2007年5月号88ページに掲載
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座談会


産学官の知恵を結集し、いかに
「熊本らしい」まちづくりを進めていくか。





亀井 創太郎 氏
KAMEI SOUTARO
亀井通産社長
一橋大商学部卒。旧日本興業銀行を経て亀井通産に入社し、87年から社長。熊本経済同友会や熊本商工会議所活動などを通して、今や熊本観光推進のリーダー役として活躍。商工会議所が実施しているご当地検定の公式テキストづくりにも参画した。





丸本 文紀 氏
MARUMOTO FUMINORI
県民百貨店「くまもと阪神」社長
中央大商学部卒。地場スーパー勤務を経て、戸建て住宅のシアーズ・ホームを創業。さらに02年に地元24社・組合の出資を得て、県民百貨店を設立。昨年12月設立された「まちづくり熊本」社長に就任している。今や熊本市の中心市街地活性化の中心的な存在。



両角 光男 氏
MOROZUMI MITSUO
熊本大学大学院自然科学研究科教授
プリンストン大建築都市計画大学院修了。専門は建築計画・都市計画学。熊本県都市計画審議会会長、熊本駅周辺都市空間デザイン専門家会議委員、熊本大学工学部「まちなか工房」の代表を務めるなど、熊本のまちづくりに深く関わっている。熊本在住はすでに30余年になる。

 都市圏人口100万人を抱える熊本は今、2011年春の九州新幹線鹿児島ルートの全線開通を控え、熊本の個性を最大限に生かした「熊本らしい」まちづくりへの機運が高まっている。それはまた、中心市街地の活性化策に直結し、あるいは観光振興とも連携した取り組みとなる。まちづくり、観光に深く関わっている3氏に、熊本の現状とビジョンを語り合ってもらった。 進行/本誌編集長 山口真一郎

内向きな県民意識に変化

 山口 最初に皆さん方それぞれの立場からご覧になった熊本の現状について、どのようにお考えなのかお話しいただきたいと思います。両角先生は、熊本に来られて三十数年になられるようですね。

 両角 熊本市、あるいは熊本都市圏というのは、生活の場として非常に魅力のある都市―ここに住んで以来、そんな認識をずっと持っています。都市圏人口が100万人というのは、都市サービス、例えば教育、文化・芸術、医療サービスといったものをすべて提供できる基盤があるということです。しかも熊本市は城下町として、400年の歴史に支えられ栄えてきた都市ですから非常にコンパクトな市街地を形成している。加えて30キロ圏内に阿蘇や天草といった自然に触れることができる場所があります。生活の場として非常に魅力的であり、申し分のない都市だと思っています。
 ただ最近は他の地方都市同様、市街地の空洞化が進んでいます。自家用車の普及とともに、郊外に住み替える世帯が増え、業務施設や大病院などの都市サービス施設も郊外に移転した。「熊本の中心商店街はまだ活気がある」と評価する県外の方もおられますが、郊外大型店や通信販売などに押されて、中心市街地の商業も確実に活力を失っていると感じます。
 山口 丸本社長は、中心市街地活性化の推進機関として昨年12月設立された第三セクターの「まちづくり熊本」の社長を務められています。
 丸本 ご承知のように、改正中心市街地活性化法(改正中活法)は、基本計画策定に当たり、市中心市街地活性化協議会(会長・中尾保徳熊本商工会議所会頭)からの意見聴取を義務付けており、まちづくり会社はこの協議会の構成員という位置付けです。取り組むべき事業などにつきましては、後でお話するとしまして、いずれにしましても協議会やまちづくり会社などが設立され、中心市街地はどうあるべきかを考える機運が高まってきましたのは、やはり郊外に大型商業施設が相次いで進出してきたからだと思います。私は、これら大型施設を「黒船」に例えていますが、中心市街地には「これはまずい。何とかしなければ」という思いが出てきたのは確かです。中心市街地の集客数が減ったのは事実ですし、なお減り続けている。これをどうすれば食い止められるかなんですね。そこで、交通センター一帯、あるいは産業文化会館などの再開発が計画されているわけですが、これには4、5年、あるいはもっと時間がかかるというのが現実です。ですから、この3〜5年は体力を落とさず、耐え忍びながら2011年の新幹線全線開通に向け準備していくということだろうと思います。幸い、「何とかしなければならない」という機運は非常に高まっています。これをよりどころにして産学官一体で活性化を図っていかなければなりません。
 山口 亀井社長は、観光推進のリーダー役でもあります。その観点を交えながらご覧になると…。
 亀井 振り返って見ますと、寿屋、ニコニコ堂の経営破たん、あるいは九州産交の経営者が変わった、などといった大きな出来事が、熊本に地殻変動みたいなものをもたらしたのではないかと思います。それがまた、郊外と都心との地域内競争を生む要因ともなり、今熊本は非常に複雑な状況の中にあると言えるでしょうね。そうした状況下で、新幹線の全線開通が控えているという時代背景があります。
 それはともかく、熊本というのは、肥後54万石という非常に肥沃な大地を持ち、その大きなマーケットが江戸時代からあったわけです。それで県外に目を向ける必要がなく、経済活動にしても地域活動にしても内向きだったんですね。私は以前に一つの報告書をまとめたことがありますが、そのタイトルを「豊かさゆえの貧困」としました。
 ところがグローバル化、あるいは「九州はひとつ」と言われ始め、こうした県民意識を変えなければいけない状況になってきました。実際に、この10年間で県民意識が随分変わってきたなと実感しています。加えて、新幹線が全線開通するということで、いろいろな立場の人が、それぞれの立場で動き始めています。ここにも県民意識の変化を感じるわけです。
 観光につきましても、「熊本ルネッサンス」という県民運動がスタートし、細川家ゆかりの貴重な文化財を所蔵する永青文庫の常設展示が決まりましたし、Jリーグ入りを目指すサッカーのロッソ熊本を大いに盛り上げようという動きも活発化しています。こうしたことからも、明らかに10年前とは変わってきたと思います。観光というのは、交流人口を促すのに非常にいい手段ですし、来てもらえばすぐに消費につながるという即効性もあります。また裾野の広い産業であり、平和産業でもあります。まさに熊本の重要な戦略産業です。

