2006年2月号70ページに掲載

前田終止  霧島市長
(SHUJI MAEDA)


市民の声を聞くことをすべてに優先しながら13万都市の魅力を高めていきたい

 国分市を中心に周辺の6町が昨年11月7日に合併、霧島市が誕生した。人口13万人は鹿児島県では鹿児島市に次いで2番目。その新市の市長選では旧牧園町長の前田終止氏が旧国分市長を破り、初代市長に11月末就任した。鹿児島空港や高速道などの交通基盤が整い、観光、テクノポリス、農業など発展可能性の高い地域として新市長のリーダーシップに期待がかかる。

農・工・商・観光・教育などバランスのとれた地域

 ■国分市、隼人町、福山町、溝辺町、横川町、牧園町、霧島町の1市6町が合併し、県下第2の人口と面積を持つ都市・霧島市として誕生した。観光や農業、テクノポリス、農業など優れた素材を有し、将来の高い発展可能性を秘めている。
 霧島市は薩摩、大隅両半島の付け根、県央に位置し、南九州3県のへそにあたる。そこには国際空港があり、2本の高速道と5つのインタチェンジがあり、由緒ある霧島神宮と鹿児島神宮、9500年前の歴史が息づく上野原縄文の森、日本最初の国立公園・霧島がある。さらに世界有数の企業であるソニー、京セラなど働く場所があり、学ぶ場所としては大学2つ、短大1つ、国立高専1つ、高校7つ。しかも人口構成は若い人が多いピラミッド型。農・工・商・観光・教育など多くの分野においてバランスがとれている。地方都市としては珍しく未来性が感じられ、鹿児島県内はもちろん、南九州、日本列島の中でも指折りの元気ある地域だと自負している。
 亜細亜大学卒。政治家を志し、故二階堂進衆院議員の秘書などを経て1987年に県議初当選。県議を4期16年務めた後、2004年から1年半、故郷の旧牧園町長。新婚旅行で霧島を訪れた坂本龍馬を敬愛し、「薩摩龍馬会」会長や県観光連盟副会長などを務める。鹿児島県霧島市牧園町出身。1947年生まれ。

 ■テクノポリスとして発展を続ける国分・隼人地区を中心に、農業や観光などを基幹産業とする周辺部が加わることで、産業振興への新たな動きも始まっている。
 例えば農業の面では、福山、溝辺は県内でも有数の黒毛和牛の生産地で、黒豚は霧島が盛ん。健康食品として評価の高い黒酢は福山が産地。各地にブドウやナシ、カキなどの観光農園がある。鹿児島県は静岡に次いで全国2位の荒茶生産量を誇るが、溝辺、牧園はお茶栽培が盛んで、合併で霧島市は県内4位のお茶の生産地になった。将来的には「霧島茶」として銘柄確立を図りたい。合併を好機に、お茶だけでなくさまざまな農産物を集約し、商品としてその価値を磨き上げながら、「霧島ブランド」として国内外に売り出したい。私の名刺には「広報営業本部長」という肩書きを明記し、さまざまな分野でPRし、売り込んでいく。

国際観光都市を目指した未来戦略づくり

 ■霧島地区はわが国で初めて国立公園に指定された全国に知られる温泉保養地。毎年夏には霧島国際音楽祭が開かれるが、さらに魅力あるイベント開催が待たれるほか、団塊の世代をターゲットとした観光戦略も求められる。
 現在の霧島地区の観光客は日帰り客を含めて700万人。これを1000万人に増やすために「観光客1000万人プロジェクト」を展開する。そのために「霧島観光未来戦略会議」を設置し、NPOによる海・山・歴史・文化ガイドシステム、ボランティアふるさと案内人制度、住民による地域再発見運動などを導入。グリーンツーリズムや森林セラピー目的の滞在型観光など、豊かな森林資源と豊富な温泉を生かした、自然環境と調和した体験型・滞在型の新観光地づくりに取り組み、国際観光都市を目指す。その際、時間も金もある団塊の世代をしっかりターゲットとしてとらえることは重要。私も昭和22年生まれだが、大都市中心に住んでいる団塊の世代の人たちに対し、私たちの地域に移住してもらえる情報を発信したい。団塊の世代は向こう10年間十分にまだ現役として活躍できるし、多くの情報と経験、技術を持っている。2007年の団塊世代集団退職期を見据え、U・Iターンによる田舎暮らしを積極的に受け入れて新産業育成につなげたい。
 ■旧溝辺町に立地する鹿児島空港は国内線だけでなく、上海、ソウルにも定期便が就航している。年間の乗降客数は約600人と全国有数の規模。市内に国際空港を有しているというメリットを最大限生かすことは霧島市発展の核となる。
 全国の新しい自治体の中で国際空港を有するところは少ない。陸の玄関として高速道インタチェンジを5カ所持ち、空の玄関として空港も持っていることは財産だし、企業誘致や観光客の誘客、地域産業の発展、まちづくりの面からも非常に大きな意味がある。新幹線開通で空港利用客が減少しているが、今後いかに増勢に転じさせるかが私どもの市政に大きく、また本市の真価が問われている。それは、本市の持つ歴史・伝統・文化・個性をさらに磨き上げて合併効果を高め、地域として元気になり、都市経営において光り輝くことで可能になる。本市は旧市町時代から中国3都市と韓国2都市、霧島はアメリカのヨセミテ公園と交流している。全国各都市との交流もあり、それらの実績を生かして国内外交流をさらに活発に進めたい。

