これからが正念場
メーカー間の生き残りをかけた戦いがスタート
新聞、雑誌、テレビなどマスメディアの注目を浴び続けた本格焼酎も、ここへ来て動きが沈静化、決して安閑としてはいられない状況にある。とはいえ酒類市場の中心であることに変わりなく、
今後の業界動向に多くの注目が集まっている。競争が本格化し、正念場を迎える九州の本格焼酎はどうなるのか。
■雲海酒造/■薩摩酒造/■田苑酒造/■濱田酒造/■大口酒造/■白金酒造/■知覧醸造
■白露酒造/■指宿酒造/■長島研醸/■田崎酒造/■花の香酒造/■玄海酒造/■西吉田酒造
■老松酒造/■壱岐焼酎協業/■高橋酒造/■繊月酒造/■光武酒造場/■研醸/■窓の梅酒造
■紅乙女酒造/■長崎大島醸造/■メルシャン/■宝酒造
|
ブームが一段落 蔵元の2極化が進む
ここ数年、異常ともいえる焼酎人気が続き、平成15年度(平成15年7月〜同16年6月)、九州各地の蔵元は大きく出荷量を伸ばし、過去最高の出荷量を記録する蔵元もかなりの数に上った。平成15年度の酒類消費数量(国税庁統計年報告)(表)によると同年度の本格焼酎の消費量は43万4785キロリットルで、前年に比べ7万455キロリットルの増加となり、19.3%アップという驚異的な伸びを示している。かつては酒の代表だった清酒やビールが年々落ち込んでいるのを尻目に 、焼酎の一人勝ち状態が続いている状況だ。
特に本格焼酎はおしゃれで健康的な酒として、年齢層を問わず幅広い層から支持されているのが特徴だ。飲食店では本格焼酎の品揃えが売り上げを左右するとあって、手に入れるために狂奔する姿があちこちで見られたほどだ。また本格焼酎が飲まれている地域を表す乙類前線は首都圏を越え、清酒や甲類焼酎が強いといわれる東北、甲信越、北海道にも徐々に浸透している。
3回にわたる増税を乗り越え、今、まさにこの世の春を謳歌する本格焼酎だが、昨年あたりから少しずつ様相が変わりつつあるようだ。平成16年度の統計はまだ発表されてないため、詳しい数字は分からないが、九州各地のメーカーの話を総合すると、品不足のため出荷調整を続けていた蔵元が通常の出荷ができるようになってきているという。特に鹿児島、宮崎などのイモ焼酎を製造している蔵元では酒販店や消費者からイモであれば何でもという注文が殺到したほどだが、現在は銘柄指定が多くなり、飲まれる焼酎とそうでない焼酎の色分けが進んできているという。また増産が続く蔵元と出荷数量を減らす蔵元との格差が広がり、オール勝ち組だった蔵元も今後は2極化が進んでいきそうな気配である。
中国産冷凍イモは排除 国内産が主流
「安定期に入った九州の本格焼酎」
九州本格焼酎協議会会長
本坊喜一郎
2桁成長が続き、異常ともいえるブームに 沸いた本格焼酎だが、平成16年度(平成16年7月〜同17年6月)はかなり落ち着きを見せ始め、本格焼酎は安定成長期に入ったと言えそうだ。 需要に対応するため、工場新設、増設に踏み切るメーカーが相次いだが、造れば売れる時代は終わり、これからは消費者の厳しい選択を受ける時代になったといえよう。各メーカーには足元をしっかり見据え、品質本位で個性溢れる焼酎づくりを期待している。
課題となっているトレーサビリティーについては、鹿児島県の地域特産品に対し県が与える「Eマーク」をはじめ、知覧・指宿税務署管内の南薩摩のメーカー各社が地元産原料を使ったという独自表示を行っている。また琉球泡盛、壱岐焼酎、球磨焼酎と同じように「薩摩芋焼酎」をブランド化する動きも活発化している。鹿児島県酒造組合連合会ではワインの「シャンペン」やブランデーの「コニャック」のように「地理的表示」保護の指定を目指し、手続きを進めている。
一方、焼酎粕の処理については陸上処理として肥料・飼料、またもろみ酢の開発など業界挙げて再資源化を図っているが、海上投入処理の制限も考慮し、一層の努力が必要とされている。
<> 九州の本格焼酎はかなり落ち着きを見せ始めたとはいえ、まだ伸びる可能性を十分秘めている。甲類市場といわれる関東以北で着実にファン層を拡大しているほか、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど海外市場への展開も始まっており、日本の本格焼酎が世界で認知される日もそう遠い話ではないと思っている。
|
本格焼酎ブームの中で最も勢いが加速したがイモ焼酎。イモ独特の香りや臭いはかつては敬遠されていたが、愛飲家の底辺が広がると、臭いやクセが逆に個性となって支持されたのである。しかしイモ焼酎は基本的に毎年収穫されたイモを原料として製造されるため、自ずと生産には限界があ る。そのため需要と供給のバランスが崩れやすく、前述のような現象が起こったのである。そこで一部の蔵元がとった策が中国産冷凍イモ使用だったのである。冷凍イモ使用により、一気に増産に拍車がかかり、需要に何とか対応できた蔵もあったが、品質、安全性、トレーサビリティなどさまざまな観点から物議を醸してきたのも事実だ。
需要が一段落した今、これまで中国産冷凍イモを使用してきた蔵元も昨年の製造から中国産は使わず、国内産冷凍イモに切り替えつつあるようだ。昨年秋に収穫されたコガネセンガで造ったあとの春から夏にかけて、国内産冷凍イモを使うのである。もちろん冷凍イモは一切使用せず、その年にとれたイモだけを使うメーカーも数多い。
次に一手に着手 鹿児島のイモ焼酎
イモの動きが落ち着いたことや、海外産のイモ焼酎が出回るなど今後の危機感を募らせた鹿児島県酒造組合連合会では「地理的産地表示」を申請。昨年、12月22日に正式指定された。指定は熊本の球磨焼酎、沖縄の琉球泡盛、長崎の壱岐焼酎に次ぐ国内4例目の指定で、薩摩という地域ブランド色を一段と強め、消費者にアピールする考えだ。
焼酎ブームの恩恵を最も受けたのはイモに対し、ほかの蔵元も新製品投入や地域おこし、特殊濾過製法、清酒用の麹菌使用など独自のアピールを行い懸命な巻き返しを図っている。なかでも熊本の高橋酒造では20年ぶりとなる新製品「待宵」を新発売。これまでと違い全麹仕込みで造るなど米焼酎のおいしさを懸命にアピールする。
