ビジネスの「座標軸」を占うIT
次代市場で“賜杯”を手中にする条件とは
「IT」という言葉が一般化して10年。当初はオフィスで1人に1台パソコンを持ち、ソフトをインターネットに接続、ホームページを立ち上げることといった程度の認識でしかなかった「IT」は、いまや全業務に必要不可欠。事業戦略をナビゲートする指針となっている。その最新動向と近未来の方向性を追う。
効率性と利益率を確保
しながら競争力も追求
企業のIT(情報通信技術、またはICTと表記する場合もある)活用は新たな局面を迎え、3つの側面がクローズアップされている。
まずは、その(1)導入動機と運用形態。これまでは、情報の共有化による業務プロセスの省力化・効率化や、意志決定の迅速化などに焦点が絞られていたのが、企業の内部統制を明確化すると同時に商品・サービスの品質向上と営業強化を進めることで、顧客満足度を拡大させるのを重視した導入例と運用法を散見するようになった。
企業の内部統制が着目されているのは、2009年までに予定されている日本版SOX(企業改革)法の施行がきっかけ。同法のもとでは財務会計から販売・購買・在庫管理などの財務諸表を適正に管理し、信頼できる内容であることを証明できなければ取引関係に影響を及ぼす。株式公開企業では「公的かつ公正な審判」にもとづき、場合によっては上場廃止に追い込まれる可能性もある。
デジタル技術は、2006年の干支よろしく「ドッグ・イヤー」で進歩する
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必然的にニーズが高まるのが、ERP(統合業務パッケージ)で「中堅・中小企業の大半ではITの基盤整備は終わり、次の段階としてERP導入を推進している」(城尾芳美・住商情報システム理事九州支社長)展開が際立つ。
もちろん、大容量・汎用型のパッケージではなく、投資額に見合う効果が見込め、事業組織や業務内容など「近未来のビジネス環境の変化に即応できる」(小玉修市・ソラン九州社長)仕様が選ばれるのは、いうまでもない。
エコー電子工業が展開する「携帯電話伝言メールの代行サービス」では、「お客さまと営業マンとの緊密な連携を高めることで、相互の信頼関係も深めていく」(小林啓一社長)運用環境を目指す。
IP(インターネット・プロトコル)電話の導入企業が増加するなか「音声・画像処理などでの独自技術を生かして」(川浪義光・アバール長崎社長)システムの付加価値を高める動きも見逃せない。 ディー・クルー・テクノロジーズ(石川明彦社長)は大手メーカーを取引先にアナログ技術に特化して、世界最高レベルのLSI製品を開発、北九州市ひびきののLSI拠点の中核企業として存在感を放つ。総合物流業、高光産業が運営する会員制情報サービス「NCにっぽんドットコム」では地場中小企業に「情報の共有空間を提供し、相互にメリットをもたらす」(妹尾八郎社長)うち、“強力な支持者”が出現し、参加企業がアップ中だ。
一連の情報化投資は「効率と利益は重視しながらも、市場競争力を高める」(池田正志・扇精光社長)方向にシフトしている。ここにはデフレ経済から脱却、景気浮揚の動きを受けて、事業マインドが「コストダウンによる生き残り戦術から、積極投資を通じた勝ち上がり戦略へと推移してきた」(大津信一郎・富士通南九州システムエンジニアリング社長)経緯が浮かび出た。「ICTはあくまで手段であり、目的は経営・実務の改善と向上にある」(高木宏・ネットワーク応用技術研究所社長)ことが実感された格好だ。
ただ、こうしてITがビジネスの根幹に入ってくる一方で、(2)セキュリティー(個人情報保護)と(3)コンプライアンス(法令順守)への取り組みがあらためて問われていることも事実。
情報保護と法令順守に
経営改善が同時進行へ
大手損保、人材派遣、マスコミ…。いまやファイル共有・交換ソフト「Winny(ウィニー)」やコンピュータウイルスによってコンテンツ(情報の中身)が違法配信されたり、機密データが外部流出する事件は枚挙にいとまがなく、「これまで以上に情報のセキュリティーと取り扱いについて、重い社会的責任と早急な対応が求められている」(佐藤勲・NECソフトウェア九州社長)。
政府が策定する行動計画「セキュア・ジャパン2006」では情報漏えいの恐れを事前に感知して、問題のソフトを自動停止させるVM(バーチャルマシン)など約140の施策を盛り込んだ。 実際、顧客台帳や帳票類などが持ち出され、悪用されると、日常業務に支障を来すだけでなく、ユーザーから取引先まで実害が及び、現状復旧から関係修復まで膨大な時間とコストがかかり、深刻なトラブルから訴訟にまで発展すれば、企業が社会と市場から受ける制裁とダメージの重大さは図り知れない。こうして情報が漏れる原因は、せんじつめれば2つ。
ITの「活用格差」が、そのまま「企業格差」につながる時代だ
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システムを扱う人間の「わざと」か「うっかり」に尽きるが、「意図と過失のいずれであっても、人には出来心もミスもあり得るとの前提で」(瀬戸口万亀男・日本アドバンス社長)臨む必要がある。サイバーテロやスパイウエア(情報収集プログラム)、フィッシング(ネット詐欺)など新手の脅威への「水際対策は、性悪説」で進めたほうが近道かも知れない。
「攻守平行」で即応して
新たな成長ステージに
こうして、企業のIT活用は事業拡大をにらみながらも、情報に対するルールとモラルを徹底、いわば「攻守平行で進められる」(浦上昭・エクシーズ社長)なか、冒述通り新たな局面に達している。
IDCジャパン(東京都千代田区、竹内正人社長)の予測統計によると、IT市場は向こう4年間まで年間平均1.8%で成長すると見込まれる。ただし、この間でITのサービスとパッケージ、ハードともに飽和化、ITベンダーの優勝劣敗の構図も明快になると思われる。さて、その格差を決めるもの、そこでのブレーク・スルー(突破口)はどこにあるのか。
「答え」は以下のページにある。
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