2006年11月号138ページに掲載

物流未来

グローバル化で物流投資がますます拡大

●西久大運輸倉庫 ●日建九州リース
 規模の経済といわれる近年、これにロジスティクスが融合することで国内物流が一段と進化を遂げている。一方、東南アジア経済圏の発展に伴うハブ空港・港湾の相次ぐ登場により、国内の物流インフラ整備の遅れが指摘されている。物流グローバル化の動向を、国内物流と国際物流の2つの角度からレポートする。

物流投資は
経営効率化のかなめ

 「商品配送が地域ごとにバラバラ。物流効率化の余地はまだまだある」―ある地場電線メーカー社長が原油高騰のあおりで経営効率化をさらに進めるため、得意先に商品を納める九州内販売物流を大型物流センターへ一本化する検討を始めた。
 規制緩和によって企業の統合、再編が進み、国内経済は規模の経済へと変ぼうしている。九州でも製造業をはじめ薬品、食品、日用品といった卸売業や量販店、衣料品チェーン店、自動車ディーラーなどが統廃合で規模を拡大するたびに、企業・グループ内の物流統合が進んでいる。また自動車産業、半導体産業の集積が高まり、これらの部品工場が九州へ相次ぎ進出、企業間で連携したロジスティクスが見られる。
 北部九州4県をエリアとするトヨタ部品福岡共販(福岡市)では、十数カ所ある営業所から本社倉庫へほとんどの部品在庫を集約して一本化、需要頻度が5カ月に1度を下回る商品は供給元のトヨタ自動車の拠点倉庫へ移すなど「必要な時に必要な物を生産、供給する」ジャストインタイム、カンバン方式を採用する企業が、トヨタ企業以外の他企業も含め随分と増えている。冒頭の電線メーカーも母体企業と共同で物流の最適化を進める方針である。
 日本ロジスティクスシステム協会の「物流コスト調査報告書」(2005年度)では、売上高に対する物流コストの割合が全業種で4.83%となり、初めて5%を割った(調査対象は製造業、非製造業、卸売業、小売業などで有効回答数225社)。ピークだった96年の6.58%と比べ1.75ポイント低下しており、調査年度によって対象企業や回答数などが異なるものの、大勢としては物流コストの削減効果が表れている。
 また、日本経済新聞社の2005年の卸売業調査によれば、現在計画中もしくは実行中の設備投資で「物流拠点の再編など物流効率化」を主な目的とする企業が43.2%で最多となった。業種別では日用品、医療用品が70.6%で最も高い。このように物流投資に対する意欲は一段と高まっており「物流を制すれば経営を制する」という意識がますます浸透しているようだ。

不動産の証券化で
大型倉庫の建設相次ぐ

 2003年施行の倉庫業法改正で事業参入が緩和され、投資会社が物流倉庫の証券化を一段と加速させている。世界18ヵ国に2300棟余りの物流施設を展開するプロロジス(米国)は、佐賀県鳥栖市の「グリーン・ロジスティクス・パーク鳥栖」で九州初となる賃貸向け大形物流施設(2棟で延べ床面積約8万平方メートル)を、07年上期から08年上期にかけて相次ぎ建設するほか、北九州市門司区の物流団地「マリナクロス新門司」でも08年上期に同様の建設を計画してる。
 投資向け不動産を手掛けるコマーシャル・アールイー(東京)は、来年3月に鳥栖市で賃貸式物流施設(同1万4000平方メートル)を、筑紫野市でも来年中同様に大型施設を開設する予定。さらに原油高騰を背景に陸送から船便へシフトするナカノ商会(千葉県市川市)は、年内にも福岡市箱崎ふ頭でサブリースの物流倉庫(同2万6000平方メートル)を竣工する運び。地場不動産投資信託の福岡リート投資法人(福岡市)は、商業施設の取得に続いて地場の運輸・倉庫会社へ不動産流動化を働きかけているという。いずれも物流施設に特化した不動産の証券化として注目を集めている。「所有する自前の倉庫でないと融通がきかない」(地場物流業者)との声も聞かれるが、こうした動きが物流施設の利用手法に選択肢を広げたのは間違いない。
 九州運輸局によると、2005年の営業登録倉庫(一類、冷凍、サイロ)で福岡県が13棟、鹿児島県が4棟など九州で計21棟が新たに建設され、福岡都市圏を中心に大型倉庫の集積が一段と進んでいる。

九州のグローバル化には
「質の充実」が不可欠

大型物流施設が集まる鳥栖市北部丘陵新都市
 しかし、国内の空港や港湾などの物流インフラは、世界のトップをいくシンガポールをはじめ香港、韓国、中国といったアジア諸国に比べて規模、利用料金、IT化のどれをとっても大きく遅れている。九州でも、港湾や空港が各県ごとに配置され集約化されていない。物流最適化のかなめともいわれるロジスティクスの国内市場規模も、米国の1割といわれる。
 こうした中で、経済成長を遂げる中国を中心にアジア諸国での海外調達、海外生産が国内企業の間で活発になり、物流グローバル化が不可欠な時代に入った。今年1月、九州運輸局が産学官で連携する「北部九州国際物流戦略チーム」を発足させ、同地域の国際港湾の物流戦略に基づく国際競争力の強化や東アジアと結ぶシームレス物流圏の形成などについて、課題やその解消策を検討している。同チームに委員として参加する飴野仁子・西南学院大学商学部助教授は、国際物流発展への打開策について「北部九州は地理的に釜山や上海に近いのは確かだが、地理的優位性だけ強調しても国際物流に優位性が出るわけではない。ハブ港の競争はすでに終わっている。他国のハブ港と競うよりも、釜山や上海とお互いに補完し合うほうが有利」と見る。つまり、規模だけを追っていたずらに「箱もの」インフラを整備するのではなく「自動車や半導体といった産業集積、地域経済と結びついた物流を目指し、量を追うのではなく港湾の積み替えや税関などがスムーズに行えるといったような質のサービスを重視していくことが大切」というのだ。
 北九州市のある大手物流業者は「北部九州はスーパー中枢港湾が福岡と北九州に分かれハブ港づくりが一本化されていない。北九州市内でさえも既存の港湾施設とひびきコンテナターミナルなどの新しい港湾施設とがだぶついており、効率が悪い」と行政の施策に困惑する。規模ばかりを追うのでなく効率性、コスト、ロジスティクスなどで物流企業のニーズに見合ったインフラ整備、九州各地の物流機能を集約する「シームレスな物流構築のための国際物流基幹ネットワークづくり」(飴野助教授)が望まれるところだ。
 さて次ページからは、こうしたグローバル物流の有力なサポート企業を紹介する。

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