太陽光発電に
水素エネルギー…
台湾の国家戦略に
世界基準目指す台湾のエコ企業
福岡から台湾まで空路でわずか2時間半。パソコンやIC産業が発達した彼の地では今、新たな戦略分野としてクリーンエネルギー関連産業が勃興している。ここ数年、官民上げて産業育成に力を入れてきた結果、さまざまな企業が生まれ、育ち、先端技術で世界のトップレベルに達した企業もある。環境に対する負荷の少ないエネルギーへの注目が集まる中、台湾企業への関心は高まっている。台湾のクリーンエネルギー最先端企業を取材した。
水を水素と酸素に分解
溶接機や自動車に応用
台湾南部・高雄縣にあるエポック社(林文章董事長=会長)は、蒸留水を分解して得られるエネルギーを様々な分野に応用している会社だ。林董事長は「当初はどこも見向きもしてくれなかったが、今ではアメリカエネルギー庁を始め、EUなど各国が注目している」と胸を張る。
蒸留水を水素と酸素に電気分解し、それらを溶接機械やボイラー、焼却炉、業務用のコンロの燃料に使っている。設立から7年、今では台湾国内で100人、中国本土の工場で30人の社員を抱えるまでに成長した。昨年の売り上げは3億台湾ドル(1台湾ドル約3.3円換算で約10億円)、今年は倍以上の売り上げを見込んでいる。日本はアスベストの焼却用に、同社の焼却炉を輸入している。1500度以上の高温でしか燃えないアスベストは、日本の一般焼却炉では処理できない。しかし、同社の焼却炉の最高温度は3000度にも達するため、日本政府も焼却能力の認証を与えているという。また、トレーラーを改造した疫病対策用防疫車も開発、新型肺炎・SARSや鳥インフルエンザの汚染物質も現地に出向いて処理することが可能だ。
水素と酸素を利用し燃費は格段にアップした
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蒸留水の電気分解にかかる分も含めて、コンロの燃料費用は一般のガスより約20%割安だ。コンロの燃料である水素は瞬時に空気に溶け込むため、立ち消えしても爆発の心配はないという。また、溶接に関しては、一般的なアセチレンと比べて50%から60%もコストを下げることができるという。
加えて、同社はガソリンの中に水素と酸素を混ぜて燃焼効率を上げるシステムも開発。約50%燃料コストで走行可能とあって、高雄市も市営バスに導入を決定、10月から市内で営業走行している。同社の技術については、水素エネルギー化学が専門の元鹿児島大学工学部教授の大角泰章氏が「エネルギー効率も高く、次世代エネルギーとして大きな期待ができる」と高い評価をしている。
課題は新しいエネルギーソースとして定着させることができるかどうか。「LNG(液化天然ガス)などに、どう取って代わるかが今後の重要な問題だ」と林董事長は話している。
太陽電池で業界をリード
設備投資で生産能力増強
デルタ社(台北市、鄭崇華董事長)は1971年創立。テレビ用のコイルを作る小さな会社から、世界最大のスイッチング電源メーカーに成長を遂げた。
九州ではキャノン大分(大分市)にもインクジェットプリンター用の電源を納入している。設立当時の台湾は、経済発展の真っ最中で、電力不足の状態が続いていた。鄭董事長は「発電所の新規建設より効率化が重要になってくると感じ、電源事業に乗り出した」と話す。同社は機械から熱を取り除くファン事業の大手でもあり、台湾で環境保護や省エネに対してのリーディングカンパニーの役割を果たしている。
同社が現在、力を入れているのは太陽光発電事業。08年には設備投資費として70億台湾ドル(約231億円)を投下、来年も同規模の投資を行う予定だ。今年は1億米ドルをかけて南部に新工場を設立、生産能力を現行の12万キロワットから、09年末には60万キロワットに大幅アップさせる予定という。ソーラー関連事業が全売上に占める割合は、現在5%程度にとどまっているものの、将来性に飛躍する可能性を秘めており、大きな期待を寄せている。同事業は子会社のデルソーラが担当、欧州などの太陽光発電企業に太陽パネルを供給している。
太陽電池にはシリコンを使うシリコン系と金属化合物を使う非シリコン系がある。シリコン系には、現在主流の結晶シリコン太陽電池のほかに、シリコンの使用量が100分の1程度の薄膜シリコン太陽電池がある。同社の主力は結晶シリコン太陽電池。量産ができるのが利点だが、シリコンの高騰で原料調達コストがかかるが難点だ。対する薄膜シリコンは、太陽光のエネルギー変換効率が結晶シリコンより若干劣るものの、シリコン使用量が少なくコスト面で優位。壁面などに直接張付けることも可能で用途は広い。発展の余地が大きいと判断した同社では、結晶シリコンに替わる太陽電池として研究を進めている。
