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インタビュー
お客さまとの接点強化で
「地域への密着度」をさらに深める
小栗宏夫氏 OGURI HIROO 肥後銀行頭取 (熊本経済同友会 代表幹事)
福岡銀行と熊本ファミリー銀行の経営統合、メガバンクの侵攻、そして今年10月の郵貯民営化など金融情勢が緊迫する中、地場トップの肥後銀行(小栗宏夫頭取)は、中期経営計画に基づいて地域密着をさらに深める戦略を徹底している。また、熊本経済同友会の代表幹事でもある小栗頭取は、地域経済のリーダーとしての立場から、熊本のあるべき将来像を見据えている。
地域に密着して多様な
金融サービスを提供
―全国的には、緩やかな景気回復が持続しておりますが、地元・熊本の足下の景況感についてどのように見ておられますか。
小栗 熊本におきましても、経済指標などを見ますと全国同様、景気は回復基調にあると思われますが、それが実感として肌身に感じられるかというとそこまでの力強さは感じられないというのが実態ではないでしょうか。
ここ20年間ぐらいの地元経済の変遷を振り返ってみますと、半導体産業に代表されるような先端産業、輸送機器などの分野で多くの企業が進出しておりまして、これに伴いまして製造品出荷額は20年前との比較で2.6倍にまで拡大しました。県内出荷額全体に占める進出企業のシェアは57%と、県内の産業基盤を支える重要な役割を担っておりますが、好調な企業業績に伴いこうした進出企業を中心とする大型の設備投資が相次いでおり、雇用情勢も一時期に比べて回復しております。その意味では、不況は底を脱したと言っていいのでしょうが、それが個人消費の拡大にまでは至っていないのが現状です。その1つの要因として、全国的な公共工事の縮減の流れがあると思います。地方の特性として、公共工事への依存度が高いことがありますが、それが足かせとなってどうしても景気回復のトレンドに乗りきれていない部分があるような気がしております。
ただし、半導体を中心とする先端産業と自動車関連産業などでは活発な設備投資も見られ、また双方によるコラボレーションも起こってきており、今後の展開に楽しみな動きもあります。いずれにしましても、各産業で景気回復を実感できるまでにはもう少し時間が必要かもしれません。
―福岡銀行と熊本ファミリー銀行との経営統合など、県内の金融情勢が転換期を迎える中、貴行では「お客さまとの接点強化」を重点施策に、地域密着を図っておられますね。
小栗 今年4月に熊本ファミリー銀行が福岡銀行と経営統合、ふくおかフィナンシャルグループとしてスタートしましたし、それ以前から不良債権処理を終えたメガバンクの県内への攻勢が激しくなっており、さらに今年10月には郵貯も民営化することが決まっています。こうして見てみますと、地域金融機関の競争環境が大きく様変わりしつつあるのは一目瞭然ですが、それでは地域金融機関の役割もそれに伴って変わっていくのかというと、そうではありません。地域金融機関の役割とは、地域に密着して地域のお客さまに金融商品の提案やソリューションの提供など、お客さまのニーズに合わせた金融サービスを提供し、そのことでお客さまの信頼と支持を得ていくということに尽きると考えております。
こうした観点から、当行では「風土改革と構造改革による企業理念の実現」と「お客さまとの接点強化による地域密着」を基本コンセプトとする「新世紀第3次中期経営計画」を06年4月にスタートしました。当行が、地域金融機関として安定して成長していくためには、地方銀行としての原点に立ち返り、お客さまとの接点を強化し、地域への密着度をさらに深めていくことが不可欠であるとの認識を中計に盛り込むことで、当行の企業理念である「お客さま第一主義の実践」と「豊かな地域社会への積極的な貢献」を目指していきたいと考えております。
なお、中計の期間は従来の中計を1年縮めて2年間としました。競争環境の急激な変化に対応するとともに、内部統制やガバナンス強化、統合リスク管理体制の充実、新BIS規制への対応などさまざまな経営力強化に集中的に取り組むためで、お客さまへ最適な金融サービスを提供するための構造改革に取り組んでおります。
―中計の中でも重点項目として取り組まれているのは、どのような点でしょうか。
小栗 具体的には3つのM、すなわちマネジメント戦略、マーケティング戦略、マンパワー戦略に重点をおいた営業施策で地域密着を図っています。
まず、マネジメント戦略ですが、組織体制の整備、役割と責任の明確化、行内インフラの整備などを進めると同時に、お客さまの利便性向上につながる積極的な投資を行うなど、お客さまに最適な金融サービスを提供する枠組みを整備しております。
マーケティング戦略では、昨年度より3S運動(スマイル・サービス・ソリューション)の一層の高度化に取り組むと同時に、法人および個人取引のセグメントを実施しました。
この中で法人取引につきましては、営業統括部情報営業グループを核とする情報営業態勢の整備を行い、経営支援やビジネスマッチングなどのコンサルティング業務を拡充する一方、各種セミナーや交流会なども随時開催して取引先への情報提供も行っています。県外支店におきましても、業種ごとの取り組み強化により融資推進態勢の強化を図るとともに、福岡支店・福岡事務所の情報提供機能・市場分析機能強化などの施策を通じて事業資金貸出の増強に努めております。また、県内の金融機関としては初めて昨年9月に地場中小企業を主な対象とする「肥後銀行ビジネスローンセンター」を開設しました。
