地域医療・介護連携協議会代表
安井久喬
(九州大学名誉教授、浜の町病院長)
医療連携は当然のことだと思っている。江戸時代は医者が1人で医療を完結していたが、近代に入って抗生物質が登場、麻酔技術や診断技術など技術レベルが格段と向上していくにつれ、疾患のテリトリーも拡大し、医師がお互いに協力して治療することがかなめになってきた。
戦後は施設や医療機器、人員が整い高度治療体制ができて、専門分野ごとに機能分担が行われるようになった。さらに、手術後の平均在院日数が40日程度だったのがここ3年で平均12〜13日に短縮されると同時に、退院後の治療を行う慢性期病院、療養型病院や診療所が必要になった。このように、地域の中で病院同士あるいは病院と診療所が役割分担する地域完結医療は、現代の医療に欠かせなくなってきたといえるだろう。
実際の連携は、疾患に対してどこの病院にどういう得意分野があるのか、またその患者が地域のどんなロケーションにいるかを把握することで、病院間の連携をスムーズに進めることになる。患者さんが治るか、あるいは診断がついて治療方針が決定したら、また依頼先の病院へ戻っていただくといった「切れ目のない治療」が協議会の目指すところである。
当院は福岡市中央区にあるが、市外にある離島の壱岐・対馬や前原市方面からも患者さんが来院されるので、医療連携は市町村単位ではなく県単位、医療圏単位でまかなっていくのが妥当。高齢者の医療費が一番高い福岡県だからこそ、病診の機能分化により医療効率を上げる私たちの取り組みは、医療費を削減することになり、大きな意味を持ってくる。
連携の際、急性期と慢性期の病院の隘路に入る患者が問題化している。当該病院で治療を終えたにもかかわらず入院患者が退院や転院を拒むケースが意外と多い。強行はできないだけに、説得するのに大変な時間と労力を費やすことになる。病院側の努力はもちろん必要だが、そもそも患者さんの理解が不可欠なので、政府には医療費を抑制しようとする医療政策の懇切な説明をお願いしたい。時間がかかればコストもかかり、これは国の医療費抑制政策に逆行することになる。わがままは許されないことを理解してほしい。(談)
地域医療・介護連携協議会発起人
原 寛
(原土井病院理事長)
このほど発足した地域連携協議会は、福岡市東区医師会の病院部会を源にする医療情報ネットワークがベースとなっている。主に慢性期病院である当院の場合、急性期病院から患者さんを受け入れることが多い。その際に、知らない病院同士でも、こうした連携が図れるようにしなければならない。このち密な連携を東区の病院に呼びかけたのがきっかけで、他に例を見ないネットワークに発展、全国からも注目された。
各病院には当時から連携の窓口として地域連携室があったが、連携が十分ではなかったし、区域外からも患者さんが来院しており、連携するエリアを広げる必要にも迫られていた。そこで、信友浩一九州大大学院教授から地域連携を図るコーディネーターの養成講座を定期的に開講する提言があり、東区医師会をベースに福岡県内の病院にも呼びかけて連携先を拡大、4月の協議会設立に至った。
現在の参加は県下86の病院や介護施設にとどまっているが、おそらくもっと広がっていくであろう。医療制度の改革により、連携しないと単独ではうまく運営できないようになってきたからだ。連携の窓口である各病院の地域連携室が、現在は電話やFAXを使ってやりとりしているが、いずれはコンピューターによる情報ネットワーク化を実現したい。
慢性期の病院で最も問題になるのが終末治療。末期寝たきりの患者さんは本人の遺書や遺言がない限りは、意識がないまま植物人間のような状態になったら延命を図るのかどうか、がんの場合は抗がん剤をどこまで投与するのか、といった極めて切迫した局面にぶち当たる。こうした場合、生命の尊厳と家族の意志とのはざまで、医師と家族がどう対処していくかの判断が難しくなる。コストのかかる末期治療は、国の進める医療費削減政策にとっても大きな障壁となる。財界を含めたさまざまな識者で構成する倫理委員会で、明確な方向性を打ち出すことが大切だと考えている。(談)
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