2005年10月号94ページに掲載


■老松酒造
■光武酒造場
■窓乃梅酒造


質にこだわり日本酒本来のうまさ追求する
地場蔵元

 質にこだわり、日本酒本来のうまみを求めて、九州の地場蔵元が地道な取り組みを続けている。そしてこれに呼応するかのように、団塊の世代をはじめとした本当の酒のおいしさを知る年配の人たちが、日本酒に戻ってきている。ここに九州を代表する蔵元の取り組みとその逸品をお届けする。

欧米、中国では「サケ・ファン」
国内は「日本酒党」を拡大する

 老松酒造(大分県日田市)のマーケティング戦略は明快で「海外の成長市場では手早く『サケ・ファン』を獲得、国内の成熟市場では手堅く『日本酒党首』を囲い込む」(森山保徳社長)構えだ。
 ラベルに浮世絵をあしらった純米吟醸酒「雪月美人」などで欧米の高級スパーマーケットなどに攻勢をかけて2年目。アメリカではPB(プライベート・ブランド)の取り扱いが増え、10月からはニューヨークなど東部地域にも進出。中国でも、台湾の日本人向け居酒屋で親しまれ、この秋口からはシティーホテルを通じて上海にも上陸する。いずれも「穀物ベースの高級酒」としての評価が高く、販路拡大への期待も大きい。
酒づくりの技を磨いて、味でうならす、小野勅郡・老松酒造製造部長

 一方、国内で着実に支持層を固めるのが「三年目の冷おろし 山水 円熟特吟」。水郷・日田の酒蔵で3年の歳月を経て寝かせられた逸品は、キャップを開けた瞬間、ふくいくとした香りが漂い、一口ごとに、ふくよかで、まろやかな味わいと共に安らかな酔い心地に包まれる。「山水」は同酒蔵の主力商品でもあり、原点でもある。
 それだけに「日本酒本来の風合いを感じて、本物だけがもつ質感を確かめて」との思いも強いところだ。

夫婦水入らずで楽しんで
もらえるようなお酒を

  多良岳山系の伏流水、それに地元・鹿島地区で作っている酒造好適米の山田錦とレイホウを使用し、この好原料を酒造り40数年の杜氏が、日本古来からの伝統の技を基盤にしながら品質本位の酒造りに専念することで、光武酒造場(佐賀県鹿島市浜町、光武博之社長)の銘酒は生み出されている。その代表銘柄の「金波」は、有明海の波が朝日の光で金色に輝く様から命名された。
 このところの取り組みについては「清酒業界をずっと支えてきてくれた、そのうまさを一番知っていただいている団塊の世代の人たちに、ゆっくりと寛いで夫婦水入らずで楽しんでもらえるようなお酒をご提供していきたい」(光武博之社長)考えで、それを具現化した「夫婦水入らず」を10月1日から発売予定。また、「大吟醸といった特別なお酒ではなく、毎日の晩酌で気軽に、しかもおいしく飲んでもらえるように、レギュラークラスの清酒にさらに磨きをかけていく」方針である。

大正時代の木桶作りを復活
地場酒蔵のシンボルとして

 酒蔵古来の技法を復活、日本酒本来の“うまみ”を実現して話題を巻くのが、窓乃梅酒造(佐賀県久保田町)の古賀醸治社長だ。
「伝承の酒母を使って手間ひまかけてじっくり仕上げていく」と、古賀醸治・窓乃梅酒造社長

 天然杉を使った木桶(1919年、大正8年製造)を再生。同県産の酒米、西海134号などを使って手づくりで仕込み、1年間寝かせると「軽やかな口当たりで、飲み口さわやか」(古賀」社長)な銘酒が仕上がる。
 ベテラン杜氏(75歳)のもとで修行を重ねた若手杜氏(33歳)が、「酒作りの原点に立ち返り、精魂込めて」取り組むことで、冷やしても熱燗(あつかん)でも、また、そのまま飲んでも「ふくよかで、深みと奥行きがある味わいの世界が広がる」。旬の素材に合わせて、楽しみ方も自由。
 製造量は限られる(年間で一升瓶1000本)が、それだけに「地場酒蔵の本物だけを追求する精神のシンボルとして」木桶仕込みの逸品を世に問い続けており、ファン層は拡大している。合わせて同酒造は、大正時代の酒類のポスターの復刻にも取り組んでおり、90年近い時を隔てて、日本酒独自の文化とロマンが、いまによみがえろうとしている。

甘い辛いを超越した日本酒
本来のうまさを絶えず追求

 全国にもその名が知れわたる銘酒「西の関」は、明治6年(1873)創業の萱島酒造が、かつては九州の秘境といわれていた大分県国東半島の地で造り始めた。西の横綱を意味する「西の関」は、2代目の萱島米三郎が、西日本の誇り足り得る酒を目指そうとの意気込みで命名した。
 「初代以来『品質主義』を標ぼうし、時代の風潮や流行に流されることなくあくまでも昔ながらの『手造り』にこだわって」(萱島進社長)、伝統手造り手法の発展的継承の中で、清酒本来のうまさを伝えている。仕込み水には、両子山、文殊山の中央山岳地帯で伏流水となった水を、3本の井戸から汲み上げて使用。原料米は、地元大分のヒノヒカリ、佐賀レイホウ、広島八反錦、兵庫山田錦などで、約1万石の製造を行っている。
 酒の味を形どる五味(甘・酸・辛・苦・渋)が調和した「旨い酒」を理想とし、永い悠久の時間の中で地元に密着した伝統手造り手法を発展的に継承し、甘い辛いを超越した日本酒本来のうまさを絶えず追求している。

●ご意見・ご感想・情報提供はこちら
  (尚、無記名・連絡先のないメールは削除されます)