2007年3月号93ページに掲載

Invitation of Industory

自治体の企業誘致
企業の育成と誘致で
九州に国際競争力を

■福岡県■長崎県


 景気の拡大に伴って国内経済は上昇しつつある。九州では自動車、半導体などが基幹産業として成長しているが、メーカーの生産拡大へ向けた工場新設・拡張や関連企業の進出が相次ぎ、自治体の企業誘致が活発化している。こうした中で、九州7県が自動車産業振興で連携して地場産業の育成、取引拡大を支援、産業集積をさらに高めようとしている。

全九州で「3段階の『エンジン』」が稼働

 俗に、経済活性化には「3段階の『エンジン』始動が必要」といわれている。(1)製造業の設備投資が本格化するのが第1段階。これが(2)非製造業の設備投資(第2段階)への発火材となり、最終的に(3)個人消費が動き出す、というものだ。
 国内の景気拡大が続く中で、すでに(2)の建設・不動産業界では、再開発が続く都心部をはじめ大規模マンション・商業施設が証券化され、国内外のファンドマネーが流入。一部にバブル経済化した様相もうかがえるほど。その次の段階にくる(3)の流通業界では、高額商品の購入を含めて客足が戻ってきた。観光業界でも、リタイヤ後に長期旅行へ出向く団塊世代(1947―49年生まれ)を当て込んだツアーの販促に余念がない。
 こうした投資や消費の活況に連動して、九州でもメーカーの先行投資が活発になっており、自動車関連や半導体、ITなどを主軸に、開発・製造・物流拠点の立地が相次いでいる。自動車の北米・アジア向け輸出が好調である一方、国内でも軽自動車などの需要が堅調で、工場は高水準の操業態勢にある。半導体は「産業のコメ」と称される通り、デジタル家電からパソコン、携帯電話まであらゆる電子機器に必須の基礎材として好況で、企業側の情報システムへの投資が際立っている。
 こうして3段階の「エンジン」が稼働すると経済が活性化するだけに、地方自治体が企業誘致に託す期待は大きい。

産業集積と企業連携の有機的なリンクが進む

 現在、各地の自治体では財政力格差が顕在化しており、独自財源の確保を急ぐ中で、企業誘致は地場産業政策の重要な柱と位置づけている。企業が進出して本稼働することで、地域に雇用が創出され市場が形成される。その一方で、自治体は事業税や保険料などの安定収入の道を開きながら産業構造の高度化・多様化を支援する役割を果たしていくことになる。
 そこで望まれるのは「縦糸(産業集積)と横糸(企業連携)の有機的連携」。自動車、半導体、ITなどの先端・基幹産業はすそ野が広く、部品製造、検査・計測、メンテナンスなどの分野で、関連企業の“呼び水”効果が見込めるからだ。中でも、自動車産業は部品産業の最たる例で、地域産業と連携をとって金属加工から組み立て、板金塗装などの産業集積を進め、部材の現地調達率をアップすることにより、域内での一貫生産態勢が確立できる。同時に情報や知識と、技能とを融合させ、地元の工業系大学をはじめ研究機関、金型・治具メーカーなど地場企業との産学連携によって地方に巨大な「産業クラスター(群)」を生むことも可能だ。