大きい誘致企業の波及効果

 両角 県民の意識変化という話で思い出しました。25年くらい前ですか、熊本がテクノポリス建設に取り組みましたね。私はあれが、熊本の企業家の意識を変える大きなきっかけになったと思っています。今回の商業環境の変化は正にそれに次ぐ大きな揺さぶりだと思います。
 熊本は工業後進県でした。でも、後進県ゆえに恵まれていた環境や労働力を求めて、昭和40年代に日本電気や三菱電機のIC工場や本田のオートバイ工場などが進出してきた。また50年代にはその周りに関連企業も育ち始めていた。下駄屋さんや醤油屋さんのIC産業参入成功談が話題になったのもこの時です。当時、熊本では進出企業と地元企業との連携は弱く、新産業への興味も弱かった。しかし、熊本県がテクノポリス誘致競争に参加する過程で、先端企業を核に戦略的企業誘致と地元企業の転換育成を図ることにより、熊本に新しい産業コンプレックスが生まれ経済が活性化するという期待感が高まりました。以降、進出企業や地元産業界の距離が近づいて、現在の先端産業コンプレックスが生まれました。国の産業政策が当時の県や熊本の企業家達の発想を転換させ、技術革新のチャンスを与えたと思います。

 丸本 この企業誘致がもたらす経済波及効果は、すごいですね。身近な話、光の森の県の分譲地には進出企業に勤務されている方が、どんどん家を建てられている。地場企業に比べ給与水準が高いわけですから、金融機関も安心して融資しているということでしょうね。すでに、これら進出企業は熊本に根付ており、こうしたことを考えましても企業誘致による経済波及効果が大きいことを実感します。
 亀井 従来、熊本経済の安定装置には2つがありました。1つが安定した収入があり、それに伴って消費をする公務員経済、もう1つが財政支出です。ところが、この2つの安定装置が揺らいできたところに、不安定な要因が生み出され、新たな産業をどう育成していくかという課題を突き付けられたということだろうと思います。
 丸本 熊本のGDPは約4兆6000億円ですね。このうち製造業が2兆5000億円を占め、農業が3000億円、観光が2800億円程度です。県は「ものづくりフォレスト構想」「バイオフォレスト構想」「セミコンダクタ・フォレスト構想」などを推進することによって製造業の2兆5000億円を4兆円に引き上げようということで、さらに企業誘致に力を入れており、その経済波及効果が期待されています。
 製造業というのは県境を越えてお金を持ってきますので、財布の中身を増やすことになります。小売業はその財布の中身を分け合うわけですから、製造業を誘致すればするほど財布の中身はどんどん増え、それが消費に回されていく。小売業全体にとっても歓迎すべきことです。

