オフィス特集
創造力とセキュリティーが
求められるオフィス
■コクヨ九州販売/■岡村製作所 西日本支社/■イトーキ 西日本支社/■レイメイ藤井
三栖邦博・ニューオフィス推進協議会会長
|
経済のグローバル化、企業の内部統制を背景に、現代のオフィスは創造の場、コラボレーションの場としての役割、そしてセキュリティー機能が求められている。オフィスにかかわるさまざまな研究や人材育成でオフィス業界をリードする(社)ニューオフィス推進協議会(NOPA)の三栖邦博会長(日建設計会長)に、こうしたオフィスのあり方について聞いた。
働く側一人ひとりが>創造性を発揮する場
―国内企業はバブル経済が崩壊すると目指す方向が明らかに変わり、それに伴ってオフィスの中身も進化してきました。まずは、オフィスの変遷についてお伺いしたいのですが。
三栖 私どもが推進するニューオフィス運動が始まるまでは、工場などの生産現場で改善が実施されていましたが、オフィスづくりはというと半ば置き去り状態でした。ジャパンアズナンバーワンといわれたように、日本企業の工場は品質も効率も世界ナンバーワンですので、オフィスも充実しなければ、と目が向けられるようになった。そのころはまだオフィスのコンピューター化が始まったばかりでしたが、インテリジェントオフィスなども出てきてオフィス環境が様変わりするようになりました。
快適性や機能性もレベルアップしていく中で、ニューオフィス運動がスタートし、その機運に乗ってNOPAが1987年に誕生しました。オフィスの中身を審査する「日経ニューオフィス賞」を設けて毎年表彰するといった、オフィスの改善活動を積極的に進めてきました。
オフィス家具もグレイデスク一辺倒からローパーティションの導入などでだんだん良くなり、建物も新しい技術を加えて斬新なスタイルに変ぼうしていくなど、ハード面に進展が見られる一方で、オフィスづくりに人間工学が活用されるといったソフトもオフィスづくりに取り入れられます。オフィスの中はIT化に伴う床下配線やITワークに適した快適な照明が施され、空調もきめ細かなコントロールになってきました。
―これからのオフィスにはどのようなものが求められていくのでしょうか。
三栖 オフィスの機能面や性能面は進歩しましたが、今いちばん重視されるのはオフィスワークの価値の向上です。つまり「いかに創造性を発揮できるオフィスをつくっていくか」が、オフィスづくりに携わる者の最も重要な課題ではないかと思います。
2006年にNOPAが主催する「九州ニューオフィス推進賞」を受賞した九州日本信販(北九州市)のオフィスフロア
|
なぜ創造性が大切なのかを私なりに考えてみると、日本企業が世界の最先端をいき「追いつき追い越せ」の勢いで新しい製品やソフトを開発することで、常に新しいものをつくっていかなければならない、世界でオンリーワンでなければならない立場になったからです。日本企業の新しい製品はさまざまな特化された技術の集積であり、例えば携帯電話はどんどん進化していますが、最先端の技術の集合でもあります。こうした新しい製品を休むことなく生み出していかなければ、すぐに2番手、3番手で追随する企業から追い抜かれてしまう。そうしないと、グローバル競争の中では生き残っていけないわけです。
これは社員一人ひとりに創造性がなければできないことです。人から人へ自分の考えをぶつけるように、互いにキャッチボールをしていくと新しい考えが個人の中に浮かんで、新しいアイデアが生まれる。こういった人と人とのコラボレーションによって新しい価値を生む場をつくっていくことは、社員が会社から大事にされていると考えるようなモチベーションを高める動機づけになります。それは、部や課といった従来の部署単位で固まって仕事をするというよりも、例えばプロジェクトごとにそのプロジェクトに最適で最強のメンバーでチームが組まれ、一定期間をやり遂げるといった横断的なチームの中で、一人ひとりに力を発揮させるような場づくりです。
また、総務部門などノンコアの部門を、それを専業とする企業にアウトソーシングする例に見られるように、コアビジネスに経営資源を集中させ本業に特化していくことで、オンリーワンとして勝ち続けていくという時代にも入っています。
職場に求められるセキュリティー
三栖 もう1つの課題として感じるのは、今の経営者や社員がキャリア志向を持っていることです。企業は成果主義を導入するようになっていますが、採用時でも「これまでどこに勤めていたか」ではなく、「今まで何をやってきたか」ということに関心が高いですね。逆に働く側でも、成果で評価されるのであれば、会社を選ぶ時にきちんと成果を出せるというような、与えられる仕事に対してそれなりの環境を求める傾向が強くなっています。
