2006年9月号154ページに掲載

マンション管理特集

建物の『適正管理』で
資産価値をアップする

■ハウスメイトパートナーズ■大分エージェンシー■太平ビルサービス
 マンション、オフィスビル、ホテル、商業施設。まちに溢れる建築物は居住から仕事、集客と、施設によってその顔を変えて我々の生活を支えている。人間が生きていくうえで欠かすことのできない建築物。それらが適正に運用され、利用者が安全に、安心して利用できるため、施設の維持・管理業務に従事するビジネス・プロパティマネジメント(PM)は今、多方面に広がりを見せている。

増え続けるマンション
競争激化する管理業界

 全国的なマンションの建設ラッシュといわれて久しい。東京など首都圏では、超高層や高級分譲マンションが至る所で建設されており、売れ行きも好調だという。福岡も例外ではなく、2004年に地上27階建ての高層マンション「百道タワー」が竣工。以来、これまで見ることのなかった20階建て以上のマンションが次々に計画されている。そして今年7月、人工島・アイランドシティに42階建ての超高層マンション「ICタワー」(仮称)が着工、08年秋ころ、いよいよ九州にも超高層マンションが誕生する。
 このマンションブームに乗るようにマンションの数は年々増加しており、05年現在で九州7県にあるマンションストックは5650棟、25万1000戸を数える。(国土交通省調べ)増え続けるマンションの良好な居住環境確保のため、01年に施行されたマンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化推進法)は6年目を迎え、新たな局面を迎えているという認識が管理業者のなかにあるようだ。合人社計画研究所の高橋秀樹福岡支店長は「サービスの品質と価値が問われる次元に突入した」と指摘する。
 同法により、マンションの管理を手がける業者は国土交通省への登録が義務づけられた。今年7月現在の九州7県での登録業者は239社、管理業務主任者は3121人と、こちらもマンションの数と比例するように年々増加している。競争に勝ち抜くため、企業は管理に付随するサービスの強化に努めている。具体的には、通常の設備点検や施設の清掃、警備だけにとどまらず、クリーニングやコインランドリー、駐車場管理のほか、ケータリングを行っているところもあるという。
 そうした中で、大京管理が注力するのは「ブランド戦略」。マンション管理業最大手として、「全国に拠点網を持つ、総合的な組織力に磨きをかける」(原昇・大京管理九州支店長)。
 ここでの決めてが「タッチ・ポイント」で、マンションフロントでの受け付けから設備の点検、施設の警備・清掃まで、日常業務で居住者との人間的な触れ合いの場を増やす。居住者のニーズを吸い上げ、サービスを強化する一方で「最大手ならでは」の信頼性や安心感を醸成する狙いがある。
 実際、「居住者と管理会社スタッフ、居住者同士のコミュニケーションが深まることで、コミュニティー意識も高まる」(川崎浩司・穴吹コミュニティ九州支社長)。1棟の建物を区分所有し共同生活を営んでいるという連帯感が地震、台風など自然災時の助け合いや不審者の浸入を未然に防ぐなど、防犯にもつながる。穴吹コミュニティも、全国ネットで培ってきた「実績と経験」で緊急事の対応は極めてスピーディーだ。
 鹿児島市の南日本総合サービス(吉田健朗社長)はホテルやレストランの運営からPFI事業にまで業容を広げている。またセイビ九州は「総合コーディネート力に磨きをかけたい」(森永幸次郎社長)という。集客のアイデア、テナント募集、店舗運営まで、お客さまに対し一歩踏み込んだ提案を続けることで、施設の資産価値を維持したい考えだ。
 さらに7月には、マンション管理会社を対象に、認知症患者への接し方などを学ぶ研修会が全国7カ所で開かれ、マンションで生活する患者へのサービスの方法などが説明された。15年度には250万人に達すると予測されている患者のケアを管理者も徹底することで、マンションに暮らすすべての人が安心して生活できる環境を整えるのがねらいだ。
 このように、マンションの維持管理も通常業務だけでなく、多方面にその枝葉を広げている。東福互光の北方弘相談役が「管理組合から預かった建物の資産価値をどう維持し、今後向上させていくかがポイント」と語るように、施設の価値を高め、利用者にとって有益なサービスを展開することがこれからの施設管理業全体の絶対条件と言えそうだ。

