2006年3月号142ページに掲載
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特集 人材ビジネス

「法令順守して派遣社員を大切に」

福冨 洋一
(厚生労働省福岡労働局 職業安定部
 需給調整事業課主任需給調整指導官)


“偽装請負”を厳しく指導

 顧客企業に自社の労働力をもってサービスを提供する人材ビジネスは、「人材派遣」と「業務請負」の2つに大別されます。さらにこの人材派遣にも2種類あり、「一般労働者派遣事業」と「特定労働者派遣事業」です。この中で最近特に目立つ動きが、人材派遣の特定労働者派遣事業の伸びで、それには理由があります。
 その前にまず、人材派遣と業務請負の違いですが、それは現場での労働者に対する指揮命令権にあります。どういうことかと言うと、派遣社員の場合は派遣先の企業が指揮命令をしますが、請負社員は、請負会社が現場に現場責任者を送って、その責任者が指揮を執るもので、進捗や残業の管理なども請負会社が責任を負うことになっています。
 そこでこのところ問題となっており、私ども福岡労働局はもちろん全国の労働局で厳しく指導させていただいているのが、いわゆる“偽装請負”です。例えばメーカーの工場などに請負社員を送り込んでいる請負会社が、現場責任者を置かずに、注文主である工場側の社員が指示・命令を出しているようなケースが挙げられます。
 注文主の工場側からすれば、派遣社員のように直接指示することで使いやすく、請負会社の方は、現場責任者を置くためのコストがかからないなどのメリットがあります。ところがそこで働く請負社員にとってはたまったものではなく、本来、自分の身を守ってくれるべき現場責任者がいないということになれば、注文主の言いなりにならざるを得ません。
 それで冒頭にお話をした、特定労働者派遣事業が伸びているということなのですが、こうした“偽装請負”に対する私どもの厳しい指導、また、人材を受け入れる企業側でも、法令順守に基づいて適正に業務を行うという意識がかなり浸透してきた結果、特定労働者派遣事業の伸びになったのです。
 つまり、これまで請負社員を派遣社員のように偽装して扱ってきた企業を含め、受け入れ企業が法律を守って、指揮命令が行える派遣形態への切り替えを進めているのであろうと思われます。
 ちなみに一般労働者派遣事業は、登録型であり、臨時・日雇いの労働者を派遣する事業。一方の特定労働者派遣事業は、常用雇用労働者だけを労働者派遣の対象として行っているものです。

いい事業所は大小関係なし

  私どもの重要な仕事の1つとして、事業所に対して、訪問等により指導を行う定期指導を行っています。現在、この定期指導は「形から入る」ということをテーマに実施しており、法定書類の詳細なチェックを行っております。指摘内容には濃淡があるものの、不備のある書類が目立ち、中にはよくこれで派遣事業をやっていたなという事業所さえあり、問題のあった事業所には原則その場で是正指導書を交付しております。
 これまでの経験からすると、きちんとされている事業所とそうでない事業所というのは、会社の大小には全く関係がありません。会社のスタンス、姿勢がその差になって表れています。
 また、まじめにやっている事業者がばかを見るような、一部の不届きな事業者による行為もあり、それが業界全体の足を引っ張り、イメージダウンをさせています。こうした事業者は労働者をモノと一緒にしか考えておらず、当然非常に厳しい対応をさせてもらっています。

増える派遣社員からのクレーム

 昨今、大変困っているのが、派遣社員から持ち込まれるクレームが非常に増えていることで、これは派遣元に対するクレームが大半ですが、派遣先に対するものもあります。お話を伺っていてまずだいたい共通しているのが、派遣先で働く中でいろいろと納得できない面が出てきた時、それに派遣元責任者が対応をしてくれないというものです。
 もともと派遣法の中では必ずそうした責任者を置いてもらうようになっており、その方々が対応しないといけないようになっていますが、それをされないので、私どもの所に持ち込まれるわけです。それできちんとした対応をするよう責任者に指導しているところです。中には事実とは異なる内容の申告が労働者からされる場合もありますが、やはり派遣元がきちんと対応していないケースがほとんどです。
 そして苦情の中身で多いのが、就業条件の明示をきちんとされていないことから起因するものです。派遣の場合はどうしても就業する場所や時間、それに指揮命令者などが異なってきますので、どういった業務で、どの場所で、どの指揮命令者の下で、どのくらいの期間働くのか、といったことを必ず正式な書面で渡してくださいとお願いしているのですが、苦情になるケースというのは、その内容が非常にあいまいか、もしくは出していなかったという場合が多くを占めています。
 もう1つ苦情で目立つのが、いわゆる事前面接に関するものです。派遣法では、派遣社員を雇用している派遣元が、顧客からのこういうスキルを持った人材が欲しいという要望を聞いて、それに見合った人材を選定して送り込むという形態を取る必要があります。
 ところがそうした手続きをせずに、禁じられている事前面接で、顧客に派遣社員を選ばせるというケースが出てきています。悪質な場合、私どもではコンペと言っていますが、複数の派遣社員を呼んで面接をして選ぶやり方です。
 一方、事前打ち合わせというのがあり、これは特定の派遣社員が派遣されることが決定した後に、就業場所の確認や指揮命令者との顔合わせ、業務打ち合わせをするもので、自らの判断の下に行われる場合には問題はないのですが、本人が納得せぬままいきなり行かされた、という苦情も結構寄せられています。
 顧客の立場が非常に強く、顧客の言うことは絶対という、事業者の厳しい面があるのは私どもも承知していますが、やはりどうしても労働者というのは弱い立場にあるというのを常に念頭に置いて、労働者側の立場でものを考えて欲しいと思っています。

派遣はますます重要な役割を

 派遣先の問題では、決められた期間を超えて派遣社員を就労させているケースが、間々見受けられます。派遣には政令で定める26業務というのがあり、これらについては特別な取り扱いがなされていて、派遣期間に制限が設けられていませんが、その他の業務は原則最長3年までです。ところがこの26業務に含まれる業務でもないのに、3年を超えて続けさせている企業が見られ、これも違法行為となりますので、派遣元、派遣先、双方に指導しています。
 やはりきちんとされている事業所は、派遣社員も大事にされており、教育の面でも熱心です。そのような事業所は人材の確保に比較的苦労されていないようです。この派遣という形態は、利用のし方によっては非常に利便性の高いものであり、これからも日本の発展にますます重要な役割を担っていくであろうと思われます。
 それだけに派遣は派遣、請負は請負らしく、区分基準に則ってもらうなど、法令順守でやっていただく必要がありますし、弱い立場にある労働者の方々をぜひ大切にしてあげて欲しいと思います。もともと日本には多くのまじめで勤勉な労働者がおられますので、大事にすれば一生懸命応えてくれるはずです。

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