いずれの蔵元も恩恵にあずかった本格焼酎のブームは去り、生き残りをかけた戦いはすでに始まっている。
以下、本格焼酎の本場・九州の蔵元の取り組みを紹介する。
〔薩摩酒造〕
イモ焼酎の代名詞ともいうべき「さつま白波」。薩摩酒造(鹿児島県枕崎市、本坊松美社長)が製造する白波ブランドはいずれもが好調で関東以北にも着実に浸透しているという。なかでもさつま白波黒麹仕込みは全国的な品不足が続き、出荷調整を余儀なくされるほどだ。ほかにも海洋酵母を使い仕上げた「我は海の子」も順調に売り上げを伸ばしている。
既存商品が絶好調の中、薩摩酒造は05年、「枕崎」を新発売した。枕崎は同社の明治蔵にある100年以上使われているかめで製造されたかめ壷造りの逸品。熟練杜氏が丹精込めて造ったという枕崎は1800ミリリットルのみの限定本数発売で、発売直後から大きな反響を呼び、店頭で求めるのが困難になっているほどだ。
「焼酎の味を覚えた人吉の少年時代」
博多座社長 青柳紀明
米焼酎の本場である熊本県人吉市で生まれ育った。お正月が来ると大人から子どもまでお酒を飲むのが実家の習わしで、小さいころからこれで鍛えられた。最初のうちは甘酒だったのだが、それが進んで焼酎に代わり、いつしか正月が楽しみになった。初もうでに行った時、酔った勢いで自転車が転倒、買ったばかりの学生服を汚してしまったのを思い出す。
当家は8人家族だが、こうした環境に育ったので全員がお酒に強い。夜が明けるまで飲み続ける。父も95歳で天寿を全うするまで毎日飲んでいたようで、私が家を出てからも、帰郷するたびに父と一晩で1升は飲んでいた。当時は、最初から水と割ってさけ缶にかけて飲むのが普通で、梅の香を入れて生で飲むのもおつであった。
ひと昔前の焼酎はにごり酒だったが、今は焼酎メーカーがそれぞれ競い合っているので、さまざまな味や香りを楽しみにしている。中でも鳥飼酒造の球磨焼酎「鳥飼」は米麹に吟醸酵母を使っており至極の逸品。松の泉酒造の「水鏡無私」も優れものだ。
昼間はワイン、魚は焼酎、夜のお付き合いはウイスキーと飲み分けている。自宅では余り飲まないが、晩酌はやはり焼酎を嗜む。各界名士の人吉出身者が集う「急流会」に参加しているが、ここでもやはり焼酎ファンが圧倒的。過日名古屋市の劇場「御園座」に行った折、新潟や金沢の焼酎があったのでもの珍しく飲んでいたら、飲みっぷりにお店のご主人が驚いていた。酒豪・九州人の面目躍如たる思いである。
|
品質には徹底したこだわりを見せる薩摩酒造は05年1月に開催された平成16酒造年度鹿児島県本格焼酎鑑評会でイモ焼酎の最優秀賞に当る総裁賞を代表受賞した。この鑑評会は年に1回鹿児島県酒造組合連合会が主催し、その年(04年7月以降製造)の本格焼酎の出来を競うものだ。
熊本国税局鑑定官室室長ら専門家により行われる鑑評会は、ブランド名を伏せて審査し、その中で評価が下される非常に厳格な鑑評会。その鑑評会において総裁賞代表という最高の評価を受けたことは同社の焼酎造りの技術力の高さを証明しているといえよう。
〔田苑酒造〕
1890(明治23)年創業の田苑酒造(鹿児島県川内市、有川徹社長)は鹿児島のメーカーでありながら、製造比率は麦81%、イモ16%、米3%となっている。代表商品の「田苑ゴールド」はホワイトオークの樫樽に貯蔵された原酒から造られる高付加価値商品で、しゃれたボトルデザインや琥珀色に輝く中身はウイスキーと見間違うほどだ。ほかにも 鹿児島県産のコガネセンガンを使用して造ったイモ焼酎「田苑いも」、黒麹で仕上げた「田苑黒」、米焼酎「田苑米」など多彩なラインアップをを取り揃えている。
「適正な企業規模を維持した健全な成長」を標榜する同社はイモブームの際も決して無理な増産は行わず、あくまで品質本位で付加価値の高い商品提供に徹してきた。有川社長は「ブームがかなり落ち着いてきており、今後は本物しか残らない厳しい選択が待っている。当社ならではの古酒を生かした独自性溢れる商品を提供したい」と語る。
田苑酒造では毎年鑑評会に出品しており、平成17年度の熊本国税局酒類鑑評会で「優等賞代表」を受賞した。優等賞の中で最も優れた焼酎に送られる「代表」受賞。これで優等賞受賞は27年連続となり、鹿児島県本格焼酎鑑評会でも26年連続で優等賞を受賞している。
〔濱田酒造〕
「心こそ軍(いくさ)する身の命なれ そろえれば生き、そろわねば死」。
濱田酒造(鹿児島県いちき串木野市)の濱田雄一郎社長の本格焼酎業界に対する心境は、一節のさつま歌に象徴できる。薩摩藩に伝わる人生の指針を説いた郷土歌で「戦場では自軍の意識と姿勢を1つに結集することが勝敗を決める」との思いからだ。同業界を巡る戦況こそ、まさにその通りで、甲類焼酎がありビール、リキュールありで「敵陣営は多種多様化」。さらに異業種からの新規参入まで控えており、迎え撃つ本格焼酎勢はいまこそ「心そろえ」ねばならない。
ここで、濱田社長が自社にただす「心」こそ「本格焼酎のロイヤリティー」。500年間、鹿児島県で飲み継がれてきた焼酎を主軸に「歴史・文化・価値を受け継ぎ、未来に発信していく」3つの施設が稼働する。
創業(明治元年)以来の手作業によるかめ仕込み、木桶貯蔵を貫く「伝兵衛蔵」、最新鋭の設備で蒸留、ボトリングまで完全管理する「傳藏院蔵」(2004年より始動)、そして焼酎と地場産業のテーマパーク「薩摩金山蔵」(05年に開園)で『三味一心』。本格焼酎の伝統・革新・継承の3つの『心』が、社業137年目でようやく整った格好だ。
焼酎の生産量は1万7500キロ強で、特にサントリーとイモ焼酎の共同開発での提携(03年)以降、全国規模の販売ネットを獲得し、目下、関東以北への販売攻勢中にある。さらに北米、上海、香港、シンガポールなどへ出荷。清酒と並んで、日本を代表する「国酒」としての焼酎の提案に余念がない。実際、生のサツマイモを原料とする蒸留酒は世界中にも例がなく、「国際的なオリジナリティー」の面からも、焼酎が北米、アジアを主軸に浸透していく余地は大、と目される。
「軍する身の命」として「三味」をそろえることで挑戦、栄冠を勝ち取る道筋を付けているようだ。
〔大口酒造〕
