2005年11月号122ページに掲載

お菓子

検証!! 砂糖

  ■五十ニ萬石/■如水庵/■セイカ食品/■石村萬盛堂/■ニ鶴堂/■千鳥饅頭総本舗/
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●高田 明和(たかだ あきかず)
 61年慶応大学医学部卒、医師免許授受。66年同大学院修了、医学博士。72年ニューヨーク州立大学助教授、75年浜松医科大学第二生理学教授、01年同大学名誉教授。03年昭和女子大学客員教授に就任、現在に至る。主な役職に「砂糖を科学する会」代表、(財)食肉消費センター委員会・幹事など。「40歳過ぎての賢い脳の作り方」(講談社プラスアルファ新書) 、「ボケ、寝たきりにならない30の方法」(中経出版)ほか、著書多数。35年生まれ、静岡県清水市出身。
 脳の速効エネルギー源は、砂糖。 意外と理解されていないどころか、今なお誤解の多い砂糖についての知識。そこで専門の生理学に加えて、砂糖についても詳しい浜松医科大学名誉教授・医学博士の高田明和氏に、体と砂糖との関係を中心に語ってもらった。

ブドウ糖は脳の活動維持に重要な、唯一の栄養素

 脳は体の中のどの臓器よりも多くのエネルギーを消費します。そしてそのエネルギー源となるのはブドウ糖だけで、タンパク質や脂肪では補うことができません。しかも脳に蓄積できるブドウ糖はほんのわずかであるため、体外から多くのブドウ糖を続けて供給する必要があります。そこでブドウ糖と果糖でできている砂糖を補給することで、脳にすばやくエネルギーを送ることができるのです。
 これをもう少し詳しく見てみると、人間の脳の重さは体重の2パーセント程度に過ぎません。ところが脳が使用するエネルギーは、私たちが1日に摂取する全エネルギーの約25パーセントに当たる約700キロカロリーも消費します。これは安静にしていても1日90グラム、1時間に4グラムものブドウ糖を必要とすることになるのです。
 ところが脳には少量のブドウ糖しか蓄積することができないため、常にエネルギー源として補給し続けなければなりません。そしてこの脳が消費するエネルギーを安定して供給するためには、全身の血中ブドウ糖濃度を血液1デシリットル当たり約100ミリグラムに保つ必要があります。

 他の臓器の場合、タンパク質や脂肪もエネルギーになりますが、脳は脳血液関門といわれる検問所で厳しいチェックを行い、ブドウ糖以外のエネルギー源を通しません。まさに、ブドウ糖は脳の活動を維持するのに重要な、唯一の栄養素なのです。
 ここで砂糖について触れますと、砂糖はごはんやそば、パスタ、パンなどの穀類と同じ炭水化物です。もちろんカロリーも1グラム=4キロカロリーと、穀類と同じです。そしてこれらはみな単糖類として消化吸収され、最終的に体の中でブドウ糖として脳や体のエネルギー源として使われます。
 そこでごはんやパンなどの成分であるデンプンの場合は、消化器官中でデキストリンやオリゴ糖類に分解され、その後小腸に移動して、初めてブドウ糖に分解・吸収されます。ところが砂糖は構造が簡単で、摂取された砂糖は小腸で消化吸収され、数十秒で血液中に現れます。このようにごはんやパンと比べ、砂糖は吸収が速く、失われたエネルギーをすばやく回復してくれるのです。

砂糖の消費量は年々減少 逆に肥満、糖尿病の割合は増加

 よく誤解されているのが、砂糖を摂ると肥満になるということです。申し上げたように砂糖はブドウ糖と果糖から成っており、それには肥満を誘発するいかなる成分も含まれていません。
 肥満は摂取エネルギーが消費エネルギーを上回るのが主な原因です。ところが現在の日本人の場合、摂取エネルギー自体は必ずしも過剰とは言えません。しかし脂質については、適性比率である摂取エネルギー総量の4分の1を上回っており、肥満の原因の1つになっています。
 では肥満の最大の原因は何かと言うと、ここ数十年におけるライフスタイルの変化に伴った、消費エネルギーの低下です。自動車や電車、エレベーターなどを使う生活により、人は体を動かす機会が少なくなりました。その結果、摂取したエネルギーを消費しきれなくなり、エネルギーの需要バランスが崩れてきたのです。
 砂糖は適切な量を摂る限り、肥満の原因になることはないということが、ラットを使った実験でも明らかになっています。また、砂糖の消費量は年々減少していますが、逆に肥満の割合は増加しているのが現状です。

 もう1つ誤解が多いのが、糖尿病との関係です。日本の糖尿病患者は約900万人、その予備軍は約600万人と言われています。糖尿病は、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンの作用が足りなくなるために、血液中のブドウ糖が多い状態、すなわち高血糖が持続する状態です。
 戦後、日本の糖尿病患者は増加の一途をたどってきました。この間、70年代から国民の総エネルギー摂取量は減少し、タンパク質摂取量は横ばい、砂糖の消費量は減少しています。一方、60年代半ばからは、食事の欧米化を反映して、脂質摂取量は2倍以上になりました。そしてこの脂質摂取量を追いかけるように糖尿病患者数は増加しているのです。
 糖尿病の原因は、糖尿病になりやすい遺伝素因に、肥満(特に内臓肥満)、運動不足、食べ過ぎ(特に脂質)などの環境因子が加わって発症します。ただ甘いものだけが原因ではありません。

脳の老化予防、若々しさ保持 子供のエネルギー補給にも

 人は年齢とともに高血糖を気にして、甘いものを控える傾向にあります。しかも一度の食事で吸収できるエネルギー量は減り、低血糖になりやすくなります。極端な低血糖は意識障害を起こしたり、脳の老化を早めてしまう危険性があります。
 脳には、十分な栄養が必要です。そして脳は、唯一のエネルギー源であるブドウ糖が一瞬でも切れると働くことができません。砂糖を摂取することは、脳の老化を予防し、若々しさを保つことにつながるのです。
 一方で日々成長している子供たちの体や脳は、多くのエネルギーを消費しています。ところが子供は大人に比べて体も小さく、1回の食事から摂取できるエネルギー量も限られています。そこで食事の間に摂るおやつが、エネルギー補給に大切な役割を果たします。
 中でも砂糖は消化吸収が速く、食べてから数十秒後にはブドウ糖となって、筋肉や脳に運ばれます。しかもサトウキビなどの植物から作られ、その99パーセント以上はエネルギーとして使われる安全で無駄のない食品です。つまり子供のエネルギー補給には、速効性のある砂糖を使った甘いおやつが最も効果的なのです。
 疲れた時には甘いものが食べたくなります。これは体がエネルギー不足を感じ、自然な欲求として甘いものの摂取を訴えているのです。また甘いものには、満足感を与え、心に安らぎを与える効果もあります。食後やイライラした時に甘いものが欲しくなるのは、本能的に甘いものの働きを、体と心が知っているからです。

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