2008年2月号118ページに掲載

「病理診断」


 病理学とは種々の病的状態の解明に取り組む基礎医学です。歴史的に古くから医学・医療の根幹を担ってきていますが、一般の人々には「病理診断」を通じて身近に接しています。しかし、病理医は患者さんに直接接することはないので、その実態についてはよく知られていないようです。
 医療のなかで重要な位置を占める「病理診断」について概略を述べます。

医療に重要な診断業務

 病理診断は、患者さんから採取された病変の一部、あるいは全部を肉眼的、顕微鏡的に観察して、その病変が何であるかを診断する医療行為です。最終診断となるばかりでなく、治療方針の決定、治療効果や予後の判定など、医療に不可欠な情報を提供する重要な診断業務と言えます。その業務の身近な例として、読者の多くの方はこれまでに胃、あるいは大腸の内視鏡検査を受けられた経験があると思います。その時に何らかの異常が見つかると、その部の組織を生検し病理医に送って良性か悪性疾患であるかの病理診断により、その後の治療方針が決定されています。
 また、最近では乳がんの乳房温存手術に代表されるように、外科切除では縮小手術が増加していますが、その際、手術中に凍結迅速標本を作製し、病理診断を15分前後で行い、切除断端のがん細胞の残存、あるいはリンパ節転移の有無を診断し手術範囲を決定する重要な役割もあります。
 このように病理診断は最終診断として重要な位置を占め、高い診断精度が求められるため、米国では、臨床医と同じく病理医にも3−4年間のレジデント(研修医)制があります。研修修了後に専門医試験に合格して初めて病理診断医として認められるシステムが古くから確立されています。

望まれる病理医の増員

 日本でも1978年に病理専門医制度が設けられました。専門医受験条件として厳格な5年の研修期間が義務づけられ、研修修了後に専門医試験を受験することができます。しかし、診断業務である限り誤診の問題は必ず存在します。
 30年前に米国東部の総合病院の病理部門に留学した折、医療過誤保険に加入させられたことに大変驚きましたが、最近では日本でも臨床医と同じく病理診断医も医療過誤保険に加入するようになりました。実際、病理診断の誤診により、病理医が訴えられ賠償責任を負わされる事例も出てきています。
 以上、病理診断の概要について述べましたが、問題の一つとして病理医の不足が挙げられます。大都市の主要な総合病院の大部分には常勤の病理医がいますが、地方ではまれです。我が国の医療充実のために、病理医を志す人材の増加が望まれます。
医療・介護・教育研究財団 柳川病院特別顧問
 神代 正道
 1972年久留米大学医学部卒。77年マサチュセッツ総合病院病理留学。86年久留米大学医学部病理学教授、07年久留米大学名誉教授。1941年生まれ、福岡県出身。

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