「“熱かん”を注文して出てきた本格焼酎との出会い」
NECソフトウェア九州社長 佐藤 勲
8年ほど前になろうか、東京から仕事で鹿児島へ行った折、夕食を兼ねて宿泊先近くの小料理屋へ足を運んだ。地元料理とともに壁に張り出してある“熱かん”を注文してしばし待っていると、豚の角煮やさつまあげと並んで徳利も登場。いつも飲み慣れた日本酒のつもりで口をつけると、何とも経験したことのない味。これが私と本格焼酎との出会いだった。 店の人に尋ねると、鹿児島では“熱かん”と言うとお湯で割った焼酎のことで、日本酒なら日本酒と注文しないと出てこないとの話。ちょっとしたカルチャーショックを受けながらも、これが地元料理と合っておいしく、それまで日本酒一辺倒だった私が、そのまま飲み続けた。東京でも焼酎を飲んだことはあったが、今思うと甲類の焼酎で、梅干しやレモンの輪切りを入れたりして飲み、その味だけであまりおいしいとは思わなかった。東京に戻って早速その話を知人にすると、東京にもおいしい店があるという。連れて行ってもらってからは、ちょくちょくその店に足を運ぶようになった。
04年に九州に着任し、今日では専ら焼酎党。行く先々で地元焼酎を堪能している。その影響からか妻も焼酎を飲むようになり、2人で食事に行く際も、テーブルには決まって焼酎。普段家で晩酌をすることはめったにないのだが、家の中には九州各地のさまざまな焼酎がずらり。出張などの空港での待ち時間などに、店の中をのぞいて目を引くものがあると、ついつい購入してしまい、それがどんどん貯まっている。その味わいや風味の良さは今さら言うまでもないが、その日の体調や気分などによって濃さを加減できるのも、焼酎を大いに気に入っているところ。これからも九州のおいしい料理の数々とともに、本格焼酎を楽しみたい。
|
鹿児島県大口市に本社を置く大口酒造(川原健一代表理事)は70年に地元11社の蔵元が集まり設立された協業組合。伊佐郡で造られるイモ焼酎は昔から評判が高く、小説家・海音寺潮五郎氏も絶賛したほどである。
大口酒造の製造はイモ焼酎のみ。主力商品の「伊佐錦」「黒伊佐錦」は地元鹿児島で圧倒的人気を持つ。特に「黒伊佐錦」は黒麹ブームの火付け役になった商品で、鹿児島県内をはじめ全国的にブランド力を存分に発揮している。ほかにも地元の菱刈金山にちなんで命名した「金山」や鹿児島県工業技術センターと共同開発した新酵母で仕上げた「伊佐舞」などがある。 金山は黒伊佐錦と同一の黒麹菌を使用し、さらに発酵過程で特殊酵素を使用し、より厳格な温度管理のもとで発酵させたものだ。また製品の特性を発揮できるよう、十分な熟成(貯蔵)を行っているため、黒麹特有の香りが少なく、総体的香りもやわらかく、イモ焼酎の特徴を残しながら、独特の芳香があるのが特徴だ。 味、コク、甘味とも「黒伊佐錦」の特性を備えながら、口当たりの良いイモ焼酎になっている。
04年秋、増産のために新設した工場も順調に稼働、現在、生産はすべて新工場で行われている大口酒造。川原代表理事は「原料と水にこだわり、おいしいイモ焼酎を造り続けていく」と意気込みを話している。
〔白金酒造〕
1869(明治2)年に創業された白金酒造(鹿児島県姶良町、竹之内晶子社長)は古い伝統を持つ蔵の一つだ。同酒造がある姶良一帯は良質な水に恵まれた地域で、その龍ケ水と良質なコガネセンガンで造られるイモ焼酎のおいしさには定評がある。
代表銘柄「白金乃露」は1912(大正元)年に発売され、大正時代から昭和30年代ごろまでは鹿児島を代表するほどの人気を得ていたほど。現在も同社のレギュラー商品として根強い人気を持ち、愛飲家も多い。また手造り焼酎「石蔵」は、洗米、製麹、発酵管理などすべて手作業で行われるこだわり商品。錦江湾に面した石蔵では天窓を開け閉めして麹室の室温を調整するなど徹底した手造りにこだわっている。竹之内雄作専務は「いい焼酎を造るには何といっても麹が大切。『一麹、二もと、三造り』といわれ、焼酎造りで麹造りは最も重要な工程。当社は自然環境の中で麹菌を元気にさせながら繁殖させている。丁寧に育てた麹がコクのあるしっかりした焼酎を造り上げる」と絶対の自信を見せている。
〔知覧醸造〕
茶畑が一面に広がり、薩摩の小京都と呼ばれる知覧は武家屋敷跡や旧陸軍の特攻基地があったことでも知られる。薩摩半島南部は温暖な気候で、南国の太陽を浴びながら育ったコガネセンガンの質の高さには定評がある。
この地元産の原料を使い造られるのが知覧醸造(森正木社長)の本格イモ焼酎である。同社の主力商品は「知覧武家屋敷」。その名の通り、ラベルには武家屋敷が描かれ、独特の甘みのある味は地元の圧倒的支持を受けている。また最近では高倉健主演で話題となった映画「ホタル」にちなんで発売した「ホタル」も徐々に浸透、九州新幹線の開業が拍車をかけ、土産や贈答用が増えているという。森正木社長は「ブームの時は出荷が追い付かなかったほどだが、決して踊ることなくまじめに焼酎造りに取り組んできた。今後もこの姿勢は変わることはなく、おいしい焼酎を造り続けたい」と話している。
〔白露酒造〕
岩崎産業グループである白露酒造(鹿児島市、岩崎麻友子社長)の工場がある鹿児島県揖宿郡山川町周辺は開聞岳地下数百メートルから豊富な地下水が湧き出し、そのおいしい水は地元はもちろん県外でも広く知られている。この湧き水を使い仕込んだのが「白露」「白露黒」「岩いずみ」「麻友子スイート・ドライ」そして昨秋限定商品として発売された「麻友子ピュアブラック」である。原料となるイモは地元でとれた新鮮なコガネセンガンを使用。本格焼酎の命とも言うべき原料と水に徹底的にこだわっている。
後発メーカーだけに商品の浸透には時間を要したが、地道なPR活動が功を奏し、売り上げは年々右肩上がりを続けているという。レギュラー商品の「白露」「白露黒」は常圧蒸留だが、女性を意識して造ったという「麻友子スイート・ドライ」は減圧蒸留で臭いを抑え、女性が飲みやすいように仕上げている。限定商品「麻友子ピュアブラック」は九州でも珍しい黒麹の減圧蒸溜、単一タンク熟成のものである。同社の岩崎麻友子社長は「女性をはじめ関東、関西など各方面からの引き合いが増えてきており、前年比を着実に超えている。今後もこの勢いを継続したい」と笑顔を見せている。
