プロジェクト【社会インフラ整備】最新技術で下水道管の漏水を防止/「宇宙ビッグデータ」や「小型ドローン」で社会問題に対応
2025年07月20日
今年1月、埼玉県八潮市で発生した下水道管の破損が原因とみられる道路陥没事故は、下水道という生活インフラの維持・管理対策が大きな課題であることを改めて印象付けた。しかも、標準耐用年数を超える下水道管は今後、急激に増える。極めて難しい課題の解決に向けて、すでに動き出している自治体もある。
標準耐用年数50年超える 下水道管はこれから急増

国土交通省の資料「下水道の維持管理」によると、2023年3月末における全国の下水道管の総延長は約49万キロ。その約7%に当たる約3万キロが敷設から50年という標準耐用年数を経過している。さらに、10年後には約9万キロ(総延長の約19%)、20年後には約20万キロ(同約40%)と、標準耐用年数を超える下水道管は急増する。また、同省によれば、九州における腐食のリスクが高い下水道管の総延長は約385キロに上るという。
加えて、機械・電気設備の老朽化も深刻だ。全国に約2200カ所ある下水処理場のうち、22年3月末で標準耐用年数(15年)を経過した施設は約2000カ所を超えた。同省は「持続的な下水道機能確保のため、計画的な維持管理・改築事業の実施が必要」と警鐘を鳴らす。しかし、各自治体は、老朽化した施設の改善策をこれまでも講じているだけに解決はそう容易ではない。実際、日本下水道管路管理業協会の担当者は「点検や修繕、設備強化など自治体による対策は一定の成果を上げているが、人手不足や財政難から老朽化に見合う対策が十分ではない自治体も多い」と指摘する。ちなみに下水道管の更新費用は、1キロあたり約2億円といわれる。
同省によると、22年度に全国で発生した道路陥没は計1万548件で、うち13%は下水道設備が原因だった。なかでも、上下水道管の老朽化による土砂流出が原因で発生したケースが多い。
最新技術用いて課題克服に 挑戦する都城市と北九州市

九州にも最新技術を取り入れた方法を活用して、敷設から一定期間が経過した下水道管などの点検や維持、修繕に取り組んでいる自治体がある。例えば、宮崎県都城市は昨年8月から、衛星データを用いた土地評価コンサルティングを主な業務とする天地人(東京)が提供するシステムを活用して漏水リスクに対応している。
同市によれば、市内に敷設されている導水管や送水管、排水管の総延長は約1900キロ。特に重要な配管である基幹管路の延長は約280キロに上る。その中には敷設から40年を超え、漏水事故が想定される配管もある。市は、配水池や基幹管路などに設置した流量計の確認や、流量が増加した地域を対象にした漏水調査などにより、漏水による事故の未然防止に努めている。さらに、敷設年度や漏水履歴などに基づいた調査も計画的に実施しているが、調査地域の絞り込みや実際の調査に時間がかかることなどが課題となっていた。市が、そうした課題解決のサポートを依頼したのが天地人だった。
同社が提供するのは、JAXAが提供する宇宙ビッグデータを活用して水道管の漏水リスク管理業務を行うシステム「天地人コンパス 宇宙水道局」。複数の人工衛星からオープンデータなどを取得して、劣化や腐食要因、漏水発生といった情報などを踏まえてAI(人工知能)を用いて統計学的に解析し、100メートル四方の範囲で漏水リスクを5段階で評価するという。同社担当者は「リアルタイムでデータを確認できるため、より効率的な漏水調査の実施が可能。また、複数のデータを複合的に組み合わせることで、優先度や重要度を踏まえた更新シナリオを作成できる」と説明する。同システムを導入している自治体は、全国で30を超えるという。ちなみに同社は、19年に設立されたJAXAベンチャー認定企業で、JAXA初の出資企業でもある。
他方、北九州市は5月末、発電用高温高圧バルブの製造・販売を手掛ける岡野バルブ製造と総合建設業のMAX工業(いずれも北九州市)、ドローンを用いた調査・点検・測量サービスを主な事業とするLIBERAWARE(リベラウェア、千葉市)と共同で国交省の全国特別重点調査を実施した。対象としたのは、直径2メートル以上で設置から30年以上が経過した下水道管(延長54キロ)。市下水道保全課の担当者によれば「水量の多い場所や硫化水素といった有毒ガスが生じる場所など人の立ち入りが困難な場所での課題解決につながる点検方法を用いた」と説明する。
同調査で使われたのは「IBIS2(アイビスツー)」と呼ばれる、リベラウェア製の手のひらサイズのドローン。北九州市が下水道管点検における課題などを提示し、岡野バルブ製造は点検プロセスの構築や現場対応にあたった。また、リベラウェアは調査を現場で支援し、MAX工業はドローンオペレーター援助や現場支援を実施した。調査では、管内水位が1メートル程度で、人が進入できない流域の管内上部の腐食状況やひび割れの有無を中心に、ドローンに搭載された小型カメラに映し出された動画を基に下水道管の健全度を確認した。同課の担当者によると「従来の調査では、直径が大きい下水道管の目視による確認の際、足場の設置などが必要で時間と費用を要していた。超小型ドローンの活用で、狭小な場所でも安全かつ効率的な調査が可能になった」とメリットを説明する。
他方、リベラウェアの担当者は「老朽化した下水道管を維持管理する重要性が高まるなか、IBISの活用によって安全性や効率性、コスト削減を同時に実現できる」と説明。その上で「重点調査における活用事例が蓄積されることでIBISが国土強靭(きょうじん)化に資する新技術として認知され、今後、幅広く活用されるよう事業モデルを構築したい」と次の展開を見据えている。
(竹井 文夫)