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企業の採用担当者による座談会
「自分で問題を見つけ解決していく社会人に」

矢頭 徹氏
やずや
専務取締役
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田中 ■司氏
イオン九州
人事教育部長
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田村 渉氏
カンサイ
総務部次長
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企業の業績回復に伴い、採用人員拡大や採用が復活するなど新卒者にとってかつてない好環境になっているようだ。企業の新卒採用予定数はバブル期を上回るとさえいわれ、ある大学ではこれまで求人が一度もこなかった企業から募集案内が舞い込み、就職担当者を驚かせている。
人材確保を担う人事担当者に、採用人員、採用のポイント、入社後の人材育成、大学へ望むことなどを率直に話し合ってもらった。(ホテル日航福岡にて)
−景気は確かな回復基調を示しており、各大学の就職課にはバブル期を上回る数が来ていると聞いています。各社の新卒採用予定数、方法、基準などをお聞きかせください。
田中 イオン九州は今年の4月入社で60人を採用します。また来年は今年を上回る70人を計画しています。採用は筆記試験、適性検査を行い、それに合格した方が1次面接、2次面接、役員面接へ進み、これを経て内定という流れになっています。特に今年はコンピテンシー面接を新たに導入しようと考えています。これは学生時代に何をやったか、どういう行動をとったかなどを重点的に見る面接です。また2次面接は店長、部長クラスが担当しますが、その時には30代で幹部になれる人材を選ぶようにしています。
採用にあたり大学や学部は全く関係ありません。これまでイオングループは多くの合併を繰り返してきましたから、実にさまざまな方がいます。ですから新卒採用もあくまで人物本位で、日本人だけでなく中国籍の方も採用しています。外国籍の方の採用をうたっている企業もあるのはありますが、実際に採用しているのは少ないのではないでしょうか。
田村 私どもが採用する今年4月の入社は男性が15人、女性が8人、合計23人です。女性については基本的に退職者補充の事務職ですから、実質は男性営業職15人ということになります。来年の採用予定数は営業職20人で、イオンさんと同じく、学部学科は関係ありません。採用までの流れは会社説明会、次に1次面接、2次面接、そして最終の役員面接となります。今年は2月末から第1回の会社説明会をスタートし、優秀な人材確保に本腰を入れて取り組んでいます。
実は昨年から就職のコンサルタント企業を導入するなど、採用の仕組みを大きく変えました。なかでも最も大きく変えたのは、会社説明会に社長自らが出席し、学生に直接カンサイという企業をアピールするようにしたことです。これは当社の大きな目標である「設備の総合商社」という将来を見据え、10年後に100営業所を達成するためには何より優秀な人材確保が不可欠であるとの思いからです。
また採用面接時には若手の社員や幹部を担当させています。説明会では入社4、5年目の若手社員が中心となり、彼らの感覚とイメージで話すようにしているので、学生には親近感を持たれ、なかなか評判がいいようです(笑い)。
矢頭 当社の今春内定者は9人、来年の採用は全く決めてない状況です。とはいっても、その年の学生さんの資質を見ながら最低5人、いい人材がいれば15人ぐらい採用したいと思っています。採用に関しては男女均等に行っていますが、女性が7割、男性3割と女性が多い職場になっています。そのため入社試験を受ける方もどうしても女性が多くなるようです。
当社は人材確保のため、大学の授業やゼミに積極的に出向き、学生にやずやを意識してもらえるようアピールしています。おかげで会社説明会は2000人以上が応募してきます。それを50人ずつに分け、本社やコールセンターなど社内を案内しながら、業務内容を説明します。これがだいたい4時間ぐらいになるので、終わるともうクタクタです。そして最後にアンケートを取るぐらいです。そのうちの6割から7割がエントリーでも残りますね。