〔指宿酒造〕
指宿酒造協業組合は「確かに、いまの焼酎市場の活況はありがたい。ただ、だからこそ浮き足立たずに、各社で足下を見直すべき」(南荒生専務理事)と指摘する。
もともと焼酎は労働の「だれやめ」(疲れをいやす)のための大衆酒。三里四方で取れる地域の農作物の「風合いを生かしながら、目・鼻・口など五感を駆使して味わい地産地消する」地場産業だ。サツマイモはじめ、原材料の収穫時や量にも制限があり、大手酒類メーカーが謳うような業界シェアやランク、出荷量など企業規模を競うような産業ではない。「身の丈は小ぶり」でもその地に根付く「土着性こそ生命線」で同酒造の「利右衛門」も、本来は指宿で楽しみたい。
砂むし温泉でリフレッシュした後、池田湖畔から開聞岳を仰ぎ、カツオ節とオクラ漬け辺りで一献傾けるのが本流。「観光・焼酎・地場産品を一体化」した、食中酒としての楽しみ方を勧めている。
〔長島研醸〕
鹿児島県の出水は鶴の飛来地として知られ、毎年冬になると多くの観光客が見物に訪れる。そこから車で約30分、黒之瀬戸大橋にさしかかると眼前に青く美しい海岸線が見えてくる。長島は焼酎造りや漁業で知られ、島の北部海岸は雲仙天草国立公園の一部になっている。特に黄金色に染まる夕陽の美しさは絶景で、訪れる釣り人や観光客を魅了してやまない。また長島には200を超える古墳があり、別名「古墳の島」と呼ばれるほどだ。
長島研醸はその長島の島内5社の蔵元がそれぞれ製造したイモ焼酎をブレンドし、「さつま島美人」として展開している。もともとさつま島美人は島内や鹿児島県内への出荷がほとんどだったが、最近のイモブームで全国各地から注文が殺到。出荷が追い付かない状況が続いている。味はブレンド焼酎らしくまろやかで飲みやすく、イモの風味もしっかりしていることから愛飲家も多い。小川清洋社長は「無理はせず、品質本位を貫き、長く愛される焼酎造りを行っていきたい」と意気込みを語っている。
〔田崎酒造〕
鹿児島県いちき串木野市の田崎酒造は、長期貯蔵酒を中心に定評があるが、「多くの方に品質と味わいで納得、満足していただけるよう、正直に努力を積み重ねてきた」(田崎周二専務)成果といえる。
イモ焼酎「千夜の夢」は文字通り千日間(3年以上)寝かせて世に出る。米焼酎「万夜の夢」の原酒は1953年製造。直火蒸留で仕上げ地下室のかめで熟成する。720ミリリットル瓶2000本程しか在庫がないため、完全注文制を取っている。
特にソムリエ世界一・田崎真也氏が絶賛。その一節を同氏の著書から引けば「(長期熟成イモ焼酎「たなばた」は)蒸かしたての芋が蜜を含んだような香りが最初から強く感じられて、そこにほんのわずかナッツのような香りが、熟成香として感じられます」(『本格焼酎を愉しむ』光文社新書)といった具合。現在、「七夕」900ミリリットルはコンビニエンスストアにも商品が並び「全国ネーム」となったが、それでも冒述通り、「いい酒づくり」に真摯(しんし)な姿勢は永遠に不変だ。
〔花の香酒造〕
熊本県三加和町の花の香酒造では「県産初のイモ焼酎、『茂作』が主力ブランドで、米、麦焼酎にも刺激を与えて市場を開拓している」(神田優子社長)。1902年に清酒酒蔵としてスタート。県産米を使い、三加和天然水で仕込んだ銘酒で支持層も厚かったが、すでに明治時代から焼酎も同県産初で製造。高系14号などの「上質な食用イモが取れる、地場の恵みを生かし続けてきた」経緯がある。 農家と協同で、土地に炭を加えたりして土壌改良にも腐心。減農薬栽培を貫く。神奈川県はじめ関東エリアの酒類卸から注目され、首都圏など大消費地に攻勢をかける下地は整っているが、「当面は地元の基盤固めに徹する」。まずは、熊本県はじめ九州全域での支持を不動のものにすることから。
それも「酒販店や居酒屋を一軒一軒、地道にこまめに回る」ことで、販売の最前線を着実に押さえてきた。この積み上げが、大手チェーン店や酒卸に「実績」として伝わり、ブランドの認知率と支持率が高まった。
これを機に同社のネット通販システム「紅屋」(運営は神田清隆代表)では、お菓子や健康食品など、焼酎製造業から派生した新規ビジネスの開拓にも取り組む。
その場合のキーワードは「ロハス(LOHAS」。Lifestyle of Health and Sustainabilityの頭文字から取った造語で「健康的で、持続可能な(自然環境を保つ)生活様式」。できるだけ天然素材の風味や質感を生かしながら、環境に負荷を与えない商品を開発し、「いやしや安らぎ」の生活シーンに寄与する。自然と調和して、その恩恵に感謝しながら、「花の香工房」プロジェクトとして事業化できれば、といったところ。
さらに2006年4月には、神田社長の5代目同職就任1周年を記念して広く地域に酒蔵を開放、工場見学や焼酎などの試飲会から温泉旅行までをサービスする予定もある。
〔玄海酒造〕
長崎県壱岐市で本格焼酎造り一筋に取り組み、100年以上の伝統を持つ玄海酒造(山内賢明社長)では、本格麦焼酎の「瀧泉」が、世界的に権威のある食品の国際品評会「モンド・セレクション」の2005年酒部門において、最高位であるグランド・ゴールド・メダル(大金賞)を受賞した。2003年にも「美鏡」が同じ大金賞を受賞しており、この快挙で同社の本格焼酎の質の高さをあらためて示すことになった。
壱岐では同じ姓が多いため、各家ごとに門名(家の名)がある。山内家は、壱岐で一番高い山(岳の辻)のふもとにあり、水が湧き豊かなことから、門名は「瀧泉」と呼ばれている。同社創業時に使用していた銘柄「瀧泉」は、この門名から命名された。創業(1900年)以来100年を越えて、その「瀧泉」を復刻し、創業者である山内為三郎が目指した焼酎造りの心を今に伝えるため、ここによみがえった。
「当社の本格焼酎は、米麹3分の1と大麦3分の2を順次仕込み、その後蒸留による留出成分の中で、本垂と呼ばれる品質的にも安定し、香味の優れている部分を採って調熟し、最短でも3年以上、長くは12年も熟成を重ねた原酒を調合している」(山内賢明社長)。こうしたことで、ふくよかな香りとまろやかなコクを持つ奥行きの広さと、加えて米麹を使用する事によって天然の甘みが自然と醸成された、同社独自の銘酒の数々が生み出されている。
