を確保しておくことが必要(中略)。関西広域連合は広域防災や広域観光等の連携施策を講じており、(中略)綿密な意思疎通に基づく取組が実を結んでいる。このような連携の取組をより深化させていくことが期待されるが、東京圏について考えられる枠組みと同様、新たに何らかの枠組みを設けることも考えられる」─。
こうした評価は「関西から新時代をつくる」を共通の志として、構成団体が連携して複数の事業に取り組んできた15年間の大きな成果だといえる。
三つの設立趣旨を掲げて 2府6県4政令市が連携
広域連合の設立は、関西経済連合会が03年に「地方分権を牽引(けんいん)していくための関西モデル」「広域連合関西州」を提唱したことが直接的なきっかけとなった。設立趣旨としては、(1)地方分権改革の突破口を開く(2)関西における広域行政の展開(3)国と地方の二重行政の解消─の三つが設定された。
(1)は、中央集権体制と東京一極集中から脱却し、地域の自己決定権や自己責任を貫ける分権型社会の実現を指す。広域の課題に地域が主体的に対応できる仕組みづくりを、関西が全国に先駆けて構築することを標ぼうした。また(2)は、関西全体の広域行政を担う責任主体づくりを指す。例えば、南海トラフ地震などの大規模災害の発生に備えた広域防災体制の整備、ドクターヘリによる広域的な救急医療体制の確保、将来的に関西の競争力を高めるための交通や物流基盤の一体的な運営管理などを想定していた。
さらに(3)が目指したのは、国の地方支分部局など出先機関の事務の受け皿づくりだった。設立以来、一貫して求めている国の出先機関の「丸ごと移管」は実現していないが、全国で唯一、国の一部機関の移転が実現している。18年4月、総務省統計局と独立行政法人「統計センター」の統計データ利活用センターが和歌山県に開設されたほか、20年7月には消費者庁の新未来創造戦略本部が徳島県に開設された。さらに23年3月、文化庁が京都で業務を開始している。
10年12月に2府5県(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、徳島県)でスタートした広域連合は、12年4月に大阪市と堺市、同年8月に京都市と神戸市、15年12月に奈良県が参加して現在の構成団体となった。なお、福井県と三重県は、密接な連携が必要な「連携団体」として参加している。
なお、広域連合は、地方自治法の規定に基づいて設立された特別地方公共団体であり、普通地方公共団体と同様に議会が置かれている。広域連合議会は、条例の制定や改廃、予算の議決などを行い、構成団体の議会から選ばれた40人の議員で構成される。議会活動をサポートする事務局もある。
広域連合は、関西全体における重要事項として七つの広域事務に取り組んでいる。(1)広域防災(2)広域観光・文化・スポーツ振興(3)広域産業振興(4)広域医療(5)広域環境保全(6)資格試験・免許等(7)広域職員研修─だ。各事務分野の担当委員は府県知事が務める。また、分野事務局が担当府県に設けられ、府県や市の職員が広域連合職員を兼務している。各首長が出席する広域連合委員会は、原則として毎月1回開催される。(6)の事務のほか、総務や企画、地方分権対策を所管する本部事務局は大阪市に置かれている。
さらに広域連合は、経済界とも連携を図りながら複数の事業が展開されてきた。例えば、22年11月に始動した「関西広域産業共創プラットフォーム事業」では、官民連携の推進体制による域内企業のニーズに応える一気通貫の支援体制の構築が図られている。また、昨年12月には、関西経済連合会と共同で「関西広域データ利活用 官民研究会」を発足させた。また、キッチンカーの運営許可基準など自治体ごとに異なる様式や基準の統一化が図られるなど、域内の生産性や効率性の向上を促す取り組みが実施されている。(以下、(2)に続く)
【(2)今後の展望】次代見据えて地方のカタチを模索/多様な観点から「東京一極集中」による課題解決を探る
関西広域連合(以下、広域連合)は、これまでの成果を踏まえて新たなフェーズに移行しようとしている。現在、策定中の「第6期広域計画」では、広域課題への対応のいっそうの深化を図り、政策の優先課題を自分たちで決定、実行できる「新次元の分権型社会」の実現を、これまで以上に積極的に目指す方針が示されている。
限られた行財政資源の 最大限の活用を目指す
広域連合が今年度から取り組むのが「広域連携による行財政改革の推進」だ。事業の目的は、構成する府県市の限られた行財政資源を最大限に活用して住民サービスの向上を図ることにある。「簡素で効率的な運営」を基本原則に設定し「広域での処理が効率的かつ効果的となる新たな事務の検討」と「既存の事務、事業の見直し」などを行っている。
