九州・沖縄ホテル特集 2006
洗練された大人の空間で過ごす
ワンランク上のホテルライフ
一番身近な心と体のオアシス 自分だけのラグジュアリィ
各都市の今を映し出す鏡であり、日常に寛ぎと安らぎを与えるオアシスであり続けるシティホテル。時代の移り変わりとともに利用者のニーズが深化する中、一層強く問われているもの。それは変化への“即応性”である。東京で開業が相次ぐ外資系最高級ホテルの影響もあり、九州・沖縄でもオンリーワンの取り組みでブランド力に磨きをかけるホテルが増えてきた。景気の回復を受けて、近年沈静化していた宿泊特化型ホテル建設の動きも顕在化するが、高いクオリティーの追求に活路を見出そうとしている。
景況感の回復から光明
質の追求で差別化図る
ホテル業界は、その時代の景況感を映す鏡である。それは、「景気が後退すると最初に影響を受け、回復の恩恵を受けるのは一番最後。それが当業界の宿命」(福岡市・ホテル支配人)という発言からもうかがえる。そうしたなか、各県によって多少の温度差はあるものの、特に福岡都市圏では「景気の回復基調が、ようやく実感できるようになってきた」という発言が増えてきた。実際、宿泊稼働率の上昇または堅調な推移、料飲部門の客単価および売り上げ増など、対前年比で業績を伸ばしているホテルも少なくない。
厚生労働省の発表によると、04年3月末時点のホテル・旅館客室数は、九州7県では対前年比ほぼ横ばいで推移。90年代後半から00年代前半にかけて客室数を押し上げる要因となった宿泊特化型ホテルの開業は、この間は一段落している。ただ、景気の上向きに歩調を合わせるように、ここにきて新たな動きも出始めた。例えば福岡市では、米国生まれの未来型ホテルを志向する「スリープイン」の九州3カ所目(国内5カ所目)が今年3月、東区に開業する。外食チェーンのロイヤルホールディングスも、市内2カ所目となる「ロイネットホテル」を建設する。開業予定は07年5月と1年以上先だが、市営地下鉄七隈線「天神南駅」近くのロイヤル天神店跡地という好立地条件。加えて、客室は通常より広めに設定し、内装も高級感を打ち出すなど他のビジネスホテルとの差別化を図る方針という。
こうした動きを前にしても、既存のシティホテルに焦りの色は見られない。それは、客室数の過剰感から招いた00年代前半の低価格競争時代を、「宿泊特化型では提供できないシティホテルならではのクオリティーの追求」(福岡市・ホテル社長)で乗り切った経験があるからだ。また昨年、東京では、コンラッド(7月)やマンダリン(12月)など外資系最高級ブランドホテルが相次いで開業。これに今春のリッツカールトン、今夏のペニンシュラが続く。「この動きは、主要な地方都市にも同時的に影響を与える。チェーンホテルには、時代のうねりに応えられるようブランド力を高めることが重要」(ホテルオークラ福岡・徳安弘明社長)という側面もある。
一方、今年8月に全面改修を終える「JALリゾート シーホークホテル福岡」には、福岡はもとより九州一円のホテル関係者が高い関心を寄せている。新生シーホークのコンセプトは、『「海・光・水」を取り入れた開放感溢れるアーバンリゾートホテル』。客室数では国内3番目の規模を誇る大型ホテルの再出発が、どんな影響を与えるのか注目される。
宿泊特化型との差別化
模索し始めた地方都市
「ビジネスホテルとのボーダレス化」が指摘される地方都市の場合、福岡とは多少様相が異なる。背景には、「福岡ほど市民レベルでのホテル活用が多様化しておらず、宿泊部門のウエートが高くならざるを得ない」(熊本市・ホテル関係者)というお国事情がある。
観光客および入り込み数の増加が続く鹿児島と沖縄では、新規参入組と既存ホテルとの顧客争奪戦が続きそうだ。やや鈍化したとはいえ、04年3月の九州新幹線の部分開業効果が続く鹿児島。昨年11月には、県内一の繁華街・天文館に客室数351室の大型ビジネスホテル「サンデイズイン鹿児島」が完成した。新幹線の部分開業以降4棟目。増築分も含めると、天文館の客室数は開業前より1000室以上増えたことになる。