1次試験は筆記はなく面接だけです。ただしプレゼンテーションをさせたり、さまざまな課題を与えます。それから2次、3次へと行くわけですが、途中から社長も入り、最終は5次面接で決定し、6次で内定となります。
田村 そりゃーずいぶんと長いですねえ。
矢頭 ええ、次の面接へ進む中で、インターンシップを経験させるなど多方面からその人を判断するようにしています。もともと当社は社員数60人の会社ですし、総務は3人しかいませんから、それぞれが多くの仕事を抱えてやっています。そこでこういった面接方法を行うようになったのですが、おかげさまでここ5年間で内定辞退者は1人もいませんし、入社3年未満のミスマッチもありません。
先ほどイオンさんが中国籍の方を採用している話が出ましたが、当社もスリランカ人を採用しています。ただし外国人で日本語を話せるではなく、日本語も話せるというレベルでないと通用しません。ビジネスレベルになると相当高いものが要求されますし、ひとりの人間としてどういう将来性があるかを見極める必要がありますね。ですから外国籍であっても差別もしないし、優遇もしないという感覚です。
−各社それぞれの特徴があり、なかなかユニークです。採用において最も重視している点はなんでしょう。
田中 我々はお客さま相手ですから、お客さまの視点で考え、自ら行動できる人材を採用しています。キーワードで言うと“オーナーシップ、現場主義、チームワーク”この3つです。
オーナーシップを簡単に言うと、自分で問題を見つけ、解決に向けて自分で取り組むということです。そういう人材を採りたいですね。私は面接時、学生に対し、各店舗を回り自分の目で見てきてください、と伝えます。学生の視点ではなく、お客さまの視点でとらえられるかがポイントです。
田村 当社の場合、取り扱っている商品は、電気設備・設備資材ですが、業種が卸売業なので文系出身者の方が少し多くなります。当社も完全な実力主義ですよ。当社はこれまで野球、柔道、サッカー、相撲など体育会系出身者が圧倒的に多く、それはそれでいい面もあったのですが、今後を見据え10年後の100店舗を任せられる人材獲得を主眼に置いています。この大きなポイントは“自分から動くことができるかどうか”です。
矢頭 その人がこれまでやってこられたこと、それは大事にしたいのですが、当社が一番大事にしているのは“素直かどうか”です。人生20年でできたもの、30年でできたもの、そして40年のそれとは自ずと違うはずです。ですから経験を経た周りの人の話を自分のものと置き換えられる社員は強いですね。それと前向きかどうか。何か問題があったとき、ぶつくさ文句ばかり言っているのか、あるいはそれを解決しようと取り組むかは大きな違いです。
注意されたとき、ああ悪かった、それはそうだな、と素直に納得できる人間でないと人数の少ない当社ではやっていけませんね。面接時はこれを最も見ますし、いろいろ多面的な面接を行ったり、課題を多く出すことで正面から問題に取り組むのか、逃げるのかが分かります。
田村 よかったらその一つを教えていただけませんか。
矢頭 うーん、本当は言えないんですけど(笑い)。去年は「あなたが最近感動したことは」でした。この表現方法は全く自由です。レポートに書く人もいれば、パソコンで作る人もいる。いろんな出し方があります。数回しか会わない面接の中で当社もできるだけ相手のことを知りたいし、相手にも当社のことを知ってほしいと思います。ですから学生時代に何をやっていたかは確かに大事ですが、それを踏まえた上で、将来何がしたいかをはっきり言える人を採用したいですね。ですから受け身の人はまず厳しい。またそういった人は当社を受けないと思います。
−最近は転勤を嫌がるケースが多く、それを理由に内定を辞退するケースも出ていると聞きます。各社の場合はどう対応されていますか。
田中 当社はイオン九州ですから九州内の転勤が大前提になりますし、イオングループ内の人材交流などもあります。転勤することで新しい技術や知識を得てほしいと思っています。また海外転勤もありますので、前向きな人材は国内でも海外でもどこへでも行きますよ。だから転勤がどうのこうのと言ってる学生は始めから採用しません。
現在、イオングループは九州各地に出店しているため、だいたい2、3年で転勤となるでしょう。これを自分のスキルアップに役立つととらえ、喜んでするかどうかだと思います。