加速する自動車関連業 九州進出と地場参入

東芝大分工場
 九州では近年、自動車関連企業の誘致が活発になり、九州全県が連携を図るようになった。
 トヨタ自動車九州、日産自動車九州工場、ダイハツ九州の3社で、九州地区の06年の自動車生産台数が101万2000台で前年比12%増となり、初めて100万台を突破した。トヨタ九州とダイハツ九州の増産がこれに寄与した。トヨタ九州はさらに、エンジン生産の第2ラインを08年春に増設するのに加え、自動車部品の地元調達を拡大する目的で北九州臨空産業団地と福岡県苅田町の産業団地にまたがる部品工場向け用地の取得を検討しているという。ダイハツ九州は、大分中津工場敷地内に07年末の操業開始を目指す第2工場を建設中で、第1工場と合わせた年産50万台の生産能力は同グループで国内最大となる。また、福岡県久留米市ではエンジン工場を建設する立地協定を結んだ。日産九州も05年度から毎年100億円ほどを投資し設備更新を実施。さらに、グループ傘下の日産車体がこのほど、09年操業を目指して日産九州工場にミニバンの車両組立工場を建設すると発表。生産能力は年12万台で、これを加えると日産九州の生産能力は62万台に達する見込みだ。
 こうした大手自動車メーカーの相次ぐ生産体制拡大によって自動車関連メーカーの九州進出が一段と加速する見込みで、九州地区で13カ所の産業団地を分譲する中小企業基盤整備機構によれば、06年4月−12月に同機構の団地へ進出した企業は九州だけで分譲面積で全国の51%。経済産業省の工場立地動向調査では、敷地面積1000平方メートル以上の製造業で、福岡県に限っても02年以降毎年50社以上が進出している。その背景として国内外の物流に適した九州の良好な立地環境、有効求人倍率が低いなど豊富な労働者の供給力、人口に比べて多い工業系学校卒の人材確保などが挙げられる。

自動車振興へ7県連携 地域の人材育成や支援

 福岡県を中心に部品メーカーの進出が隣接県へ拡大する様相を呈しており、佐賀、熊本、大分の九州北部4県で地場企業の参入、拡大を促進しようという動きが出てきた。そこで06年1月北部九州4県が自動車産業振興で連携する会を立ち上げたのを皮切りに、福岡県などが09年度を目指して生産150万台達成、部品の地元調達率を現在の50%から70%への引き上げを目指す「北部九州自動車150万台生産拠点推進構想」を進める中、11月にはこれを九州7県の連携へと発展させる形で、7県商工担当部長を中心に構成する「九州自動車産業振興連携会議」が発足。地場企業の人材育成、技術支援のほか、合同商談会・展示会を開き、共同のパンフレット、ホームページの作成など、地場企業の参入と取引拡大を促す連携を図っている。
 7県合同では初の商談会となる「九州自動車部品取引拡大商談会」が1月、北九州市のアジア太平洋インポートマートで2日間開催され、大手メーカー、1次部品メーカーなど発注側の30社と、3次部品メーカーなど受注側の121社が参加した。続いて2月には愛知県刈谷市で展示商談会を開催、九州内の地場企業44社が参加して、中京地区の自動車関連企業にも取引拡大を働きかけている。こうした共同施策のほか、各県が単独で行う生産管理、生産技術に関する研修会や参入セミナー、工業技術センターによる技術講習会などについて、県境を越えた相互参加を促進しているところだ。同会議の石井俊弘座長(福岡県商工部長)によると「7県それぞれが単独と共同の2層体制で、自動車産業の振興を進めているのが九州の強み。メリットが出ることは今後も7県協調して取り組みたい。九州北部の産業団地が埋まりつつあり、今後は自動車関連の九州南部への展開が始まるだろう」とみている。

地元調達率の向上で国際競争力を高める

日産自動車九州工場
 自動車メーカーにとっても、地元調達を高めることは大きなメリットにつながる。国内の自動車工場は、北米や伸長著しい中国など、日本の自動車メーカーが開設した海外工場との競争に直面しており、物流費を含め部品や材料のコストを下げるべく、域内の地元調達率を大幅に引き上げる必要に迫られている。
 実際、トヨタ九州では1次部品メーカーを取り込んだ「チーム九州」を作り、自動車産業に参入する地場企業の発掘に自ら乗り出した。ダイハツ九州でも地場メーカーからの調達を望んでおり、中国や韓国といった東アジア諸国からの部品輸入を視野に「九州は物流面のメリットもある」と指摘する。
 このように自治体と自動車関連メーカーがお互いに連携を密にして、九州全体の自動車産業振興を図り、最先端の自動車産業拠点として国際競争力を高めていくことが欠かせなくなっている。九州内の「競争と協調」、豊富な人材、アジアに近い地の利を生かすことで、九州の産業集積と地場企業の発展に期待したい。

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