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◆市長インタビュー
自動車、環境を
キーワードに
頭脳拠点を作り上げる
モノづくりの高度化と情報サービス産業の誘致強化
北九州市長 北橋 健治氏
−市長就任から1年が経過した。北九州市への自動車関連産業を中心にした企業進出は変わらぬ好調さを維持しており、大手製造業がけん引する地域経済活況の原動力になっている。
北橋 企業誘致については5年ほど前から明らかに追い風傾向にあり、国内景気のゆるやかな拡大とともに今後も持続していくものと期待している。まさに先人のまかれた種がようやく実を結び春の訪れを迎えているようだ。
この好調さの要因は、モノづくり産業を中心にした中堅・大企業の存在に加え、道路・港湾・空港など充実した物流機能に支えられた産業基盤、地震など自然災害の少なさやアジアマーケットへのアクセスのしやすさなどが評価された結果だろう。なかでも自動車・半導体関連産業の集積が進んでおり、雇用や成長性の高い産業構造への転換が進んでいる。また、環境について本市には長年にわたり蓄積された環境技術のノウハウがあり、中国・青島市のエコタウンへの協力など、国際的な環境保全ネットワークの中で評価を高めている。地球環境問題の解決を新たなビジネスチャンスとして取り組んでいきたい。
−一方で、商業や建設業、中でも事業体力の弱い中小零細企業の底上げに課題がある。自動車関連産業のさらなる発展と新たな産業振興策が求められている。
北橋 09年には北部九州での自動車生産能力が150万台を超えることが確実視されており、国内第3の生産拠点へと変ぼうする。これまで産業都市として培ってきたモノづくりを基盤に企業誘致を進めながら、新たにカーエレクトロニクスの頭脳部門の集積を図ることで、 自動車産業の拠点形成による地域産業全体の底上げに努める。
そのためには大学との産学官連携が不可欠であり、若松区ひびきのにある北九州学術研究都市を中心にした研究基盤を強化することで、その成果が地場の中小零細企業にも行き渡るような仕組みづくりが必要だ。
昨年、学研都市内に設置したカー・エレクトロニクスセンターは次世代の研究開発と専門人材育成の両面による「モノづくりの高度化」を図るためのシンボル的な存在だ。産学官連携による頭脳拠点化を促進することは強じんな経済力を作ることにもつながるため、石にかじりついてでも、北九州市における自動車関連の技術研究開発拠点を作り上げたい。これは、先ごろ発足した「北九州市産業雇用戦略会議」(座長・矢田俊文北九州市立大学学長)でも重要な柱として位置付けられているところだ。
一方で、従来のモノづくりによる産業集積を生かしながら、より成長性の高い産業へ重点を置くべきとの提言も受けており、付加価値の高い製品・サービスの創出を官民一体になって模索している。その有力な1つがIT分野であろう。
昨年、ソフトバンクIDC(東京都)が約70億円を投資して新日鐵工場跡地に大規模なデータセンターを建設すると発表した。自然災害の発生が極めて少なく、人材が豊富である地域性は、情報ソフト産業にとっては極めて重要で、今後もその有利性を最大限にアピールして、情報産業の誘致に注力していく。
また、新しい試みの第1弾として今年2月に福岡銀行と 産業振興分野の連携協定を結んだ。これは将来性のある地場企業を後押しするもので、銀行の持つ情報ネットワークと行政側の情報を活用した企業振興のための共同支援事業になる。
こうした試みを実施することで、今後5年間で新たな雇用1万人を創出するとともに、5%程度市民所得を向上させ、10年後には市内総生産額を過去最高水準となる兆円に増加させることを具体的な目標として掲げた。2020年に向けて 、新たな技術と豊かな生活をつくり出す「アジアの先端産業都市」を実現していく。
既存商店街の活性化を軸に中心市街地全体を盛り上げ
−北九州市では中心市街地のにぎわい創出がモノづくり産業の活性化と密接にリンクしている。その意味で小倉と黒崎で2カ所同時申請する中心市街地活性化基本計画への期待感が高まる。
北橋 中心市街地の地価動向をみると、他の大都市と同様に下落傾向にあるが、2年ほど前から下落幅が小さくなっており、歯止めが掛かっている。市全体あるいは都市圏の活性化が最終的な目標だが、まずは、広域から集客できる魅力ある拠点づくりが急務である。
そこで現在、中心市街地活性化の基本計画を策定し、国の認定を受けるべく大詰めの作業に入っている。小倉と黒崎をそれぞれ都心と副都心に位置付け、東西の2大中心核による都市形成を目指して2カ所を同時申請する。もし認められれば日本で初めてのケースになる。