 ■県下2番目の都市として、中心市街地の活性化は都市の魅力に欠かせない。中心部で現在、国分山形屋が来年夏の移転オープンに向けて工事中。
 13万人口の中心街の都市的機能の充実強化は重要な命題なので、山形屋の跡地の再開発にはしっかり取り組んでいく。新しくオープンする山形屋を中心に市民が地域内を買い回り、歩き回るまちづくりをすることで地域の商店街として潤っていく。そうした視点で快適で魅力的な都市空間としての中心市街地づくりを進めたい。周辺の旧6町も合併してよかったと思えるまちづくりを進めたい。

職員の意識改革、市民との協働で地域活性化

 ■1市6町という大型合併だけに、新市の地域づくり、市政運営には旧市町の融合を図ることが大切なポイントとなる。
 市長選のマニフェストで、市政への基本的姿勢として、「開かれた市政」「活力ある市政」「公正で公平な市政」の3つを訴えてきた。開かれた市政のためには情報の公開、共有、情報発信が必要だが、私は常日ごろから「市民の声を聞くことはすべてに優先する」と考え、実践してきた。そのひとつとして、合併によるスケールメリットを求める期待と不安をしっかり聞くために旧1市6町の計7会場で「市長と語いもんそ会」と名づけるタウンミーティングを今年度内に開き、新年度からは小学校区34カ所で開く。部課長ら執行部も一緒に、市民の声に直接耳を傾け、やり取りしながら一体感のある新市づくりに生かしたい。
 ■国の三位一体改革に伴う厳しい地方財政の中、先端企業が立地するとはいえ、同市もまた行財政改革を求められている。前田市長は選挙戦のマニフェストで4役の20%カットを掲げた。一方、歳入増に向けた積極策も欠かせない。
 市長、助役、収入役、教育長の給与一律20%カットを4年間続ける。トップがこういう形で覚悟を示すことによって財政改革に向かう一歩としたい。4役のカットで約3000万円の原資ができるが、これを市長の自由裁量にさせてもらい、例えばシンクタンクに託して地域づくり、教育、農業、観光振興などの政策づくりに使わせてもらいたい。このほか、市の事業・施策を評価する行政評価制度を導入する。私案だが、各界・各層から広く公募し、「55人(ゴーゴー)委員会」を設立したい。指定管理者制度、PFI事業の活用による公共施設の民間委託、公共工事のコスト5%カットも実現させたい。
 ■合併効果による地域の活性化や行財政改革には職員の意識改革や市民の参加・協働を積極的に進めることが求められる。
 初登庁の際に職員には、開かれた市政、活力ある市政、公正・公平な市政に向けてしっかり取り組むことを強調した。さらに「おはようございます。こんにちは。いらっしゃいませ。お世話になります。ありがとうございました」と声が飛び交う市役所にしようと申し上げた。これを繰り返すことで意識改革が進み、人格も変わってくる。国内外での職員交流、民間での研修の機会も増やしたい。職員や市民と気軽に対話を進めるために、参加者の会費制による「市長とランチで語いもんそ会」を開いていく。さまざまな層の職員や市民と食事しながらざっくばらんに話し合うことで生の声を聞き、市政に生かしていきたい。最低月2回開き、4年間続けていくつもりだ。私の古里を思う気持ち、市政に対する情熱はだれにも負けない。独身の私にとって霧島市が妻であり、古里の山が父であり、錦江湾が母という思いで、市民から託された4年間を頑張りたい。

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