田村 当社も九州内に26カ所の営業所がありますので、どこに転勤するかは分かりません。ですから入社時に希望勤務地を指定したり自宅通勤は認められません。なかにはイオンさんと同じく転勤のことを聞いてくる学生もいますが、そういった人はだいたい人物が小粒ですから、結果的に選考には残りませんね(笑い)。それと最近の傾向で親御さんの影響が大きいですね。お前は長男だから面倒を見てくれと頼まれるようです。
田中 まあ少子化ですから、親御さんの対応もある意味仕方ないかなとも思います。
矢頭 確かに親御さんの影響は大きいですね。しかし親御さんが自分の生活を守るために子どもの環境を束縛するのはどうかと思います。当社は福岡市に本社があるので転勤はありません。しかし当社の社員で転勤がないから当社を選んだという者は一人もいないと思います。そういった考えで受けた者は途中で必ず脱落していますね。もし当社に転勤があるとしても喜んで転勤すると思いますよ。
私も前職で各地を転勤したのでよく分かるのですが、転勤は人間のスキルアップに欠かせないのです。それなのに今の学生さんは転勤を断る理由がいい加減な甘えの場合が多い。面接時に、いろいろな所へ行き、たくさんの勉強がしたい、といえる学生の方が絶対いいですよ。
田村 おっしゃるように転勤は自らをスキルアップさせる一手段であるととらえてほしいですね。これは笑い話ですが、内定が出ても、彼女と離れたくないという理由で断ってきたケースもありました(笑い)。
田中 まあ今は新卒者についての話をしていますが、若いからどこへでも転勤するという意志が強くても、年齢を重ねると親御さんの面倒見なくてはいけなくなったり状況が変化してきます。こうした状況に対応するために当社では転居停止制度、エリア限定のコミュニティ社員制度など状況に応じてサポートする制度を整備しています。
−各社の新入社員教育、研修など人材育成のプロフラムはどのようなものですか。
田中 イオングループではまず社会人としてのコンプライアンスの重要性を徹底教育します。日ごろから、法令などを遵守してルールを守った活動を行うように、社員全員に徹底させます。そのためイオン行動規範を設けています。またケースメソッドといい、 現場で起きたことを徹底して話し合います。話し合いの中で今後、行動すべき点などを確認します。ケーススタディは解答があるのですが、ケースメソッドは解答はありません。また商人としての基本応対、お客さまに対して失礼はないかなどを徹底して教育します。
田村 当社は内定の段階から研修を開始します。9月に第1回目を行い、3月まで合計6回行いますが、その間、仕入れ先の方に話していただいたり、交通安全指導などを実施します。こうして4月1日の入社に合わせモチベーションを最大に上げるのです。内定は出ても入社まで時間があるので、学生が不安になっているようです。そこで毎月、研修を行い不安を取り除くと同時に、毎回の研修で同期の連帯感が生まれ、自己啓発も高まります。
入社後は2週間、あいさつを徹底します。とにかく大きな声を出すことを訓練する。その後は現場での実践教育となりますが、あとは彼らの努力や資質になります。
矢頭 当社は内定が出てから多くの課題が出されます。しかしこれも面接時の大変さに比べたら大したことないと言われますが(笑い)。またリクレーションや忘年会、お客さまを呼ぶイベントにスタッフとして参加するなどとにかく会社の雰囲気を感じてもらいます。そして入社式の前日、3月31日に配置が決まります。これは上司が自分がほしい人材を指名しますが、指名した以上、育てる責任があるのでみんな真剣です。入社後は定例会で教育担当者がどういった教育を行っているかなど教育担当者がチェックされます。担当者は入社3年目の者が中心ですが、教えることで教える方も育ちますね。まさに人が人を育てるのです。
−入社したもののミスマッチやコミュニケーション能力の不足などが多いようです。最近の学生気質の変化などは感じますか
田中 いやー、今の学生はまじめですよ。
田村 確かにそうですね。面接するとレスポンスは非常に早いですよ(笑い)。しかし面接の時にまじめで素直というのはいいのですが、ほかの人とはなにか一つ違う切り口があるとおやっと思いますね。これまで多くの学生を見てきましたが、実は去年から面接のやり方を変えました。あまり質問攻めにしないようにし、とにかくしゃべらせ、それを観察するようにしました。特にグループでディスカッションさせるとよく見えてきますね。