非シリコン系で注目
最先端技術に期待大
ナノウィンの太陽光を使ったエネルギー館
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非シリコン系の太陽電池で、一歩先を進むのが03年に設立されたナノウィン(高雄縣、黄文啓総経理=社長)だ。同社は銅、インジウム、ガリウム、セレンを化学反応させ、パウダー状にして加工、太陽光パネル(SIGS=シグス)を作り上げた。パウダーを使ったパネルの製造方法では、世界10カ国で特許を取得しているという。メリットは国際的に需要がひっ迫しているシリコンを使用しない点。太陽光のエネルギー変換効率も10%と、シリコンを使った薄膜太陽電池に遜色ない程度にまで上げることができた。来年には同等の12%に引き上げることを目標にしている。同社のビジネスモデルは、合わせて約6000万米ドルになるプラントと技術の販売。来年春ごろまでにシンガポールと台湾の太陽電池メーカーに納入する予定で、来年度は4つのプラントの輸出を計画している。
黄総経理は「材料のパウダー作りは簡単。日本や欧州企業が作る同タイプの太陽電池は複雑なので、競争に優位性がある」と話している。ただ、太陽光発電を研究している日本の大学では、青色発光ダイオードなどを使って変換効率を2030年に50%まで引き揚げることが可能という見方をしているところもあり、同社も継続的な研究・改良は欠かせない。
「太陽光で100万kw創出」
●経済部能源局 陳玲慧組長
今年3月に民進党から国民党へ政権が交代した台湾では、新政府のエネルギー戦略が6月に明らかにされた。それは永続的エネルギーの工業化である。2010年に2500万トンのCO2削減、25年にはCO2を2000年のレベルに下げることが目標とされている。
現在は石炭による火力発電の割合が高い台湾だが、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマス、原子力などを合わせた電力供給の割合を25年に55%にすることを目標にしている。難しい数字だが積極的に挑戦して成し遂げたい。その中でも太陽光発電は国の重点産業に挙げられている。
太陽光発電の発電量は03年現在、3400万キロワットと少ないが、政府が補助を進めることで、25年には一般家庭の10 万から15万世帯に太陽光発電の装置を設置、100万キロワットの発電量創出を目指す。人の出入りの多い建物については設置を義務付けることにしている。国際競争に勝ち残るためのポイントとなる人材育成については、大学のカリキュラムにエネルギー開発を取り入れたり、経済部能源局が育成計画を立てたりして需要に応えられるように対応していく。
現在の主流は結晶シリコン太陽電池だがシリコン不足、価格の高騰、工場用水や用地など、物理的な面で懸念材料がある。最近生産の始まった薄膜シリコン太陽電池は、壁面や屋根そのものとして使うことができるなど用途が広いが、発展の速度はやや遅い。各メーカーは薄膜シリコン太陽電池の研究開発に力を注いでいる最中だ。政府としても今後、国際的太陽電池メーカー(外資)の技術導入推進と工場の現地化を進めていき、より高度な技術を持ったメーカーを育成していく(談)。
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今回の取材をコーディネートしてくれたのは中華民国対外貿易発展協会。目的は液晶モニターやノート型パソコン、半導体実装などで世界シェア1位を占める台湾の、最新の企業動向を日本に発信することだ。
同協会では「世界的な技術を持っていても、日本になじみの薄い企業が台湾にはたくさんある。労働力の質も優れており、ビジネスの際は台湾のことを頭の片隅に置いてほしい」と話している。
06年度の外資系企業の投資額は過去最高の139億6000万米ドルに達しており、海外から台湾に向けられる視線は熱い。現在も日本と台湾の間では活発な貿易活動が続けられているが、今後もさまざまな分野でさらに相互交流が深まっていきそうだ。
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