産学連携による新技術開発

 両角 今、フォレスト構想の話が出ましたが、やはり大学と地元企業の先端研究部門が連携し、新しい産業を引っ張っていくことが大事です。熊本にはその力があると思います。例えば、先日、熊本大が開発した耐熱マグネシウム合金を使って産学官連携で新しい産業を興そうという、地域結集型研究開発プロジェクトに科学技術振興機構の大型予算が付きました。軽量耐熱合金の誕生で自動車産業も大きく変わると見られています。また最近熊本に進出してきた富士電機さんは、従来のものとは全く違う、フイルム状や繊維状の太陽電池を考えており、産学連携で各種産業への応用を構想しています。こうした研究開発型の産業拠点、すなわち各種のフォレスト構想が大学を中心に進んでいます。おそらく九州の製造業をリードしていくのに十分な力になり得ると思っています。

 亀井 それと熊本が有利なのは、熊本大のキャンパスが市内の主要な所に点在していることですね。産学が連携するのに非常にいいシチュエーションです。また私は熊本大の政策創造研究センターの参与会委員でもありますが、ここでは大学と民間のテーマをすり合わせ、自主研究とか委託研究を手掛けようとしておられます。民間にとって大学が非常に近い存在となってきているわけです。
 丸本 産学連携は非常に大事ですね。米国のスタンフォード大の例を見ましても、例えばグーグルなんですが、あれは学生の研究テーマだったものを事業化し、何百億円ものキャピタルゲインを得たわけです。ですから、熊本大でも産学連携によってその効果が如実に出るような、そういうノウハウを生み出せないものかと思うんです。

 両角 その仕組みは出来ていると思います。大学が法人化され、文部科学省の予算は研究プロジェクト主義になってきました。ですから、大学はいかに優れた研究プロジェクトを据えられるかに力を入れ始めています。熊本大は比較的、生命科学と言いましょうか医学、薬学系、あるいは工学系にいろんなプロジェクトを持っており、先生方は活発に研究を進められている。そういう意味で素材はありますし、さらにそれをきちんとパテント化し、研究者と大学に還元するといった知的財産を管理するシステムもしっかりできています。スタンフォード大に追いつくには、あとは頭をどれだけ回転させるかでしょうね。
 丸本 同時に、そうした優秀な理工系の学生にいかに熊本に残ってもらうか、この点もしっかり考えないといけません。つまり、優秀な学生の受け皿づくりということになりますが、地場の製造業ではちょっと苦しいというのが現実でしょうから、やはり研究開発機関を持った企業を誘致するということだろうと思いますね。

城と商業地域が近接する特性

 山口 お話の中にも出てきましたように、2011年春には九州新幹線鹿児島ルートが全線開通になります。これが熊本に与える影響については、どのようにお考えでしょうか。
 亀井 閉鎖されたマーケットに非常に強い風が吹き、風穴を開けるといった感じでしょうか。その風というのは、人が動くということであり、人の動きに伴って情報も動くということです。ですから、否応なくグローバルな視点が出てこざるを得ないと思います。先ほど、10年前から県民意識が変わってきたという話をしました。今また、目の前で連続立体交差などの工事が進んでいるのを見ますと、「新幹線が来るんだな」ということを実感させられ、これによって県民意識が加速的に変わってこざるを得ないと思います。
 新幹線が全線開通しますと、博多まで36分、北九州まで1時間弱です。それによって、1つの大きなマーケットが統合、融合される。そこにビジネスチャンスが生まれてくるというイメージです。そうしたことを考えますと、非常に大きなインパクトを与えると思っています。
 丸本 私の立場、要するに商業の側面から見ますと、新幹線が全線開通する時には博多駅に阪急百貨店が出店しますし、キャナルシティも大幅に増床すると聞いています。福岡、博多は一段と商業集積を高めることになり、熊本の富裕層が流れていくのではないか、それが現実だろうと思います。どれだけ流れていくか分かりませんが、私どもとしましては、その影響を最小限に留められるよう競争力をつけていくしかありません。先ほどお話しましたように、中心市街地のさまざまな再開発には時間が必要で、新幹線の全線開通には間に合わないでしょう。ですから、それらが実現するまでは耐え忍ばなければなりません。
 そこで考えられるのは、短期的には観光とのマッチングでしょうね。観光振興策をもっと強化し、熊本に来ていただく。幸い、熊本の中心市街地は熊本城の近くにありますから、観光のついでにショッピングもしていただく、こうした視点が必要ですね。