〔西吉田酒造〕
「地元料理にはやはり地元で造られた焼酎」
三菱商事理事九州支社長 浅岡 実
日本酒も好きだが、やはり九州では焼酎がうまい。出張が多く、九州各地へもたびたび足を運ぶが、それぞれの地元料理にはやはり地元で造られた焼酎がよく合う。また、飲み方もロック、水割り、お湯割りと自在であり、濃さもその時の気分や体調によって加減できるのがうれしい。さらに少々過ぎてしまった翌朝でも、あまりダメージが残らないのも助かっている。もともと父方の先祖は鹿児島で、曽祖父が当時東京にいた西郷隆盛に呼ばれて上京して以降、東京で暮らすことになったようだが、その血からか東京生まれの私にも芋焼酎はしっくりきて、口にする機会も多い。その鹿児島では黒じょかで飲むのがおいしく、特に前日から黒じょかに入れて寝かせたものは、一段とまろやかである。
こうして九州各地の焼酎を楽しませてもらっているが、一方で当社やグループ企業が焼酎に関したいろいろな取り組みもさせていただいている。鹿児島県大隅町で明治3年創業の岩川醸造が造る本格芋焼酎「夢想華」の販売を手掛けたり、大分県・三和酒類の本格むぎ焼酎「いいちこ」の上海への輸出のお手伝いをさせてもらったり。あるいは漬物用や飼料に九州の蔵元の焼酎粕を買い取ったりなどもしている。
何事においてもそうだろうが、最終的には人と人とのコミュニケーション、人間関係が重要であろう。その際、お酒を前にすると一層打ち解け、より円滑なコミュニケーションを図ることができる。楽しいお酒が大好きで、時々九州支社の社員ともそうした時間を持っているが、この時にみんなの手元にあるのが焼酎。これからも焼酎とともによきひと時を過ごしたい。
|
福岡県筑後市の西吉田酒造では「焼酎業界の競合は、これからが正念場。地場酒蔵としての真骨頂を発揮するとき」(吉田元彦専務)と切り出す。焼酎は酒類市場で不動の位置を占めるが、そこでは「さらなる高度で、ち密な差別化戦略が望まれる」と続ける。
市場と需要の「厚み」が増す中で、例えば国税庁は本格焼酎の製造免許の規制を緩和。これまで、焼酎製造への新規参入はクリやレンコンなど一部の農作物に限られており、「麦・米・イモ・そば」の主要4品種については、過当競争や値崩れを起こす懸念から認めてこなかったのを、条件付きで参入を容認する。酒税法制定(1940年)以来の改革だが、大手酒類メーカーから異業種まで入り組んだ乱戦となるのは必至といえる。
小売りの最前線でも焼酎は「出足」がいいため、価格は安定的。一般的な粗利益率は2〜3割程度ともいわれ、ディスカウントが常態化して、利益幅が薄いビールやチューハイ、発泡酒などに比べると、焼酎は「商材の優等生」であるのも当面、変わらないようだ。
この中で、「焼酎のし好品としての『本質』と酒蔵の企業としての『体力』」が同時に試される」と読む。焼酎の真価は「香りと味わい」にあり、時間をかけて技術を磨かなければ培えない。また、焼酎は樽やタンク、蒸留機など工場設備への先行投資が大きく資金回収のスパンが長期にわたる、装置産業。大手、異業種とも参入企業はスケールメリットだけで乗り切れる業界ではない。
この辺り、同酒造では、原料選びと製造法で他社をリードする。5年貯蔵の原酒をブレンドして、黒麹から作ったもろみを使った麦焼酎「つくし」の2タイプが店頭やレストラン、居酒屋内で存在感を増す。「つくし白ラベル」は、減圧蒸留。ライトで端麗な感覚で、OL層中心に女性に好まれる。「つくし黒ラベル」はディープで奥行きの深い味で、ビジネスマンに人気が高い。深化する焼酎の市場競合で、明快な個性と魅力を主張し存在感を高める勢いがある。
〔老松酒造〕
老松酒造(大分県日田市)の当面のテーマは「未来市場に向けた流通チャネル政策と、商品の提案方法」(森山保徳社長)にある。
焼酎は総合商社や食品・酒類の専門卸業界を中心として、小売店や業務用などに流されているが、同業界では大手への系列化や広域の業務提携が目立つ。一方でテレビをはじめとして、メディアとIT(情報通信技術)との融合は、今後もさらに加速され、商品情報を受発信する状況も大きく変わる。
焼酎を取り巻くチャネル事情とマーケティング環境が激変する中、同酒造では「双方の動向を注視しながら、有効な手立てを打つ」構えを整えつつある。
同時に「その一歩手前の用意」として、明快な個性と魅力を発信、圧倒的な存在感を放つブランドの開発に余念がない。ムギ焼酎「閻魔(えんま)」には黒麹でじっくりと時間をかけて発酵させた常圧タイプ(緑のボトル)が登場。
赤ボトル(長期熟成)に増して、洋ナシの芳香を思わせるフレーバーはもちろん、常圧蒸留ならではの飲み口とコクは、お湯割りでいっそう際立つようだ。
〔壱岐焼酎協業〕
「3代受け継ぐ左党のDNA、焼酎はTPOに合わせて楽しむ食中酒」
大坪製菓統括マネージャー
中村三重子
祖父、父親と私。3代続く、丸ボーロ主体のお菓子作りが家業であり、左党のDNA(遺伝子)も受け継がれてきた感じです。物心ついたころから祖父の晩酌でお酒をついでいたし、小学校低学年では父に連れられて酒席に座っていました。これで、基本的なお酒のたしなみ方をマスターしたように思います。近所には古い酒蔵があり、軒先きに干してある、大きなおけの中に入り込んで遊んだ思い出もあります。住み込みの職人さんも多く、お客さまが見えることが絶えない家でしたので、いつもにぎやか。こういった環境で育ちましたので、もちろんお酒は大好きです。
特に私の場合、焼酎は「食中酒」。和洋中の料理や野菜、魚介類の素材を問わずに、食べ物の風味や質感を引き出して、食べてよし、飲んでよしの場をもつためのし好品です。だから、原料のフレーバーが引き立つ飲む方を選びます。麦焼酎なら夏場はロック、冬ならホットで。「吟酔人」とか、ふわっと包み込まれるような香りが気に入ってます。そうしたブランドを大勢でワイワイ盛り上がって楽しむタイプ。