それに、職場での女性の能力開発や幹部登用などもオフィスづくりに影響を与えていると思われます。最近は職住近接が進み、都心居住が増えています。働く場所と住む場所さえあればいいというのではなく、働きやすい環境づくりを意識するようになりました。例えば東京・丸の内のオフィス街がそうです。ショップ、レストラン、ホテルが増えて、アートやコンサートなどのイベントが見られるなど、複合型のオフィス街が出現しています。。六本木ヒルズもその1つでしょう。このように働く人一人ひとりを大切にすることが、街づくりにも波及してくるわけです。
また、最近は雇用形態が変わり、会社の中に協力会社や人材派遣など正社員でない人が増え、また、社外の専門家と社内で協働する機会が多くなっているように、さまざまな人たちがオフィスで一緒に働いています。職場は、こうした人たちと社員が一緒になって知恵を出し合い、コラボレーションを行う場になります。
―そこではセキュリティが必要になってきますね。
三栖 その場だけに限られるシークレットというものが派生してくるので、あるプロジェクトなどでコラボレーションに参加する人たちには、当然、自分たちと同じレベルのセキュリティーを求めてくるでしょう。
当会では安心して仕事ができるセキュリティーを提供していかねばならないと考え、独自のセキュリティー認証制度を昨年10月にスタートしました。
身体障害者が働くオフィスには特設スロープも見られる(九州日本信販)
|
セキュリティーの制度は国内外でいくつかありますが、NOPAが目指しているのは、今までセキュリティーの構築を強く意識してこなかった中小の企業でも馴染みやすく、最小限のセキュリティーが施せるようにレベルアップしていこうというものです。これまでの主なセキュリティー認証は、個人情報保護を掲げてネット上の情報やデータ情報などの管理に比重を置いていますが、私たちの制度は「目に見えるセキュリティー」です。オフィスを構成する部屋という物理的な場をベースとしたセキュリティーの考え方は理解しやすく、管理しやすく、費用も安く済みます。
それが当会の「オフィスセキュリティマーク認証制度」です。これはオフィス内をエリアごと、保護の対象となる資産ごとにセキュリティーレベルを3つの段階に分けるという、物理的なセキュリティ対策に重点を置いています。資格を取得した「オフィスセキュリティコーディネータ」がそのレベルに達しているかどうかを審査し、当会が認証を授与しますが、レベルに達していなければアドバイスやコンサルティングを行い、その企業が認証を取得できるまでサポートしていきます。昨年5月に初めてコーディネータの資格試験を実施し、約400人の資格者が誕生しました。
―企業の内部統制や新SOX法、社会的責任(CSR)を背景に、セキュリティーニーズは近年一段と高まっているようです。
三栖 オフィス家具はどんどん改善されて、セキュリティーにも対応しており、使う側の負担を少なくするよう随分と使いやすくなっています。これらを含めた体系的なセキュリティーシステムを作り上げなければならなくなっています。また、来客の入退室や社員の動きを考慮した動線を作ったりすることで、セキュリティー対策はオフィスづくりにも反映していると言えるでしょう。
オフィスは形になった企業戦略
身体障害者への配慮を細部にまでゆきとどかせた九州日本信販の企業姿勢が評価された
|
三栖 これまでお話ししたように、オフィスは働く人の創造性を高める場として求められていますが、これに対して企業は、個人が自由にのびのびと発想ができるように環境を整えることで、社員やパートナー企業の来訪者に何を大切にしているかを意思表示することができます。つまりオフィスは「形になった企業戦略」といえます。
以前の企業はどちらかといえば「こういうオフィスをつくったから、その範囲でやりなさい」という上意下達の世界でしたが、今は働く人にもどういうオフィスをつくったらいいかを提案させるようになってきました。
―九州の企業のオフィスについてのご印象はいかがでしょうか。
三栖 昨年9月にNOPAが主催した日経ニューオフィス賞「九州ニューオフィス推進賞」を受賞された九州日本信販(北九州市)さんは、身体障害者が働くことに配慮したオフィスとして独自の姿勢を打ち出されており、これが評価されました(写真)。企業は事業による貢献のほか、納税や雇用の貢献もありますが、社会的責任というのも重要になってきています。その意味でもオフィスは企業の姿勢、企業戦略をアピールする有効な手段の1つなのです。
―本日は大変ありがとうございました。
|