今年1月には、小倉・黒崎の両地区で、北九州商工会議所と北九州まちづくり応援団株式会社が中心となり、「中心市街地活性化協議会」が設立された。基本計画認定後は、いよいよこの協議会を中心とした活性化の取り組みが本格的にスタートする。関係者は意気軒高でまちづくりについての活発な議論が交わされていることから、必ず展望は開けるものと思っている。
−当初、黒崎地区の計画案は新設される商業エリアを含んだプランになっていたが、最終的には既存商店街を軸にしたエリアに変更された。
北橋 黒崎地区の計画では、行政、商業者、住民などそれぞれの思いがあり、エリアについての議論が白熱した。100人が集まって100人全員のコンセンサスを得るのは難しいものだが、関係者が議論を尽くし、煮詰めてきた結果、まずは、既存市街地の活性化を優先しようとの方向性が得られたので、このエリアで申請することとなった。
黒崎はJR、筑豊電鉄、バスなど公共交通機関の結節機能が充実しているなど、非常にポテンシャルの高いところだ。今回の試みは、既存商店街のみならず、まち全体をインパクトのあるものに再生していくことを狙いとしており、黒崎全体としてウインウインの関係を作り上げていきたい。
−魅力あるまちづくりは人材育成とも大きくかかわっており、地元で育成した理工系学生の県外流出が深刻な問題になっている。地元就職率は大卒で2割、高卒で6割にとどまっている。
北橋 北九州市は工業高校や高専などが多く理工系の学生が豊富なまちである。小倉工業高校では、トヨタ、日産に進んだ卒業生が技能オリンピックでそれぞれ金メダルを取るなど良い人材が巣立ってきており、人材集積の新たな芽吹きを感じさせる。一方で、少子化の影響は深刻で、10年前の「成人祭」に案内した人は1万5000人だったが、今年案内した人は1万500人にとどまった。これほど短期間で3分の1も青年が減少しており、高卒・大卒のための魅力ある雇用の場をつくることが急務だ。
市民生活の実利を重視した広域連携を積極的に展開
−人にやさしく元気なまちの実現には福北、関門連携のみならず、全九州内、中国地方を含めての広域連携が不可欠だ。
北橋 経済のグローバル化や巨大化するアジア市場の中で国内外の都市間競争を勝ち抜くためには、福岡市とスクラムを組んだ連携が とても重要であると考えている。今、新しい「福北連携の理念」を検討している最中だ。また、道州制をにらんだ勉強会を共同で実施している。お互いに、時には切磋琢磨しながら、ウインウインとなる連携を進めていきたい。
関門連携については、行政のみならず、市民レベルでも様々な連携が行われており、ハード事業からソフト事業まで連携の幅は広い。
例えばハード事業では馬島への給水事業があるが、北九州側から水道を引くと莫大な費用が掛かるところ、下関側からは5分1の予算で実現した。また、ソフト面では関門景観条例や海峡花火大会などがあり、いま計画しているのは「(仮称)カニ・カキロード」。北九州市の特産品である「豊前海一粒かき」「豊前本ガニ」を関門のタコやイカと合わせて1つのブランドとして売り出そうという構想だ。こういった都市連携は、お互いに実利がある。市民にとってプラス効果が生まれる取り組みを一つ一つ着実に推進していく。
そのうちに道州制がスタートし、県が州に変わるとき、それぞれの自治体は選択を迫られることになる。北九州市にとっても、広域連携について判断する局面がくるだろう。そのタイミングが来るまでそう遠くない時期であろうし、それまでは広域連携に積極的に踏み込んでいく。北九州市民にとっていろんなチャンスが広がることにつながるからだ。
昨年末、関門海峡を共有財産として両市の未来を俯瞰する目的で「関門地域の未来を考える研究会」を設置した。将来の道州制を視野に入れた関門地域のあり方を研究しているが、ここでもまずは関門連携を深めていくことが先決だろう。将来、ある時点において特別自治区とするのか生活圏レベルの交流基盤にとどめるのか本格的な議論が盛り上がってくることになるだろう。
−九州新幹線の全線開業を見据えて、熊本市などが積極的に福岡市と鹿児島市のいわゆる「九州背骨軸」との都市間連携を強めている。
北橋 北九州市としては、対アジア戦略・対首都圏戦略などを考えた時に、福岡連携と同様に熊本市・鹿児島市など南九州地域との連携を強く進めていくつもりだ。もともと、北九州市には地域ホスピタリティの土壌がある。
単身赴任の方や学生の間では、他の都市と比べて地元出身者以外でもすぐに受け入れてくれる懐の深さと人情味があると聞く。北九州地域には、門司港や八幡製鐵所などに域外から出稼ぎにきた勤勉な労働者たちによってまちが形成されたという歴史的なルーツがある。そのため熊本県や鹿児島県出身の人たちがたくさん住んでおり、その点非常に開放的な土地柄である。
今後も「人にやさしく元気なまち」の実現に向け、産学官、市民間、都市間連携を推進していく。
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