またイモ焼酎でも、緑茶を加えることで、かなり味わいと酔い心地が変わることも発見しました。それでいま、ふと気がついてみると、あの日の祖父や父親と同じようなお酒とのおつき合いをしているような感覚があります。
|
麦焼酎発祥の地の壱岐焼酎協業組合では「価値ある焼酎を『適正価格』で流通させる」(篠崎修理事長)取り組みに専心。同市内でも、スーパーマーケットやディスカウントストアの店頭で値引きされた焼酎が売られているが、「真価に見合う価格」で取り引きされるよう壱岐酒販など通じて働きかけていく。
ユーザーは本物の焼酎を楽しめ、メーカーと、酒類卸・小売も正当な利益を確保できる「三方共によし市場」を目指す。同市内7酒造場で同じ立場を貫くことで、WTO(世界貿易機関)の地理的表示認定を受けた「壱岐焼酎」全体の正価と品格を守る効力もある。
その一環として、この2月から発売する「百合若」は壱岐酒販のオリジナルとして、適正価格を守ってもらえる店だけに出す。壱岐の伝説にちなんで命名したこの焼酎は、伝統の麦と米を使い、いま話題の黒麹で仕込んでいて、独特のコクとうま味をもっている。 もちろん、看板商品「壱岐っ娘」も米麹のうま味と麦の風味が最大限に引き出されており、杯を傾けるごとに「まろやかさと、ふくらみ」を増す。「大祖」は常圧蒸留の焼酎で、昔ながらの個性豊かな香味をもった焼酎。また、福岡市で毎月催す「いきっこ会」も結束力が強く、例会には70名強が集う大所帯だ。
〔高橋酒造〕
熊本の焼酎といえば米焼酎。古くから人吉・球磨地方で造られる米焼酎は「球磨焼酎」と呼ばれ区別されてきた。その球磨焼酎を代表するメーカーが高橋酒造(熊本県人吉市、高橋光宏社長)である。
同社はこれまでレギュラー商品である「白岳」「白岳しろ」を主力としてきたが、新たなファン層を獲得すべく、05年9月1日から20年ぶりの新ブランド「待宵(まつよい)」1800ミリリットルを熊本限定で新発売した。
待宵の最大の特徴は全麹仕込みにある。全麹仕込みとは水以外の原料としては麹だけを使った仕込みのことである。米で造った麹と水と酵母を混ぜ、1次モロミを造り、さらに米麹と水を加え2次モロミを造って発酵させ、蒸留するもの。このためクセのない味と香りに、重厚さ、芳純さ、奥深さが加わり、深く、濃く、美しい本格米焼酎に仕上がった。待宵は発売と同時に評判を呼び、小容量のタイプの発売を望む声も多く寄せられたことから12月には720ミリリットルを追加発売した。高橋光宏社長は「新製品の待宵は米焼酎そのものの味。ぜひ米焼酎に目を向けていただき、おいしさを味わっていただきたい」と話している。
〔繊月酒造〕
繊月酒造(熊本県人吉市、堤正博社長)の創業は1903(明治36)年。1世紀を超える伝統を持ち、球磨焼酎を代表する蔵元の一つである。
同社の特徴は米焼酎の多彩なバリエーションを備えている点にある。主力の「繊月」をはじめ樫樽貯蔵した「たる繊月」、モンドセレクションで金賞を受賞した「霧の魔法」、菊鹿町の合鴨農法で栽培された米を使用して造る「さきもり」などのほかに日本各地の自治体やJAと共同で地元産の米と水を使った地域おこし用の焼酎も数多く製造している。なかでも「川辺」は地元産の米と清流川辺川の水を使い仕込んだ逸品で、最近人気が急上昇しているという。
人吉商工会議所会頭を務める堤社長は06年から07年にかけ、観光兼用の焼酎工場を新設する計画だ。レイアウトを工夫し、仕込みから瓶詰めまでの全行程を見られるようにするほか、焼酎の歴史や古酒の展示も行う予定だ。「一人でも多くの方に球磨焼酎に目を向けていただき、観光客減少が続く人吉の活性化のつなげたい」と抱負を話している。
〔光武酒造場〕
蔵造りの古いたたずまいで、近年観光スポットとして静かなブームを呼んでいる佐賀県鹿島市浜町で、昔ながらの白壁土蔵に囲まれた中、常においしい酒造りを求めて専心してきたのが、創業元禄元(1685)年の光武酒造場。
おいしい清酒を提供することで広く知られていた同蔵が、焼酎造りにも取り組み始めたのは8年ほど前から。「長年に渡る清酒造りで培ってきた当社独自の高度な発酵技術とこだわりを、焼酎造りにも生かした」(光武博之社長)もので、清酒同様すぐにファンを獲得し、「米、麦、芋、いずれの原料の商品も順調に伸展」している。
そのこだわりは黒麹芋焼酎「魔界への誘い」を見てみても、原料には黄金千貫を使い、麹は原生の黒麹を使用して、甘い香りと味に深みを出し、さらに「荒ごしろ過」という方法で、その味わいを守る徹底ぶり。首都圏などでも人気商品となっており、「これからも独自性を持つ、こだわりの本格焼酎をご提供していきたい」と同蔵の特長を生かした焼酎造りに取り組んでいる。
〔研醸〕
『薩摩焼酎』が原産地指定、国内4例目の保護対象指定
国税庁は酒類業組合法に基づき定められた国内の「地理的表示」の保護対象に鹿児島県の「薩摩焼酎」を追加することを05年12月22日に告示した。
これにより蒸留酒で地理的表示の保護対象に指定されたのは熊本の「球磨焼酎」、沖縄の「琉球泡盛」、長崎の「壱岐焼酎」に続く4例目となる。
鹿児島県産のイモ焼酎の出荷量はここ数年、飛躍的な伸びを見せており、焼酎ブームをけん引している。しかし外国産のイモを原料に鹿児島で造ったイモ焼酎が出回ったり、異常ともいえるブームが沈静化しつつある中、同連合会は地域ブランド色をより強めることで消費者にアピールしていく考えだ。
「薩摩いも焼酎」の指定条件は、イモの栽培、収穫、仕込みから瓶詰めまですべてを県内で行うことで、水については基準を設けないという。また鹿児島県内産であっても米焼酎や麦焼酎など原料がイモ以外を使って製造した場合は「さつま」は使用できない。なお「さつま」使用に際しては、「薩摩」「さつま」「サツマ」「satuma」「satsuma」など日本文字、外国文字を使うことができる。同連合会の吉野馨副会長兼専務理事は「鹿児島以外の地域や海外で造られたイモ焼酎が多く出回るようになり、対象指定となったことは喜ばしいかぎり。まだ認証されたばかりで、多くの作業が残っているが、統一ロゴの作成、広報活動などを通し、消費者にわかりやすい形でアピールしていきたい」と話している。