サービスの中身と品質、
価値が問われる時代へ


 6月3日、東京都港区のマンションで起こったエレベーターによる死亡事故は、日本中に大きな衝撃を与えた。以前は04年3月、東京・六本木ヒルズの回転自動ドアによる死亡事故が発生、これにより、回転ドアから通常の自動ドアへの改修工事を行ったビルが数多くみられた。ただ今回はマンション住民が必ず利用するエレベーターでの事故。これまで普通に動いて当たり前と思われていたエレベーターで起こった事故に、利用者は大きな不安に包まれることになる。
マンション管理の現場はハード、ソフトともに進化する

 エレベーター業界にも激震が走った。関係する会社への家宅捜索やエレベーターで起こったトラブルや事故などが、新聞やテレビで連日のように報道された。もし同様の事故が大型商業施設のエレベーターで起こったら―。被害が甚大なものになることは容易に想像できる。サン・ライフの津田佳志社長は「不特定多数の来場者が反復継続して訪れる商業施設の設備は、必ず完璧に稼働しなければならないもの。少しの不具合も許されない」と警鐘を鳴らす。
 マンションとビル、商業施設では、基本的にユーザーの数が異なる。マンションは戸数によって数にバラツキはあるが、そこで暮らすすべての世帯がユーザーになる。もちろん、住民が求める要求は世帯ごと多種多様にあり、企業と管理組合が協調し、双方が合意してから行う業務も少なくない。アーサーヒューマネットの小松輝義社長は「現場のサービスを向上させることも大切だが、管理会社と管理組合との信頼関係の構築が何よりも望まれている」と実感を込めて話す。
 一方でビルは、入居している企業や店舗がオーナーのため、マンションと比較するとユーザーの数は少ない。しかし、マンションより不特定多数の人が施設を利用することもあり、メンテナンスに関する要求は高い。太平ビルサービス(狩野伸彌社長)は、国内に200の拠点、約2万人のスタッフを擁し「防災面の対応や建物のライフサイクルを重視した総合的なマネジメントを行っている」(給エ健悦常務)という。
 またビルには「まちづくり」としての重要な一面も合わせ持つ。大分エージェンシーの高倉哲康社長は「自然や環境、そして都市計画とも一体化させ、共同所有している建物を位置づけるという視点が大切だ」と話す。ランドマークとなるビルから低層のビルに至るまで、あらゆる建築物はひとつの「まち」を形成するうえで大きな役割を果たしており、内装だけでなく外観、外構に至るまであらゆる部分に行き届くメンテナンスが求められている。

FM、新規参入者との
激しい競争に突入

 その意味で、これからは「ファシリティマネジメント(FM)の要素も必要になってくる」という声もある。竣工したビルやマンションを管理するPMに対し、FMは着工前の不動産管理から携わり、施設の設計から着工、完成後の施設の管理、運営を担う。このため、ゼネコンや設計事務所のなかにもFMの導入に向けた動きが本格化している。「ゆりかごから墓場まで」を掲げるFMは、「どれだけ経営に貢献できるか」という考えのもと、インハウス(内装、維持)とアウトハウス(外構)の両面で、中長期的な視点から施設を管理する。
 一方で自治体でも、03年度に地方自治法の改正により指定管理者制度が始まり、公共施設を民間企業が管理、運営できるようになった。実施から3年目を迎え、自治体が制度の対象とする施設も増えてきている。一方で制度の導入を機に、大手旅行代理店などが新たに施設の維持管理業務に参入、実際に業務にあたっている施設もある。
 まさに、PM業界は内部だけでなく外部との競争のまっただ中にあり、すべての企業が競争に勝ち残るための対策を模索している。ただ、三洋ビル管理の石橋幸男会長が「サービスの品質と価値を決めるのは人間」と言うように、最終的には利用者の要求に的確に応えられる企業が生き残ることができると言えよう。
 新たな局面を迎えているPM業界。これからは内部だけではなく、外部との競争にもさらされることになる。そこで勝ち残るためのノウハウや技術はどのように展開されるのか。以下の企業に紹介してもらう。

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