 亀井 全国の城下町を見ました時、熊本の最大の特徴は城という史跡に一大ショッピングモールが近接していることです。これは全国どこにもありません。そのこと自体が大変な財産なわけでして、これの回遊性をどうやって維持しながら、観光だけでなくショッピングに結びつけていくか、これをうまくやれればかなりのアピールになると思います。
 両角 熊本の方たちは、熊本城というと天守閣と本丸のことだけしか語られません。しかし、熊本城は本丸があり、二の丸、三の丸があり、そしてあの石垣もある。そのスケール感は国際的にも十分に価値のあるものです。実際、国際会議をやって熊本城に案内しますと、皆さん大変感激される。まずはあの城域の魅力を最大限に生かすことだろうと思います。そうしますと城域での滞在時間が長くなり、それからショッピングをし、食事もするということになりますと1泊2日、あるいは2泊3日ということになりましょう。そういうポテンシャルがありますので、そのプログラムを作ることが大事でしょうね。
 亀井 先日、商工会議所で熊本観光・文化検定制度の3級の試験を実施しましたが、受験者は2523人にのぼり、また受験用のテキストも6500部ほども売れ、大変な反響でした。この試験に際し、思い知らされましたのは私ども自身が熊本のことを意外と知らないということです。先生がおっしゃった熊本城にしてもそうなんでしょう。このテキストを読みますと、熊本の魅力を再発見できますし、それがおもてなしの心となり、ビジネスチャンスを考えるヒントを得ることにもなる、ということに気付きました。
 丸本 私も全国から100人ほどを集めたコンベンションを開きましたが、皆さん方にはこのテキストを配りました。皆さん喜んでおられましたが、それによって「また熊本に来てみよう」という話も出ていました。こんな使い方もあるんですよ。
 亀井 行き着くところ、まちづくりというのは「熊本らしさ」をどう追求していくかなんだろうと思います。中心市街地の開発だけでは魅力がありません。周辺の城下町としてのたたずまいであるとか、見るべきもの、味わうべきもの、これらすべてに「熊本らしさ」をどう表現していくか。それが客観的に見て魅力あるまちをつくっていくのではないでしょうか。
 経済同友会としても幸山市長に対し「熊本城の復元というのは大変すばらしいことだが、そこだけだと点的なものになってしまう。やはり面的に整備すべきではないか」と申し入れています。それで市も条例で基金を設け、熊本城下に残っている歴史的な文化遺産のうち整備を必要としている所、例えば泰勝寺の茶室、宮本武蔵が五輪書を書いた霊巌洞の五百羅漢、あるいは妙解寺の土塀、石橋などを修復しようとの動きになっています。

まずはグランドデザイン描く

 山口 今、亀井社長が「まちづくり」ということに触れられました。本日のテーマの1つでもありますから、この点について話を進めたいと思います。両角先生は、中心市街地活性化協議会の議長的な役割を務めておられますね。この協議会の役割をどのようにお考えでしょう?
 両角 都市の経営戦略、要するに現状を踏まえた上で、どういうまちづくりをするのか共通のビジョンを描き、それに向けた戦略を立案する。これに尽きると思っています。そのビジョン、戦略が改正中活法に基づく基本計画案ということになりますが、現在その策定を急いでおり、もう一息というところにきています。この基本計画案が国から認定されますと、皆が同じ方向に向かって努力する環境が整うことになります。
 もちろん、戦略を具体的に推進していくためには、やはり相当の努力が必要です。特に、私が期待しているのは行政より民間の企業関係者ですね。実際にまちをつくり動かしているのは何と言っても民間の力が大きい。「こんなまちにしたい」というビジョンを共有して、それぞれの取り組みの方向を揃えていただけるよう汗をかかなければなりません。ある意味では、これがいちばん大事な仕事かもしれません。おそらく、まちづくり会社の大きな役割というのも、そこらにあるのではないかと思っています。刻々と変化していく状況を分析しながら、いわゆる市民の目線、あるいは地元経営者の目線で、いろんな人をつないでいく作業が求められましょうね。

