2008年11月号120ページに掲載

「マリンハイドロテック」
MARINE HYDROTEC


漁船の油圧システムでトップシェア
海外展開を拡充し、新規事業創出へ

井手敏文社長
福岡市中央区港3-50-1
Tel.092-711-1110
http://www.mhtc.co.jp/
 漁業や海上輸送、海洋土木作業を担うあらゆる船舶にとって、その作業効率を高める油圧システムは欠かせない設備だ。この分野で全国屈指のマリンハイドロテックは今、漁船の新造需要が旺盛な海外でも好業績を上げている。今後は海外の未開拓地域への進出、また従来の枠にとらわれない新規事業の創出も視野に入れている。

販売会社からメーカーへ
ニーズに応えて新市場開拓

マリンハイドロテックの油圧システムを搭載した海外巻網船。メインマストから上空へ伸びるメインブームに装備された独自の揚網装置などにより、省力・迅速な揚網作業が可能となっている
 マリンハイドロテックは1971年、油圧機械メーカー・内田油圧機器工業グループの出資を受け、グループの販売会社・内田油圧舶用機械として産声を上げた。社長には、広瀬正寿氏が就任しての船出だった。
 当初は国内の漁業が隆盛に向かう中、漁船の新造とこれに伴う機械化の需要が高まり、底曳船や旋網漁船向けのウインチ(巻揚機・漁労機械)を中心に営業を展開、内田油圧グループ船舶部門の総発売元を目指した。拠点展開にも乗り出し、74年に長崎地区のアフターサービス拠点として長崎工場を建設。以後、同社の強みとなる、全国をカバーするアフターサービス網の基礎が築かれた。また同年に宮城に石巻営業所、76年には千葉に銚子営業所を開設して全国へ販売網を広げた。
 こうした中、77年以降からは新造船の需要が最盛期を迎える。同社もこれに合わせて販社の枠を超えた油圧システム開発に着手。 78年には、システムの回路を従来の直列回路から並列回路に変更することで油圧パイプの本数減とサイズ縮小を実現、これにより油圧配管の軽量化と伝達効率向上を可能にするリングメインシステムを開発。これが当たり、「この時期は新造船と修理を合わせて、全国の漁船の7、8割の販売シェアがあった」(井手敏文社長)ほどの高業績を維持、市場の声を受けた油圧システム開発の担い手としての地位を確立した。年には、山口県下関市の漁労ウインチメーカー・日本工作所を傘下に収め、グループに本格的な製造部門を持つ油圧漁労機械・油圧システムメーカーとして歩み始める。
フェリーボート向けのインバーター制御電動ウインチシステム

 2代目社長に松長修氏が就任する88年頃になると、漁船の新造需要が下火になる。この逆境に対して、今度は港湾整備などに使う海洋土木浚渫船に着目。そこで求められる大型のウインチ開発に取り組み、新たな市場を開拓した。これに関連して、タグボートやフェリーなどと、港湾の可動橋、海上自衛隊の艦船など新たな油圧システム市場も拓いて行った。
 その後、年に内田油圧機器工業との資本関係を解消して、翌年には現社名に社名変更。年には100%子会社としていた日本工作所を吸収合併した。これらは大きなターニングポイントとなり、独立独歩の総合舶用油圧システムサプライヤーとして、名実共に認知を得ることとなった。

中・韓・台に販売拠点
中国などの魚介類消費が追い風

 こうして、07年には取締役営業本部長だった井手敏文氏が社長に就任。その指揮下で同社は今、グローバル化という新たな像を結んでいる。
 今も大中型漁船の油圧漁労装置とシステムで建造隻数の70%を握るなど、これまで切り開いてきた国内市場で高いシェアを持つが、燃油高騰などの影響もあり、「最盛期、漁船は6年や8年で減価償却されていたが、今は修理しながら 20年以上乗るのも珍しくない」(井手社長、以下同)状況で、市場そのものが淘汰され縮小した。
 そのため、国内に加えて手がけていた海外へのシフトを強化。今では韓国と台湾、そして中国・大連に販売代理店を置いて売り出した海外巻網漁船向け油圧漁労システムが、売上高の半分以上を占めるほどの成長を遂げた。パプアニューギニア海域で操業する外国の漁船は少なからず同社の油圧システムを搭載している。そこへ追い風も吹く。「21年前に納入した漁船がスクラップ・アンド・ビルドの時期にきている。また自前で缶詰工場を買収したり、加工製造するような力のある船主は安定して利益が出せているので、新船での費用対効果が如実に具現化されている。つまり、中国などで魚介類の消費が拡大して、国内及び台湾、韓国の海外巻網漁船は右肩上がりの成長を遂げており、当面は安定した売り上げが見込めそうだ」という。

人材の獲得・育成がカギ
失敗恐れず新たなヒット商品を

 ただし、海外市場の好調が未来永劫続くとは限らない。「5年、10年先は楽観できない」ことから、新たなヒット商品を生むための新市場開拓にも余念がない。
 社内では、若手社員を諸外国への海外研修へ派遣する意向を伝え、新市場創出と新製品開発の期待を込め、漁業動向などの目的意識を持った中・長期展望と次世代へのシフトも考慮している。「自分たちの未来のため、船や海、油圧システムという既存事業の枠にとらわれずトライして欲しい。失敗を恐れず、提案型の社員になって、突破口を切り開いてもらいたい」との思いだ。
 同社は社員持ち株会を筆頭株主とする企業であり、井手社長自身、一職工から上り詰めた生え抜きトップ。「会社の未来は人財の獲得・育成にかかっている」ことから、リクナビを使うなどして新卒採用、ワールドワイドでの展開上、特に語学に優れた人材の獲得に力を入れている。
 現在、同社の年商は30億円。米国の格付け会社・スタンダード&プアーズからは今年、aaの高評価を受けた。その事業領域をどう拡充していくか。羅針盤はすでに新たな航路を示している。

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