観光産業が好調な沖縄。今年は神戸、鹿児島、新北九州の3路線6便(併せて約55万席)が新設されることから、入り込み客数は年間565万人(対前年比18万人増)を見込む。こうした動きから、05年だけでも9ホテルが新たに開業し、客室数は2200室も増加した。開業ラッシュは今年も続き、ホテルJALシティ那覇(6月開業予定)など9ホテル(約1400室)が加わる。ここ数年、宿泊特化型ホテルの建設ラッシュがもたらしたのは、既存ホテルとの低価格競争だった。この傾向は一部で残るものの、ここにきて新しい動きもある。その要因が、県北を中心とするリゾートホテルの開業である。これと合わせて、既存のリゾートホテルでも「癒やし」や「快適性」をうたい、独自路線で他ホテルとの差別化を図る傾向にある。一方で、ホテルスタッフの人材不足やサービスの質の確保など、ホテルのブランド力を担保する部分が新たな問題として浮上してきた。
02年から03年にかけて宿泊特化型ホテルが相次いで開業した宮崎。客室数の増加は沈静化しているが、ホテル数は微減。ホテル間競争の継続により、廃業に追い込まれるホテルが依然としてあることを示している。他方、宮崎を代表する2つのホテルでは独自ブランドの確立が進む。宮崎観光ホテルは、料飲施設・内容の改修を進めるほか、婚礼・宴会部門では好調を持続している。フェニックスリゾートでは、滞在型施設「ラグゼ一ツ葉」で新たな取り組みを開始した。それが、客室の利用権を週単位で提供する「タイムシェアリング商品」だ。フィットネスクラブの無料利用、フェニックスカントリークラブや温泉施設「松泉宮」などの優待料金での利用といった同社ならではの付加価値をつけて長期客の取り込みを図っている。こうした長期滞在型プランは、いわゆる団塊の世代のリタイアで市場の拡大が見込めることもあり、他ホテルでも今後増えることが予想される。
少子化による数減少も
ホテル婚回帰が鮮明化
「ホテルのグレードが大いに効果を発揮する分野」(グランド・ハイアット・福岡・西川克志総支配人)。それが婚礼部門である。顧客ニーズの多様化を受けて、ハウスウエディングやレストランウエディングなど新進系の婚礼業者が数年前から登場。一時期、福岡都市圏には20を超える“新興勢力”がいたが、すでに一部では淘汰が始まっているという。その要因は「シティホテルは専門スタッフをそろえ、挙式カップルのあらゆる要望に応える体制が整っているため」(同)だろう。ある結婚情報誌のアンケート調査によると、結婚式会場はホテル4割、専門会場3割、ハウスウエディングやレストランウエディング1割。ここ数年、この割合に変化は見られないという。
これとは別に、婚礼業者間の競争が激化する最大の要因として少子化がある。98年前後のピーク時には年間9000組ともいわれた福岡都市圏の婚礼件数。「07年には7000組程度にまで減少。15年には5000件を割り込む」という見方もある。それだけに、ホテルにとっては魅力ある婚礼プランの提供やハード面の整備の重要性が一層増してくる。
半面、市場の縮小という問題を前にしてもホテル関係者に焦りの色は見受けられない。それは、避けられない問題に対する諦めではない。むしろ、ホテルウエディングが主流であり続けるという、婚礼市場激化の中で得た絶対的な自信すらうかがえる。それは、「ホテルならば出席者数や予算、スタイルなどを考慮して、様々なプランを最高の形で提供できる」(福岡市・ホテル支配人)からだ。つまり、「新興勢力の長所を認めてホテルの独自性を加え、より優れた商品を提供できる安心感」(同)が今後、一層生きてくるというわけだ。
一方、複数のホテル関係者が事業化の可能性を指摘するのが、社葬や偲ぶ会といったホテル葬だ。すでに関東や関西では複数のホテルが実施しており、福岡市でもホテルによっては問い合わせがあるという。すでにプラン化など具体的に動き始めているホテルもあり、今後の動きが注目される。
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