|
福岡県筑後エリアの清酒メーカー、合名会社山口酒造場(同久留米市)と井上合名会社(同大刀洗町)が共同出資して焼酎酒蔵、研醸株式会社(同県大刀洗町、井上茂康社長)を設立した。1982年から、「地域に根差した酒蔵を母体として地場の歴史、農産物などを生かした焼酎」(井上社長)を発信しており、独自の見事なブランドが育っている。
北野町(現・久留米市)はニンジンの特産地として長く名をはせており「町おこし」の一環として、ニンジン焼酎を提案。ニンジンはカロチンを多く含み生活習慣病の予防効果も期待される一方、酵母菌の発酵を進める力にもなる。蔵の中では朱色のもろみが泡立ち、勢いよくはじける。その様子から人参焼酎「朱の音(あかのね)」の銘柄が生まれた。ニンジンは糖度が高く(7.7%)、さわやかな甘味を帯びたフレーバーが出色。和洋中どんな料理の「うまみ」も引き出すこと請け合いだ。
また「こふくろう」は麦焼酎だが、大麦を「焙煎(ばいせん)して研ぎ上げる」という着眼点は、焼酎業界初。玄米を60%以下に精米して仕込む吟醸酒がヒントとなった。大麦はローストすることで、2日酔いのもととなる成分がカットされ、香ばしさが増す。
どちらも、とっておきの銘酒として長くお付き合いしたい。
〔窓の梅酒造〕
もともと、清酒酒蔵としての定評と実績が高い(福岡国税局の2005年酒類鑑評会で吟醸酒「香梅 窓乃梅」が大賞を受賞。同賞受賞は4回目)からこそ、焼酎もひと味違うのが、佐賀市の窓乃梅酒造。焼酎作りでは白麹菌が主流だが「清酒作りで使う麹菌を導入することで、独自のまろみと柔らかさが際立つ」(古賀醸治社長)。 独自の香り・風味の絶妙なバランスと、特上の酒質を歴史(1688年創業)とによって磨かれた技術と実績(冒述)が支える。
また、焼酎の製造過程で出るかすは、大半が海洋投棄されていたが、禁止される方向(ロンドン条約)にあるが、同酒造では年間230トン近く出る焼酎かすのリサイクルにこぎつけた。ビーエルアンドアイ(福岡県久留米市、内山田暁史社長)との共同開発で焼酎かすから鉄骨や自動車などの溶接に不可欠の塗布材を完成しており、世界初の酒蔵発工業製品として、ビーエルアンドアイでは特許出願中だ。
さらに05年11月にはリキュール類の製造免許も得ており、ゆず、すもも、ブルーベリーなどで新商品を準備。総合酒類メーカーとしての陣容を整えつつある。
〔紅乙女酒造〕
「地元田主丸には三夜様と親しまれる神社がある。月の変わり行く姿に月の美を求め、五穀豊穰を祭祀する神社です。満月に向け膨らんでいこうとする三日月のように、常にいいお酒造りに取り組んでいきたい」(紅乙女酒造・林田博隆副社長)との姿勢から、福岡発の全国に知られる、胡麻祥酎をはじめとした銘酒の数々が生み出されている。05年の福岡国税局酒類鑑評会においても、本格焼酎部門で過去最高の出品を数える中、6回目となる最高位の大賞を受賞、いつも上位には同蔵の焼酎が名を連ねている。
「体にも優しくおいしいお酒は、自然と調和・共存してこそ生まれるのでは」と言う通り同蔵は、北にわが国有数の大河である筑後川、南には山紫水明の耳納連山を頂く、豊かな自然にあふれた中にある。ここで仕込み水には耳納連山の伏流水を使用し、原料となる麦、米は地元の筑後平野産。代表銘柄である胡麻祥酎「紅乙女」は、この麦、米で醸す良さに、世界各地で昔から愛用され、健康の源でもある胡麻を加えたことで、繊細な味わいと豊かな香りを持つ、体にも優しい焼酎となった。
耳納連山麓に6棟の貯蔵庫を備え、19年の古酒「萬ろく」43度原酒も限定発売で登場。胡麻にはもともとそれ自体にうまみがありながら、相手のうまみも引き出す力を持っているからで、より料理をおいしくいただける。胡麻祥酎「紅乙女」は「皆さまが楽しく寛げて、明るく心豊かになる、個性あるお酒を造り続けていきたい」と目先にとらわれない地道な努力を重ねている。
〔長崎大島醸造〕
長崎大島醸造(長崎県西海市、山下英一社長)は1985年、大島造船所、大島町(現・西海市)などの出資により、第3セクター方式による民間主導型企業としてスタート。「本格焼酎をベースにした産業や観光の振興と、町おこし」(山下社長)を目指している。
農家と共に、地元の気候や土壌に合った、安定的な収穫が見込めるサツマイモを活用することによる農業振興と、工場見学などを通じて西海エリアと一体化しての観光に寄与する。この間で同醸造に一貫するテーマは「幅広い方々に『おいしく飲んでヘルシーライフ』を提案する」ことに尽きる。
伊佐ノ浦川の名水は、高級イモ、紅あずま(焼きイモ用)や精選された大麦など素材の風味を見事に引き出す。「天然素材のみを厳選した、無添加仕上げ」で、一連のブランドには穀物の風香りが生きており、口にするたびに新しく、いつまでも飲み飽きることがない。「健康生活への習慣酒」として、位置付けたいところだ。
実際、焼酎は酔いざめがよく、二日酔いもない。血流をサラサラにして血栓(血管内の血液の塊)ができるのを防ぐなど、焼酎の「健康酒」的側面は周知の通り。
九州北西部の西海地域観光と合わせて、本格焼酎の中での同地域発銘酒として、市場に揺るぎない一角を築き上げている。
〔メルシャン〕
球磨川の河口に臨み、自然に恵まれた熊本県八代市。ここにメルシャンの八代工場があり、1963年から本格焼酎をつくり続けている。この焼酎文化発信の八代工場を同社では、「生産能力の拡大、そして新たなる製品開発へのチャレンジ」(坂本博九州支社長)のためリニューアルする。既に05年11月に起工式を行い、06年9月の竣工を目指している。
「水にこだわった焼酎をつくりたい」。本格焼酎『白水』が生まれたきっかけは、そんな造り手の思いが始まりだった。水は酒、とりわけ焼酎にとっては大きな存在で、アルコール分が45度以下と定められている本格焼酎は、原酒に割水をしてつくられており、焼酎の7割近くは水。阿蘇山に降り注いだ雨が、幾重にも重ねられた自然のフィルターを通ってわき出る、日本銘水百選にも数えられる白川水源。このミネラル豊富な白川水源の水を割水に使うことで、『白水』のあのまろやかな味わいが生まれている。
