その規則とマナー
世界のゴルフ規則は、英国のR&Aと米国のUSGAというふたつの組織が中心になって、ほぼ全ての内容を決定しています。私たち日本のゴルファーも、ここで決定された規則に従わなければならないのは言うまでもありません。尚、R&AとUSGAの詳しい説明は省略いたしますが、とりあえず、前者はゴルフ発祥の地を、後者は世界最大のゴルフ市場を代表した組織だと考えておいてください。 さて、ゴルフ規則は、洋の東西を問わず「法律は悪人が存在するものとして作られているが、ゴルフ規則は故意に不正を犯す者はいないという前提で作られている」の言葉のとおり、人間の善意を100%信用して作られています。規則の中にうたわれている罰則は 全て善意の過失によって規程の処置を誤ったものに対してプレーの公平を期するのが目的であって、もしも規則の明示されていない不測の事態が起こったときには、公正の理念に照らして解決せよ、というのが基本精神なのです。ゴルファーは、このようにおおらかなゴルフ規則を裏切ってはならないし、それどころか誇りとしなければならない、といわれる理由がここに存在するのです。 この年、ニューズ・オブ・ザ・ワールド社主ロード・リデルは、自分の新聞でもゴルフを大きなテーマとして取扱うつもりでした。ところが、一般大衆は気性が荒いうえ、マナーに欠ける言動が目立ちました。これに心を痛めたリデルは、一刻も早くマナー教育の必要があると考えました。大衆ゴルファーを集めた会議の冒頭で 彼はゴルフ史に残る名言を吐いたのでした。 「諸君、人間は礼儀正しく挨拶するからイヌではなくて人間なのだ」そしてマナーの修得がショットやスコアよりも優先されなければならない、と熱っぽく語ったのでした。さらに続けて「ゴルフの誇るべき特質とは何か? ゴルフの真髄、エスプリ、心とは何か? 誰か明快に答えてみなさい!」と畳み掛けました。返事が無いと知ったリデルは、暫く呼吸を整えてから諭すように語り始めました。 彼は過去にスコットランドで発生した幾つかの不正事件について語り始めました。スコア欺瞞が原因で町長の椅子から追われた男。人々から見放された商店主。職場にいられなくなった重役。中には名の知れた政治家もいたが、わずか1打を誤魔化したため次の選挙で落選した例も披露されました…。 この話は、今から約80年前の話ですが、現代の我が国が直面している状況と驚くほどよく似ていますね。但し、ひとつだけ違う点があります。リデルが、一般大衆に対して「灰色的行為の全ては有罪である」と諭したのに対し、我が国では、国や企業の指導的立場にある人物が「灰色的行為の全ては無罪である」と考えている点です。確かに文明は進化しましたが、倫理観は後退してしまいました。古人が身につけていた矜持を取り戻したいものです。 | ||||
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