 丸本 私見になりますが、私はまちづくりには50年かかると思っています。ですから50年先を見据えたグランドデザインを描かなければなりません。その場合、行政、民間すべての人たちに「皆さん、これでいいですか」と同意を求める、つまりグランドデザインに対するコンセンサスが不可欠だと思っています。だれか1人が描いたグランドデザインでは意味がありません。両角先生がおっしゃる「市民の目線、地元経営者の目線」というのは、そのことだと思います。
 それから、まちづくりについて市は「ここは商業地域、こちらは住居地域」などとゾーニングしますね。紙の上に描くこと自体は簡単なことですが、実際にはデベロッパーが土地を買って開発するとか、地主さんが土地を売る、売らないという問題が出てきます。要するに土地を動かさないと、まちの開発はできません。泥臭い話ではありますが、これは現実の、非常に難しい問題だと思います。
 そこに、まちづくり会社の出番があるのではないでしょうか。この問題は、官でも難しいし、民でもできないことです。その点、まちづくり会社は第三セクターですから、動きやすいのは確かです。ですから、まずは私どもがそれぞれの町内にグランドデザインを説明し、当然、地主さんがおられますから、それへの協力を求め、土地を売却していただくよう説得する。これを積み重ねていくことで、ある程度の土地がまとまってくるだろうと思います。土地がまとまったところで、デベロッパーに開発してもらう。1街区の開発が進みますと、あとも同様に進んでいくでしょう。そうした調整も、まちづくり会社の役割だと思っています。
 まちづくり会社は、グランドデザインに基づいて、これへのコンセンサスを得、地域の皆さんにも協力していただく、という大変重い役割を担っています。いずれにしましても、市民を巻き込んだまちづくりをしていかなければならないと思っています。

州都に必要な条件を整備する

 亀井 具体的な話になってしまいますが、私はまちづくりにおける大きなテーマとして、新幹線が全線開通した時、新幹線駅から空港までのアクセスをどうするかという問題があると思っています。せっかく、新幹線で熊本まで来る時間は短縮されても、ここから空港まで50分、1時間かかったのでは、新幹線開通の意味が薄れかねません。それから熊本新港の整備、57号線の4車線化、第2天草架橋の問題などもあります。これらを解決しませんと、特に観光面での潜在力を生かしきれないことになってしまいます。
 それと2つ目には、これからは「環境にやさしいまち」という視点が必要だろうということです。化石燃料によるCO2排出をどう抑えていくか。その場合、やはり電車やバスの公共交通機関、あるいは自転車などを利用し、マイカーをできるだけ減らすということになると思いますが、そうした交通体系を組み立てていく必要があります。
 それから3つ目が、九州が道州制を導入した時、熊本がその州都として立候補するには、どういった条件を整備すればいいのか、それを調べ、研究し、それをまちづくりに生かすということだろうと思います。
 丸本 私は、まちづくりには確固とした哲学、理念が必要だと思っています。九州の中で、熊本はこういうまちづくりをしていくということを明確に示し、それを実現することで「あのまちはいいな。すばらしいまちだな」と世界的に評価されれば、自ずと州都として認められるのではないでしょうか。
 また、亀井さんから交通体系の話が出ましたが、例えば熊本電鉄のLRT(次世代型路面電車)構想につきましては、早く実施するべきだと思っていますが、なかなか進みません。ご承知のように、これは藤崎宮前駅から約1キロ離れた熊本市電の軌道までを新たなレールで接続、JR熊本駅前まで乗り入れるものです。併せて各駅周辺に支線バスを運行、駅にも駐車場を整備しマイカーからの乗り換えを促すという構想です。要するに公共交通機関が連携して都心へお客さんを運ぶ。加えて中心市街地への来街者を増やそうという考えなんですね。私は、これはまちづくりに当たっての最低条件だと思っています。まちづくりの哲学を明確にし、戦略を組んでやっていかなければなりません。
 両角 州都の条件ですが、人口集積や経済集積の大きさで語るとすれば、もう議論の余地はない。でも一極集中を避けて経済機能と行政機能を二つの都市で分担するという考えに立つと、州都には、内部の条件として九州内主要都市との間の移動利便性が求められ、そして何よりも外向きの条件として都市の風格を重視すべきだと思います。つまり、九州の迎賓館と呼ぶに相応しい都市の魅力や存在感が求められます。前者について、昔から熊本では「九州のへそ論」が語られてきましたが、新幹線や高速道路整備なども加わって、その立地条件が再び活きて来ると感じます。後者についても世界に誇れる熊本城やその城下町の歴史が育んだ都市の成熟感や、阿蘇や天草などの大自然との近接性など、主張できる条件は整っていると思います。
 山口 話は尽きませんが、本日はこのへんでひとまず終わりたいと思います。皆さん方には、今後ともそれぞれのお立場でまちづくりにご尽力されることと思います。ご活躍を期待しております。本日はありがとうございました。

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