田中 今はインターネット時代ですから、どういう質問をされたか、討論の内容などが瞬時に流されます。こちらの手も見え見えです(笑い)。
矢頭 学生には右手でイスを下げるのか左手で下げるのかなどそういうことを気遣うのではなく、自分をどう表現していこうかというように考えてほしいですね。
田中 会社のパンフレットを読み込んでくる学生は多いですよ。しかしどこの店に行きましたか、と尋ねると、これを全くやっていない(笑い)。入りたいと強い意志のある学生はちゃんと現場を確認していますよ。
矢頭 当社は女性社長なので女子学生の就職希望者が多いのです。そこで社長が商品サンプルを試してみたのか聞くと、これをやっていない子が案外多い。そうすると社長は怒りますね。「あなたたちは結婚するのに相手も知らずに結婚しないでしょう。相手を見ないで判断する。そういうことをやるから女性は社会でなめられてしまうのです」って。女性が女性に説教するのでかなりの説得力がありますよ。
−大学に望むことや御社のアピールがありましたらお聞かせください。
田村 今の教育はカリキュラムに縛られているような気がします。もっと人間教育というんでしょうか。そうしたものをお願いしたいですね。実は学生たちにある質問を投げ掛けたのです。それは道端にクリップが落ちていた。するとあなたはどうしますか、という単純な質問です。答えとしては拾う、拾わずに無視する、誰かに拾わせるなどがあります。しかし私が一番驚いたのはどうしますか、の問いに「分からない」という答えがあったことです。
田中 確かに指示待ちが多いですね。言われればきちんとやるが、自分ではできない。今後は自分で考え自分で行動することが大きなテーマのような気がします。大学の教育にもこうした観点から取り組んでもらえればと思います。
矢頭 この前、ある大学教授とお話しした時、こう言っておられました。海外旅行へ行った時、現地でホテルに電話し、予約を入れることができる学生が案外少ないと。学生時代はアクションが大事なのですが、パッケージ旅行の経験しかないのです。そこでそのゼミでは旅券しか持たせずに、あとは自分で予約を入れさせるようにしたそうです。本来これは中学生レベルの話かもしれませんが、これができない子があまりにも多すぎます。また大学といっても法人ですから、学校全体と就職課が一体となっている大学とそうでない大学の違いははっきり出ますね。学長が就職に対し意識が高いと就職課は自由に動いているが、学長の理解がないと就職課は大変苦労している。
また学生の頭の良さと社会人の頭の良さは違っていて、前者はインプットの頭の良さで、後者はアウトプットの頭の良さというんです。ただインプットがなければアウトプットもできないわけですから、学生の間にどれだけインプットできるかが大事なことだと思います。就職活動って言うのはインプットの時代の中で、唯一アウトププットを出さないといけない時期だと思います。だからみんな苦労するんだろうなあと思います。
田中 よく初任給で企業を選ぶ学生がいますが、初任給はあくまで瞬間です。そのあと自分の力をどれだけ発揮し、活躍の場を広げていくかが大事です。言い換えれば自己育成責任です。自分を伸ばしたいと思うなら、イオン九州はいくらでも伸ばせる教育環境は揃っています。入社から最短6年で幹部クラスまで行けるチャンスがあります。
田村 安定志向、成長志向、さまざまな志望動機があると思いますが、自分自身のために働いてほしいと思います。それが会社の発展へつながります。当社の代表はズバリ「社長の座を狙え」と言います。そのために責任者となり部下を育て成長したいと強く願う学生を募集しています。
矢頭 まず仕事って決してつらいものじゃないぞって言いたいですね。今まで経験したことがない喜びを経験でき、その上給料までもらえるのだから、本当にありがたいと思います。学生にしてほしくないのは自分の可能性を自分で否定してほしくないですね。自分の大学のレベルだったらこれぐらいの会社だろうとか、初めから2番をねらっている人はいないでしょう。1番を狙った結果が2番だったというのとは違います。もっとできると自信を持ち、仕事に取り組んでいってほしいと思います。
今日はどうもありがとうございました。
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