広域での処理により効率的かつ効果的になる事務として、次の4項目に取り組む。(1)土木技術職員および建築技術職員に係る人材の確保(2)公設試験研究機関の連携(3)広域的な大学連携(4)法定研修の合同実施─だ。(1)は「各府県市で2040年問題が特に顕在化している分野への対応」(関西広域連合企画課)という狙いがある。(2)は、農林水産系や環境系、保健衛生系などを主な対象とする。(3)については、昨年度に実施した大学生などとの意見交換会で出された提案に基づく。単位互換制度の開講数の増加や大学図書の相互利用、インカレサークルの宣伝活動の活発化による他大学との交流促進などがある。
59ページで触れたように、広域連合は七つの広域事務に取り組むが、分権型社会の実現に関しては「政府機関などの域内への移転が一部で実現したものの、国の事務・権限の移譲で大きな成果は得られてない」(同課)。そこで、これまでの成果や課題を踏まえつつ、さらに、人口減少社会への対応や東京一極集中の是正、SDGSへの対応、脱炭素社会の実現、大規模災害への対応といったさまざまな課題解決を図る目的で「第6期広域計画」の策定が進んでいる。
来年度「第6期計画」が始動 「新次元の分権型社会」先導
来年度から30年度までの5年間を計画期間とする「第6期広域計画」は、10月下旬から1カ月間パブリックコメントを募り、来年2月に行われる連合議会の議決を経て策定される予定だ。
同計画の中間案では「我が国の『もう一つの極』として、新次元の分権型社会を先導する関西」「誰もが豊かさを実感できる、安全・安心で持続可能な関西」「個性や強み、歴史や文化を活(い)かして、新たな価値を創造・発信し、世界の中で輝く関西」が将来像に設定されている。その上で「広域課題への対応の更(さら)なる深化を図り、政策の優先課題を自ら決定、実行できる個性豊かで活力に満ちた自主・自立の関西を創(つく)り上げていく」ために五つの力の向上を図るとする。その五つとは「自治力」「防災力」「文化力」「環境力」「産業力」を指す。このうち「自治力」に関しては「新たな広域自治・行政のあり方研究会」が8月に設置された。広域連合長の懇話会という位置付けの同研究会は、広域連合長や副広域連合長、広域連合委員会の委員のほか、学識経験者などがアドバイザーとして参加。社会情勢の変化に応じた広域連合の役割などについても研究することにしている。
また、七つの広域事務に継続して取り組むほか、政策の企画調整に関する事務も関西の共通利益の実現という観点から、広域連合委員会での合意形成を図った上で積極的に実施する方針が示されている。例えば、27年5月14日から17日間開催される「ワールドマスターズゲームズ2027関西」は、スポーツツーリズムの推進や関西文化の世界に向けた発信などにより、関西地域の活性化や知名度向上を図ることができる大きな意義を有する大会と位置付け「レガシーの創出やスポーツの聖地化に向けた取り組みが関西各地で展開されるよう発信していく」とする。また、広域インフラのあり方に関しては、陸海空の玄関から3時間以内でアクセス可能な「関西3時間圏域」の実現や高規格道路などのミッシングリンクの早期解消に関西一丸となった取り組みを推進する方針が示されている。さらに、北陸新幹線やリニア中央新幹線は「国などに対して丁寧な説明を求めながら、一日も早い全線開業が実現するように働きかけていく」とする。
国の事務・権限の受け皿 地方分権改革を積極推進
また「第6期広域計画」の中間案では、分権型社会の実現に向けて積極的な姿勢を継続することが示されている。「東京一極集中は、地方における人口減少や活力低下を招く大きな要因となっている」として、関西圏域の地方創生を進めるほか、関西が首都機能のバックアップを担うにふさわしい圏域であることを示すことで政府機関などのさらなる移転を推進し、首都圏とは異なる「もう一つの極」としての関西の実現に取り組むとする。
さらに、国の事務や権限の移譲に関しても積極的に働きかける姿勢が示されている。具体的な事例として、関西圏域を対象とした国の計画策定事務など大くくりの権限移譲、実証実験的な事務や権限の移譲を行う地方分権特区制度の導入などを挙げる。例えば、「広域行政ブロック単位の広域連合」の役割の法制化や「権限移譲要請権」の抜本的拡充に向けて、包括的な地方分権提案を行う方針が示されている。また、広域連合として主体的に広域課題に取り組む中で課題解決に必要とされる事務や権限についても提案募集方式などを活用して移譲などを求めていくという。併せて、関西圏域における広域行政の成果を積み重ね、国の事務や権限の受け皿に値する能力を示すことの重要性についても触れられている。
関西の広域行政の責任主体として、地方自治法上、国の事務や権限の受け皿となり得る広域連合が存在する意義は大きい。この特徴を生かして広域連合は、地方分権改革のあり方や取り組みについて、社会・経済環境の変化を踏まえながら検討を進めていく。
(竹井文夫)