そして原料としている米。同社人気の「こしひかり」「あきたこまち」「ひとめぼれ」など銘柄米を使ったシリーズは、世界的な食品コンクールである「モンドセレクション」において6年連続で「金賞」を受賞するなど、その品質の高さが世界でも認められている。
『白水』が志向したのは、豊かな香りとすっきりとした味わい。個性の強い焼酎は「酒が主役」であるのと反対に、『白水』は料理がメインと考え、料理を引き立たせる酒を目指した。そのため減圧蒸留を行ってマイルドな味に仕上げるとともに、厳選された原料を同社独自の酵母で低温発酵することにより、華やかな香りを演出した。「どんな肴とも相性がいい『白水』を、和食はもちろん、さまざまな料理と楽しんでいただければ」(同氏)と食材の宝庫・九州にまさにぴったりの本格焼酎である。
〔宝酒造〕
<総論5本文> 芋焼酎の中でも「芋原料100%」にこだわり、これを実現させた焼酎が全量芋焼酎「一刻者(いっこもん)」だ。
焼酎の味わいと香りを大きく左右するのが、仕込みに使う「麹」。芋焼酎には当然「芋麹」と思われがちだが、実は違う。昔から「芋麹」造りは極めて難しいとされ、そのため一般的な芋焼酎には「米麹」が使用されている。
しかし、「一刻者」は独自の技術で生み出された「芋麹」を使用、芋麹と芋だけで造られた「全量芋焼酎」である。芋原料100%ならではの、芋本来の甘い香りとまろやかで上品な味わいが楽しめる。
「一刻者」とは、薩摩地方の話し言葉で「頑固者」という意味。芋原料100%に頑固なまでにこだわった芋焼酎にふさわしい商品名だ。ラベルは懐古感あふれる復古調デザインで、ラベルの書は、榊莫山氏の作品。
販売元は宝酒造。製造元は鹿児島県薩摩郡の焼酎蔵・小牧醸造で、「小牧」「小牧古酒」「轟の露」など、さまざまなこだわりの芋焼酎を造っている。
九州の本格焼酎から世界の本格焼酎へ
このように九州各地の蔵元は独自の個性を打ち出し、レギュラー商品から高付加価値商品まで実にさまざまな本格焼酎が生み出されている。
九州には鹿児島のイモ、熊本の米、大分や壱岐の麦、ほかにもゴマ焼酎、ニンジン焼酎というように地域の特性を生かした個性溢れる焼酎がずらりと揃い、互いに切磋琢磨することで相乗効果を生んできた。それが消費者の意欲をかき立て、需要拡大につながったのである。
また心配されたトレーサビリティについても、昨年12月に鹿児島の「薩摩焼酎」が国内4例目の原産地指定を受け、この中で、栽培、収穫、仕込みから瓶詰めまでをすべて鹿児島県内で行うことを謳っており、消費者の声に素早く反応した形だ。産地指定は鹿児島のイモ焼酎メーカーにとって大きな追い風となり、九州の焼酎は一段と注目が高まるだろう。
少子化による酒の消費量の減少、焼酎粕の処理問題、小さな蔵の後継者問題など業界を取り巻く環境は決してやさしいものではないが、清酒圏といわれる東北、北海道などへ食い込む余地は十分残されているほか、海外という大きな市場もほとんど手付かずで残されている。食前でも食後でもない食中酒として日本の本格焼酎が世界的な脚光を浴びる日を夢で終わらせては決してならない。
雲海酒造
「綾・手造り蔵」でこだわりの造りを体感
「まろやかに、うまい。吉兆雲海。」
こだわりの「綾・手造り蔵」
本格焼酎は、出荷量の実質ベースで日本酒を抜くなど、南九州の地酒から国民酒へと着実に変ぼうを遂げつつある。これは消費者の健康志向の高まりを受けて市場が拡大した時代から、消費者のこだわりが本格焼酎が持つ風味や品質へと移行したことを意味している。そうした中、創業以来一貫して味わい深い本物にこだわった商品を提供し続ける雲海酒造(宮崎市、中島勝美社長)が、本格焼酎に対する思いをまた1つ具現化した。「綾・手造り蔵」である。酒造りと伝統工芸の里「綾・酒泉の杜」に隣接する綾蔵内に05年11月6日完成した同蔵は、甕つぼで仕込み、木桶の蒸留機で蒸留した風味豊かな原酒を甕つぼ貯蔵する手造りの本格焼酎蔵だ。仕込み風景の見学通路を設け、蔵人達の洗練された技術、厳しい品質管理など、雲海酒造の「こだわりの造り」に触れることができる。完成直後から高い反響を呼んでおり、連日多くの見学者が訪れている。自然の生態系との共生から生まれた産業と観光とを結びつける“産業観光”の創成を目的に、酒泉の杜は建設された。綾蔵完成から20年の時を経て、この目的の実現へとまた一歩、歩みを進めたことになる。
そば焼酎の愛飲家拡大中
「そば焼酎の文化を伝え、そば焼酎の“通”なイメージを消費者に知っていただく」(中島社長)ことを目的に、本格そば焼酎「吉兆雲海」の販売エリアを全国へと拡大したのが04年10月。伝統の黒麹仕込みの技と宮崎県日向灘沖で採取した「日向灘黒潮酵母」を使用。それまでになかった華やかな香り、深いコクと味わいという新境地を開拓し、多くの愛飲家を獲得している。発売1周年を記念して05年10月からは、「まろやかに、うまい。吉兆雲海。」と銘打って一層の浸透を図った。実はこのキャッチコピー、全国の主要都市で実施したキャンペーンで、実際に吉兆雲海を試飲した人の感想で最も多かった声という。今春もキャンペーンを実施し、さらなる市場の拡大につなげる方針だ。
さらに、トンネル貯蔵庫「雲海・神々の里貯ぞう蔵」で製造した長期貯蔵焼酎に新たな勲章が加わった。05年7月に開催された「ワイン&スピリッツコンペティション」で、「那由多の刻」「マヤンの呟き」「綾セレクション」「大河の一滴」が金賞を受賞。加えて、同年から新設されたカテゴリーごとの最高位の商品に贈られる「Best in Class」に、そば焼酎部門で「那由多の刻」、麦焼酎部門で「綾セレクション」、芋焼酎部門で「古秘」がそれぞれ選ばれた。
また同社は、業界に先駆けて焼酎粕の飼料化など利活用を進めてきた。05年10月には、創業の地・五ヶ瀬町に「五ヶ瀬リサイクルセンター」が完成した。同施設が採用した「微量通気システム」と「自動撹拌・発酵管理システム」という日本初のシステムは、業界でも高い注目を集めている。こうした取り組みも雲海酒造の大きな特徴である。
|
|