▲扉に戻る
【焼酎特集】乙類前線 速度緩やかに北上中
焼酎ブーム沈静化
好調続くイモが
市場をけん引
かつてない焼酎ブームに湧いた焼酎業界に、昨年あたりからやや陰りが見え始めている。唯一売り上げを伸ばすイモを尻目に、麦、米、ソバなどを主力とする各社は横ばいや減収が増え、今後の巻き返しに懸命だ。ブームの終えんとともに、今後は大手酒類メーカーを中心にしたM&Aや、ファンドの動きも活発化することが予想され、焼酎業界を取り巻く環境は大きく変わろうとしている。
焼酎大国の九州・沖縄
売上高上位50社中に43社
●2005年 焼酎メーカー売上高ランキング上位20社
信用調査機関の帝国データバンク福岡支店が昨年7月に発表した焼酎メーカーの05年売上高ランキングによると、ランキングの上位50社のうち九州・沖縄地区の企業は前年から1社増え43社に。増収企業は前年より6社減の35社、増益企業も前年を9社下回る25社となり、我が世の春を謳歌した焼酎業界にもややかげりが見え始めている。
3年連続で売上高トップを達成したのは大分県の三和酒類。「いいちこ」人気の健在ぶりを示した格好だが、前年に比べ売上高はマイナス0.9%とやや落ち込んだ。同じく大分県の二階堂酒造もマイナス1.6%落ち込み、麦焼酎を主力とする大分県は4社中3社が減収となる厳しい数字となった。売上高合計は0.8%減の838億円と麦離れが少しずつ進んでいるようだ。
そんな中、唯一気を吐いているのがイモ焼酎だ。「白波」「黒白波」の薩摩酒造が前年の7位から3位へと躍進し、売上高を200億円の大台に乗せたほか、宮崎県の霧島酒造も順位を5位へと1つ上げ、伸び率でも17.9%と大きく伸ばした。これは「黒霧島」が全国で爆発的に売れ、出荷調整を行うほどの人気が続いたためだ。伸び率に目を移すと、鹿児島県の西酒造が3年連続で1位。「富乃宝山」「吉兆宝山」などが相変わらず好調で、鹿児島県文化センターの命名権を取得、「宝山ホール」とするなどその勢いは当分収まりそうにない。
県別のメーカー数は鹿児島県が19社で前年より3社増加。2位は沖縄県で前年から2社減少の8社。3位は宮崎県で前年と同じ6社。イモ焼酎を主力とする鹿児島県の19社中17社が増収となり、売上高合計は前年比17.4%増の約895億円、大分県を抜いてトップになった。こうしてみると焼酎全体では一時の勢いがなくなり、ブームが落ち着きを見せ始めている半面、イモに人気が集中し、業界全体のけん引役となっているようだ。
メーカー間の競争激化
生き残りをかけた戦い必至
ここ数年「本格焼酎と名がつけば何でも」という傾向が続き、手に入れるため狂奔したマニアや飲食店関係者も多い。それが1本数万円する焼酎を生み出し、ブームに拍車をかけたのは記憶に新しい。しかし消費者が本格焼酎の味に慣れ親しみ、自分の好きな銘柄を見つけた今、各メーカーがさらなる品質の向上に取り組み、自社ブランドの価値をいかに高めていくかが今後の生き残りのカギを握っている。
特に03年から04年にかけ工場新設、増設による増産体制に踏み切ったメーカーにとっては、売り上げの伸びが鈍いようではまさに死活問題。M&Aの対象となりかねない問題だ。業界ではすでに2極化が始まっており、今後、さらにメーカー間の生き残りをかけた競争が激化するのは必至だ。また数年前から焼酎業界には大手ビールメーカーなどが相次ぎ参入しているが、体力が落ちた地方の蔵元を次々にM&Aしていく可能性があるほか、提携の名のもと、子会社化される蔵元が増えることも考えねばならない。
こうした事態について宮崎県のある蔵元は「地方にある蔵がそれぞれ地域性豊かな焼酎を造っていたからこそ全国的な注目を浴びた。そこへ大手が参入となると、個性より売り上げ重視、つまり金太郎飴のような類似した焼酎が主流になる可能性がある。大手の販売力は魅力だが、自分で自分の首を絞めることだけは慎んでほしい」と警鐘を鳴らす。
しかし地方では、あくまで独自路線を進み、歴史と伝統を守ろうとしている蔵が圧倒的に多いのも事実だ。そして各地の蔵元から必ずといっていいほど出てくる言葉が「まじめな焼酎造り」。まじめとは厳選された材料と水で、手間暇かけて造ることにほかならない。熊本県のある蔵元は「焼酎ブームが去ったのは事実だが、これまでが異常で、やっと正常に戻ったと考えるべきだろう。本格焼酎の拡販地域としては東北、北海道をはじめ甲類市場がたくさん残されている。また首都圏は有名銘柄に人気が集中する傾向があるが、各メーカーが積極的においしい飲み方を提案し、レギュラー酒でも十分おいしいということを訴えれば市場開拓の余地は十分あるはず」との声もうなずける。今後、業界地図がどう変わっていくのか。注意深く見守っていく必要がある。
以下、本格焼酎の本場・九州の蔵元の取り組みを紹介する。
|