一方、個人のお客さまにつきましては、お客さまのライフサイクルに応じた金融サービスの提供をテーマに、お客さまの多様なニーズに対応する金融商品、各種サービスの提供に取り組んでおります。そのために、お客さまとの接点として最も重要な営業店における店頭対応では、店頭インストラクターによる窓口係への指導を強化。資産運用へのアドバイス強化のためチャネルも多様化、個人ローンを専門に扱う「ローンプラザ」を県内に6カ店出店しているほか、情報発信拠点として市内屈指の繁華街である上通り支店内に「フィナンシャルプラザ」を設置いたしました。これらの施策により、当行の営業店は全体で125店(県内114カ店、県外11カ店)、ATMなど店舗外自動機は194カ所となり、主要営業基盤である熊本県内を広くカバーしております。
3つ目のマンパワー戦略では、行内に「教え、学び、育て、成長する風土」を再構築し、行内における教育力、マネジメント力を強化しております。また、行内のITスキルを向上させる「レベル4プロジェクト」も立ち上げ、全行的なITスキルのレベルアップにも取り組んでおります。
システム的なバックアップによる業務の効率化により、渉外係の訪問件数を倍増することも可能になりました。昨年12月末時点におけるエリア渉外担当者の月間訪問件数は、17年下期の300件に対して601件と実際に倍増することができました。
―計画の達成度合についてはいかがですか。
小栗 着実に実績を積み上げている段階です。中小企業融資を中心とした事業性貸出、個人ローンともに増加しており、個人ローンにつきましては住宅ローンを中心に順調に増加。また、ビジネスローンセンターの融資実績も昨年10月の開設から3カ月で149件、約6億円の実績を上げております。預貸金の堅調な増加とともに、投資信託や個人国債などの預かり資産残高も順調に増加しております。
交通結節点としての
都市機能強化が重要
―九州新幹線の全線開業がもう4年先に迫っていますが、これを地域変化としてどのように受け止め、また備えるべきだとお考えでしょうか。
小栗 九州新幹線が全線開業すると、熊本−博多間は約35分程度で結ばれるということですから、関西圏を含めた広域交流がかなり盛んになることが予想されます。地元には、ストロー現象を懸念する見方があることも承知していますが、地場企業の中には商圏が広がることをビジネスチャンスにしようと活発に動かれているところもあります。地域としては九州新幹線の全線開業を契機に熊本の良さを全国に向けて情報発信することが大変重要になってくると思います。そのためには、やはり産官学が連携して熊本のあるべき姿、将来像について真剣に議論を深めていく必要があると思います。本県には、築城400年を迎えた熊本城をはじめとする歴史・文化的な蓄積や、雄大な阿蘇山など豊かな自然といった他に例を見ない特性があります。こうした特徴と潜在力を、うまく引き出していくことが来るべき九州新幹線全線開通に備えることにつながるのではないかと考えます。
それから、もう1つの重要な視点は、九州の中心に位置するという地理的な特性を生かすために、交通結節点としての機能を強化していくことです。九州新幹線の全線開業で、九州における縦軸は1本背骨が通ることになりましたが、九州全域の交通体系を考えますと、お隣りの大分県や宮崎県、それから西九州地域など横軸の連結が必要になってくることは言うまでもありません。この点につきましては、これまでにも熊本経済同友会の交通インフラ部会で議論を積み上げまして、いくつかの提言をしてきているわけですが、中九州横断道路、延岡線などが整備されることによって、九州各都市間との交流はさらに活発化し「九州は1つ」に大きく近づくことになると思います。
―九州新幹線の玄関口となる熊本駅の周辺再開発に関しては、JR九州と県・市、地元経済界でトップ会議を発足、新しい熊本駅のあり方について議論されています。
小栗 トップ会議におきましては、熊本駅舎への市電の乗り入れが決まりましたが、これなども熊本駅を中心とする交通結節機能の強化という観点からも、それから利用者の利便性向上という点からも、大変喜ばしいことだと思っています。今後、熊本駅周辺では着実にインフラ整備が続いていきますが、熊本駅にどのような機能を持たせていくべきか、今後議論を深めていくところですが、周辺との関連で、あるいはもっと視野を広げて九州全域との関わりの中に熊本の良さ、特性を見出していくことが必要なのではないでしょうか。九州新幹線の全線開通は、九州全体にとってどうなのかという視点で地域づくりを進める1つの条件が整ってきているという気がしています。
―道州制に向けた議論が活発化する中、本県では州都を目指すべきとの声も聞かれるようになってきました。
小栗 道州制につきましては、九州経済同友会の「九州自治州構想」において、九州がその特性を生かし、企業や住民にとって住みやすく魅力ある地域となるために「九州自治州」の創設を提言しておりますし、九州経済連合会におきましても「21世紀の九州地域戦略」の中で、「自律的経済圏」の形成を目指すべきだとの提言を行っています。熊本経済同友会におきましては、九州経済同友会の道州制推進委員会への参加、地方制度調査会との勉強会などを実施して、道州制の基本的な内容の研究を行うと同時に、道州制下における熊本都市圏の役割と機能については検討を行っているところです。
これは私見ですが、道州制の導入に際しましては、機能の最適な配分とその役割分担が重要であると考えています。九州の今後の発展を考えますと、少なくとも経済と行政の機能を分離し、一極集中によって起こりうるさまざまな問題を回避する必要があるように思うわけです。九州新幹線の全線開業や高速道路網の整備により、九州各都市間の時間的距離が短縮される中、「熊本を州都に」という議論がありますが、本県は九州の地理的中心に位置するばかりではなく、広い平野、豊富で良質な水、充実した医療・福祉環境など、州都に必要な要件のいくつかをすでに持っておりますが、今後さらに州都にふさわしい都市の基盤整備を進める必要があると思います。
―今後も熊本県発展のためご尽力ください。ありがとうございました。
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